映画に 乾杯! / 知の彷徨者(さまよいびと)

名作映画に描かれている人物、物語、事件、時代背景などについて思いをめぐらせ、社会史的な視点で考察します。

「のだめ ヨーロッパ編」を観る

2009-08-29 21:04:32 | 芸術と人間社会
 夏の憂さを払うために「のだめ ヨーロッパ編」をふたたび観た。前回は、ざっと流して観たので、今回は丁寧に鑑賞した。これだけ難しい題材とテーマを扱っている実写ドラマなのに、大変よくできている。それに、名曲のオーケストラ演奏の「さわり(エッセンス・クライマックス)」が数多く、随所に登場する。贅沢な作りの作品だ。 . . . 本文を読む

マルクスの《資本》を読む

2009-08-28 22:33:32 | 世界経済
 近代~現代の世界経済を理解するのは、非常に困難な作業だ。それは、〈世界システムとしての資本主義〉を解明するということだ。方法論として、世界経済という文脈で資本蓄積を体系的に理解しようとする視座を表明したのは、マルクスが最初だと思う。だが、近代世界システムの歴史を分析する視角から、彼の著作を系統的に省察した研究は、きわめて少ない。そこで、この場で、遊び半分に試みようと思う。 . . . 本文を読む

みちくさ 2 中国の歴史の不思議 その2

2009-08-17 20:40:33 | アジアの歴史
 中国の歴史と帝国レジームの不可思議を続けて考える。ヨーロッパの歴史尺度で見ると、古代から中国はとにかく特異の歴史空間をなしている。こういう先入観は、中国自身の自己認識・歴史記述が非常に個性的というか独尊的で、ほかの地域との比較がしにくいことからきているのかもしれない。あるいは、ヨーロッパ的な歴史尺度が一面的で狭すぎるのかもしれない。 . . . 本文を読む

ブリトン好みの皮肉な結末

2009-08-15 22:06:32 | 戦争史(軍事史)
 ブリテン人(ブリトン)は、映像作品でも、単純な「勧善懲悪」の物語よりも「皮肉な結末」「苦い現実」を好むようだ。その傑作の1つが「マッケンジー脱走」だ。第2次世界戦争の後半、スコットランドのマッケンジー収容所に収容されていたドイツ兵捕虜の脱走計画とそれを追跡・阻止しようとするブリテン軍情報部将校の知恵比べと出し抜きあい、騙し合いをスリリングに描く佳作。知恵比べの巧妙さと「結末の苦さ」が、深い印象を与える。 . . . 本文を読む

みちくさ 2 中国の歴史の不思議

2009-08-13 21:49:04 | アジアの歴史
 高校生から大学生の頃に、私は中国古代史にはまった。漢文の勉強と「史記」や「三国志」などの古典や物語などが結びついてのことだったか。文明・文化の古さやスケイルの巨大さ、奥深さ、物語の登場人物の多さに圧倒された。だが、大学の専門はヨーロッパの法理論や法制史だったので、ヨーロッパ的な歴史尺度が届かない世界のこととて、しだいに関心が薄れた。だが、つねにヨーロッパの歴史と対置するものとして意識の奥にわだかまっていた。 . . . 本文を読む

田舎暮らしの記録 編外2 日本の地政学的環境と憲法

2009-08-04 21:09:31 | 日本の歴史と社会
 日本の憲法という現象を情緒的に語るのではなく、世界経済の政治的・軍事的構造のなかに位置づけて、社会科学的に考察してみる。世界のなかで日本のおかれた軍事的・地政学的環境を分析することなしに、国民国家の構造を法的に制御するはずの憲法システムと平和の問題を読み解くことはできない。 . . . 本文を読む

遺産と兄弟の絆と

2009-08-03 20:46:16 | 現代アメリカ社会
 16歳で家を飛び出し、「人生の目標は金儲け」と割り切って生きてきたチャーリー。彼にとって、他人とは、自分の利益のために利用する「手段」でしかない。だが、ビズネスはピンチに陥った。おりしも資産家の父親が死んだ。遺産相続を期待したが、父親の遺言で、遺産のほとんどは「匿名の受益者」の信託基金になってしまった。受益者は、会った記憶もない「兄」だった。兄は「自閉症」だということで、精神障害者の療護施設にいた。 . . . 本文を読む

映像の現象学 3

2009-08-02 21:01:16 | 映像表現
 ときおり思い出したように登場するこのコーナー。今回は映画作品の物語の筋立て、ストーリー展開について考えてみる。映像芸術における「現実味=リアリティ」(または実在性)と「現実の世の中」とは、そもそも別次元のものだ。判断基準(評価基準)として、現実世界での経験的感覚や現実味を映画作品のなかに直接持ち込んでも、あまり大した意味はない。むしろ、作品が取り上げた素材やテーマを手がかりに、現実世界の見方や感じ方を問い直したいものだ。 . . . 本文を読む