植物生態学者の見た「自然と山の幸」

刻々と自然は移り変わり,人工の景観が,自然の植生を破壊する。さあ!大変。せめて食べられる野生植物のすべてを次世代へ残そう

2004年の秋は今頃,ブナヤの若木らしいものが黄葉していた

2008-11-06 22:40:22 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
撮影は,10月25日のことだったと記憶する。
ブナの実が食べられることは,広く知られているが,じつは若葉も食べることができる。
それを試したのが,2004年の初夏であった。


〔ブナ科・ブナ属〕

《情景》 北陸地方や東北地方では,とくに日本海側で,ブナは昔,低い山地にも
茂っていた。 能登半島の先にある宝立山(471m)の山頂近くにも, ブナの自然林
が見られ, 中部日本の日本海側は, 自然状態では,標高 400mから,1500mあたり
まで,ブナの林であった。 自然林を伐採したり, スギ, ヒノキを植林したため,
今の中部日本で, 実際にブナ林の残っているのは, おもに1000~1300m付近。

ブナは, 温帯の主要林をつくる樹種。今ブナがはえていなくても, 自然状態に
まかせると, ブナ林ができるような気候の地域を, ブナ帯という。
ブナの実には, ソバの実のように, 稜(かど)があるので, ヤマソバ。 クリの風
味を連想して, ソバグリ, 味をクルミにたとえて, ソバグルミなどとよぶ地方も
ある。
《性状》 大きいものでは高さ 30m,直径 1.7mになる落葉高木。葉は互生, 菱状
卵形または広卵形, 短鋭尖頭, 基部は広い楔(くさび)形か,歪円形, 長さ 5~8
cm,幅 3~5cm,波状歯があり,側脈は7~11対あって,斜めに明らかに平行して
いる。
花は5月,新枝の下部の葉腋から,長柄のある雄花の尾状花序が数個垂れ下がっ
て, 多数の黄色い細花をつけ, 雌花序は,新枝の上部の葉腋につき, 多くは2個
ずつついて,頭状で総苞に包まれる。花柱は3個。
堅果は卵状3稜形,長さ約 1.5cm,2個ずつが,軟らかい刺のある殻斗におお
われ,秋に熟すと,殻斗は4裂して,中から堅果があらわれ,やがて落果する。

何年かに1回,たくさん実る年がある。
大高木なので,木に登ってとることはできない。 道端などに落ちた実を,掃き
あつめて, ひろい, さっと炒り, 皮をむいて食べると香ばしくおいしい。
生(なま)のまま, 噛み割って, 中の白い実(種子)を食べることもできる。
《分布》 北海道(渡島半島以南),本州,四国,九州。 温帯の山地にはえる。
《学名》 Fagus crenata Blume