植物生態学者の見た「自然と山の幸」

刻々と自然は移り変わり,人工の景観が,自然の植生を破壊する。さあ!大変。せめて食べられる野生植物のすべてを次世代へ残そう

最低温度マイナス10度Cの寒冷地で,琉球の亜熱帯潅木を育てる

2008-11-14 18:01:15 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
写真には,沖縄島の稀少種クワノハイチゴ(キイチゴの仲間)が写っている。
草丈は,切り詰めて,高さ30-50cm。
背後は軒下のコンクリート壁だ。

クワノハイチゴの隣のやや紅葉しているのは,ユキノシタ科のズイナ(ヨメナノキ)。
これは寒気に耐え,軒下なら被覆しなくても越冬できる。

まず,この2種類の性状から説明しよう。

□ズイナ(ヨメナノキ)Itea japonica Oliver :
本州(近畿地方南部),四国,九州(東南部)の太平洋側に分布。暖地の山中
で, 林縁や, 沢ぞいに群がりはえる落葉潅木。 高さ1~2m,ときに枝が 2m以上
にのびて小高木状になり, 前年枝はふつうは褐色,円形~楕円形の皮目がまばら
にあり, 若枝は黄緑色をおびる。
葉は互生,卵状長楕円形~卵形, 先はとがり, 長さ 7~10cm, 縁に細かい鋸歯
があり, 草質,葉脈は上面にくぼみ, 下面に隆起し, 8対ほどの弓形に曲がって
平行する側脈が目立ち, 美しく紅葉する。
花は5~6月,径約 4mmの小さい白色5弁花が,新枝の先に総状にあつまって
ひらく。果実は,イワガラミ属,アジサイ属とおなじように「さく果」。
軟らかい若芽を, ヨメナのように食べる。

Rubus nesiotes Focke ;R. swinhoei Hance var. nesiotes (Focke)Kitam.
クワノハイチゴ :沖縄島・嘉津宇岳の産。葉が狭卵状披針形,茎先の散房花序に,
白色花がつき,萼裂片は平開する。
集合果は帯黒紫色。
タイワンウラジロイチゴの腺毛の少ない型かも知れない,という説もある。

(Rubus swinhoei Hance タイワンウラジロイチゴ も,常緑低潅木。 枝は,
つる状にのび, 鉤刺があり, 葉は卵形か, 卵状披針形, 長さ 5~10cm,鋭尖頭,
基部は截形または浅心形,縁に不整の牙歯があり,下面に灰白色の密毛があり,
花序に腺毛がある。沖縄諸島,八重山諸島にはえ,台湾,中国南部に分布)


クワノハイチゴは,厳冬期でも一定量の水分を必要とする。でも明らかに土が
湿っている状態が続くと,株周りの土が凍結して,株も凍結腐死してしまう。

潅水直後の土から,余分の水分を急速に吸いとってくれるのが,ズイナの役割。