植物生態学者の見た「自然と山の幸」

刻々と自然は移り変わり,人工の景観が,自然の植生を破壊する。さあ!大変。せめて食べられる野生植物のすべてを次世代へ残そう

初冬はヤブコウジの実る季節

2008-11-20 10:11:51 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
〔ヤブコウジ科・ヤブコウジ属〕
ヤブコウジ Ardisia japonica (Thunb.)Blume
北海道の南部,本州,四国, 九州の丘陵地林内にふつうにはえ,朝鮮南部~中国に分布する常緑小潅木。北海道では,道北の焼尻(やぎしり)島にも見られる。
  
11~12月に赤く熟れ, 足元に注意しながら, 12月に伊豆半島など, 暖地の林内をあるくと, 寒さに震えている真っ赤な実に出会うだろう。
高さ10~20cm,葉は茎の上部に(輪生状に)あつまって互生,長楕円形,長さ5~13cm,上面濃緑色, 光沢があり, 低鋸歯がある。
花は7~8月,花冠は白色,下垂し,径約 7mm。 液果状の核果は球形, 径約 6mm。

◎果実をポテト・サラダ,パスタ・サラダなどに散らし入れて味わう。完熟した果実は,すこし甘みがあり,ごく稀に,サリチルサン・メチールの香りを,エキゾチックにたのしめるものもある。さらに, シロミヤブコウジ,ホソバヤブコウジなどの型もある。

近頃,Gaultheria procumbens チェッカーベリーの名で,ヤブコウジにやや似た外来種が出回っていて,アメリカ東北部原産と説明された名札がついている。
Gaultheria は,シラタマノキ,アカモノなどの「シラタマノキ属」のこと。
このグループは,全世界で100種以上あり,北アメリカ,南アメリカ,東南アジア,東南アジア,オーストラリアに分布している。

このチェッカーベリーは,ヤブコウジの類ではなく,シラタマノキ属の種類。
かすかに淡紅色を帯びた果実を,齧ってみると,サリチル酸メチールの微香と渋み
苦味のようなものが,口中に広がる。
その刺激は,シラタマノキほど強烈なものではない。
いずれにしても,ヤブコウジの仲間ではないと,知っておきたい。