植物生態学者の見た「自然と山の幸」

刻々と自然は移り変わり,人工の景観が,自然の植生を破壊する。さあ!大変。せめて食べられる野生植物のすべてを次世代へ残そう

オオタカネバラの実り

2008-09-29 19:43:48 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
●Rosa acicularis Lindl. オオタカネバラ : 分枝する落葉潅木。高さ1~1.5m,若い茎・枝には,長さ4~5mmの刺針が密生,刺針は真っすぐ平開する。
羽状複葉の小葉は5~7個。花は6~7月,枝先に1(~2)個つき,径4~5cm,濃い紅紫色。
果実は, 倒卵状長楕円形,長さ約 2cm,橙赤色に熟れる。

北海道のオオタカネバラは, 平地, 低山地にもはえ, 自然破壊の進んでいない道東では, 主要道のところどころで, 道端の林縁などに見られる。
北海道, 本州(中部,北部の日本海側高山)。サハリン,カムチヤッカ~シベリア~中国東北部~朝鮮(おもに北部)に分布する。

稀な食べられる草木の種苗分譲,
撮影機器,編集機器その他,機材の特別分譲は,10月1日-2日に掲載予定です。

ヨメナの花が満開

2008-09-28 13:54:03 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
《食用事情》 若芽を食べる野菊では, ヨメナ(嫁菜)と,ユウガギクがもっとも
美味。姿がやさしく美しいため,ムコナ(婿菜・シラヤマギク)に対してついた
名だ, といわれる。 春の七種(ななくさ)のスズナというのは,今のヨメナだ, という説もあり, 「菜めし」といえば,ヨメナご飯のこと。
京都・近江・大阪あたりでは昔,田畑のまわりに多くはえ, 全草に香りがあり, 古くから「食用野草」であった。

《性状》 農耕地帯などで,やや湿りのあるところを好む多年草。根茎は長く這い,茎は高さ 60~120cm,葉は互生,茎の下部, および中部のものは, 卵状長楕円形,長さ 8~10cm,幅約 2.5~3cm, 少数く粗い鋸歯があり, 上部の葉は披針形で, 多くは鋸歯がない。 葉は, 上面の縁にわずかに毛があるほかは, ほとんど無毛, 滑らかで, やや薄質, 上面にやや光沢がある。

花は,おもに9~10月,茎の上部で分枝し,散房状に多数の頭花をつけ,頭花は
径約 3cm,舌状花は 20個内外, 淡青紫色,中心の筒状花は黄色。
痩果は倒卵形, 長さ 3~3.5mm,頂部の冠毛は,肉眼で見えないほど短く,長さ約 0.5mm。ノコンギクの類は, みな長い冠毛をもつので, 頭花を裂いてみると, ひと目で, ヨメナと見分けられる。

《採取・利用》 暖地では3月から,ふつうは4月に,若芽か,新葉を摘む。
生のまま,揚げものに。ゆでて冷水にとり,ときには流水にさらし,ゴマあえ,
辛子あえに。

水けをふきとって,卵とじ,油炒めなどに。◎花と蕾は,天ぷらに。
本州(中部地方以西),四国,九州の暖帯に分布。

カントウヨメナは, 本州(関東地方)の暖帯にはえ,ヨメナに似て,質がやや薄く,鋸歯がやや大きく明らかで,頭花がやや小形で,径約 2.5cm,ユメナよりやや濃色。痩果は倒卵形,長さ約 2.5mm。 冠毛は長さ約 0.3mm,ヨメナよりやや短い。
◎多くの地方では食用にしていない。


ナンキンナナカマドの実り

2008-09-25 22:41:47 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
ナンキンナナカマド Sorbus gracilis (Sieb. et Zucc.)C.Koch:
本州(福島県,新潟県以西),四国,九州の山地にはえる落葉潅木。高さ2~3
m,花序の基部につく葉の托葉は,大形の扇状で牙歯があり,花時には残存し,
長さおよび幅1~2cm。羽状複葉の小葉は7~9個,長楕円形か卵状狭長楕円形,
上半部に鋸歯があり,多くは鈍頭,基部は鈍形,長さ 2~5.5cm,幅 1~2.5cm,
上面は無毛で,やや光沢があり,下面は粉白色で,しばしば黄褐色毛がある。

花は4~6月,帯黄白色,径5~8cm,花柱は2~4個。梨果は楕円形~球形,
長さ 7~10mm,赤色。リキュール向き。

異常気象の秋・ヤマツツジが満開している

2008-09-24 12:47:40 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
《ヤマツツジの性状》 高さ1~4mの半落葉性潅木。季節を追って, 葉のようすを
観察すると, 春葉と,夏葉の形状が異なり, 冬は枝の一部に小さい葉を残して,
少数の葉で越冬する。 グミ類にも, おなじように葉の形質をかえて, 季節ごとの
温度と, 空中湿度に, 巧みに適応する性質があり, どちらも生態的に興味深い。
花は4~6月,枝先の1個の花芽から,1~3個の花をひらく。花冠は暗赤色,
内面の上部に濃色の斑点があり, 漏斗形, 径 3~4cm,5中裂する。
《分布》 北海道南部,本州,四国,九州の低山帯,まばらな林中,落葉林の
林縁などにはえ,地域により変異が多い。

数輪の花が季節はずれに咲くことはあっても,写真のように群がって咲くことは珍しい(2008年9月24日)。

ヒロハユキザサの実り

2008-09-22 20:43:38 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
Smilacina yesoensis Franch.etSavat. ヒロハユキザサ (ミドリユキザサ):
茎に隆起する2条線があり,高さ40~70cm,花は7~8月,雌雄異株,花序に毛
は少なく, 柱頭の裂片は長く,そり反り, 雄花は, 花被片が緑色をおびる。
本州(北部,中部)の針葉樹林内にはえ,北海道にもはえるといわれる。

フユノハナワラビ類が胞子葉を出してきた

2008-09-21 18:37:40 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
フユノハナワラビ Botrychium ternatum (Thunb.)Sw.
丘陵地の草原, 低山地の原野, 木もれ日の明るい雑木林の下などにはえ,冬にも葉があり,胞子葉がのびると,花のような風情を見せる。
8-10月に, 新葉をだし,花に見えそうな胞子葉を,ひっそりと広げる。

日あたりの山地林下にはえ,冬にやや肉質の緑葉がある多年性のシダ。高さ15-40㎝,栄養葉は3-4回羽状に深裂。本州,四国,九州,東アジアの温帯南部から暖帯に分布。

《食用事情》
晩秋から初冬に, きれいな栄養葉を葉柄ごと摘みとり,姿揚げ,鍋ものに。
◎さっとゆでて,辛子あえ,酢みそなどで,ぬめりを味わう。
◎魚のすり身,カタクリ粉,ヤマノイモ,卵,ニンジン,白キクラゲの線切り,塩,ミリン,調味料などを,まぜ合わせ,小判型などの適当な形の「つくね」をつくり,上には,ハナワラビ1葉をのせ,蒸したり,揚げたり,煮て,味わう。
 
蒸し器で,ハナワラビ類の「つくね蒸し」をつくると,野趣をたのしめる。

ハナワラビの類は,草の数が多くない。たくさん採取できるものではなく,自然を守ることもたいせつ。

もし,見つかったら「つくね蒸し」のような味わい方が,自然にやさしく,雅趣もある。

エゾフユノハナワラビ Botrychium robustum (Rupr.)Undere.
;B.multifidum(Gmel.)Rupr. var. robustum(Rupr. ex Milde)C.Chr.:
北海道,本州(中部以北)の山地林下にはえ,滋賀県伊吹山,奈良県大峰山,鳥取県,徳島県東祖谷山,愛媛県東赤石山にもある,といわれ,千島,サハリン,カムチャツカ,アラスカ,ウスリー~中国東北部~朝鮮に分布。
フユノハナワラビに似た種類。
◎おなじように食べられる。

ホウライハナワラビ Botrychium formosanum Tagawa も「つくね蒸し」などを味わうことができる。

ウラジロウコギの実り

2008-09-20 20:34:58 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
ウラジロウコギ Acanthopanax hypoleucus Makino

本州(関東西部以西),四国,九州に分布。

おもに,太平洋側の石灰岩地にはえる落葉潅木。高さ1~3㍍,やや枝が細く, エゾウコギに似た樹姿で, 刺の形質もよく似て,すべてがエゾウコギよりも小ぶりで繊細。 しかし葉の下面は粉白色。

花は7~8月,枝先の2~3の花梗に多数の小花を散形につけ,やや液状の核果は, 扁球形, 径 7~8㍉,10月に熟し, 紫黒色。 高知県・天狗高原などで,観察できる。

若芽が,エゾウコギのように美味。