植物生態学者の見た「自然と山の幸」

刻々と自然は移り変わり,人工の景観が,自然の植生を破壊する。さあ!大変。せめて食べられる野生植物のすべてを次世代へ残そう

カノコユリが開いた

2009-08-30 01:06:07 | 自然・季節
例年より10日ほど遅れて、カノコユリが開いた。
極端に反り返って咲いているものほど、生理状態がよく、ウイルスなどにも冒されていない、判断できる。

鱗茎には、ふつうは苦味があるが、昔は食べていた。

実りおくれていた奥地のヤナギイチゴを利用したサラダ

2009-08-12 19:50:44 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
野菜サラダに、完熟したヤナキイチゴの集合果を散らしたら、不思議な味を愉しむことができた。

ヤナギイチゴ Debregeasia edulis (Sieb. et Zucc.)Weddell(ヤナギイチゴ属)
本州(関東南部~近畿南部),四国,九州,琉球,台湾,中国に分布。
暖帯の南部から亜熱帯の北部にかけて,海岸地方の湿っぽい常緑樹林の林縁,渓流ぞい,ときに,ゆるく傾斜した荒地にはえ,どこにでもある種ではないが,ところどころで,2-3mの高さに茂っている落葉潅木。

葉は披針形-線状長楕円形, 縁に細鋸歯があり,長さ 7-15㎝, 風が吹くたびに葉が翻って, 白綿毛の密生した葉の裏がちらちら見える。

花は4-5月,雌雄異株。雌花の花被片は,壷形に合着して子房を囲む。
 
子房は成熟して,痩果になり,花被は多汁質の果皮となり,合着して痩果を包む。
これが多数集まった複合果は,径 5-7㎜,6月ころ,橙黄色に熟れる。

《食用事情》
果実は, コウゾの実のように,ねっとりして甘みがあり,薬草的なクセのある味。複合果全体が軟らかく,野菜サラダに散らし入れて,彩ったり,冷や汁に浮かべたり,ゼリー固めをつくる。

クロユリの咲く頃です

2009-08-05 21:16:11 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
クロユリ Fritillalia camtschatcensis (L.)Ker-Gawl.
アイヌの人たちは, クロユリを(黒い,葉,もつ, という意味で)アンラコルとよび,黒百合の鱗片に糸をとおし,数珠のようにつなぎ,乾燥して保存食とした。
 鱗茎をゆでて,油をつけて食べたり,つぶして,木苺の実,鱒の筋子,魚などと,まぜて食べたり,鱗茎から澱粉をとった。
 十勝・帯広川筋には,アンラコロタウシナイ(黒百合をいつも掘っている沢)という地名もある,という。
小さい黒百合の根(鱗茎)を掘って食べたアイヌ民族。北地に暮らした人たちの苦労が瞼に浮かぶ。

鱗茎が扁球形,径 1.5―3㎝の多年草。鱗片は多数で白色,関節がある。

花茎は高さ10―30㎝,北街道の海岸林地にはえるものは, ときに 50㎝に達し,数段の輪生葉をつける。

葉は3―5個ずつ輪生し,長さ 3―7㎝,幅 1―3㎝,披針形,または卵状長楕円形,無柄。

花茎の先に1―数個の花をつけ,斜め下向きに咲き,径 3㎝内外,花被片は長楕円形,長さ2.5―3㎝。
 中部日本の高山のものは,花が暗紫褐色で,ミヤマクロユリとよばれる型。7月下旬―8月上旬に咲き,さく果は倒卵状球形,長さ 2―2.5㎝.
 
 北海道の海岸のものは,花が黒紫色で,エゾクロユリとよばれる型。5月下旬―6月下旬に咲き,鱗茎で殖える。

◎生の鱗片には甘みがあり,わずかに苦い。

北海道(高山,および東部海岸と,礼文島,利尻島など),本州(中部,北部の高山),千島,サハリン,
中国東北部~ウスリー~カムチャッカ,北アメリカ北部に分布。