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映画に 乾杯! / 知の彷徨者(さまよいびと)

名作映画に描かれている人物、物語、事件、時代背景などについて思いをめぐらせ、社会史的な視点で考察します。

幻影は権力? それとも権力は幻影? その2

2012-06-22 20:59:10 | ヨーロッパの歴史
 皇帝追い落としに動こうとしたレーオポルト大公だったが、直前にクーデタの策謀を皇帝側に知られ、憲兵隊を差し向けられてしまった。追い詰められた大公は自殺した。だが、殺人容疑は、アイゼンハイムが仕かけた幻影=罠だった。 . . . 本文を読む

〈イル ガットパールド〉〈イ ヴィチェーレ〉へのオマージュ

2011-10-17 13:31:59 | ヨーロッパの歴史
 〈副王家の一族〉の結末シークェンスで提示された問題を分析することで、この作品へオマージュとしたい。この映画は、19世紀後半から20世紀初頭のイタリア社会・政治状況を考察するうえでは、非常に優れた話題と材料を提示している。それだけでも、歴史映画としては大成功を収めている。見る価値が大きい。物語は悲惨で暗澹たるものだが、まさにイタリアのレアリスモ(ネオレアリスモ)のお手本のような作品である。同じ時代と状況を描いている〈山猫〉とセットにして考えてみよう。 . . . 本文を読む

〈イ ヴィチェーレ〉  副王の家門

2011-09-11 21:28:24 | ヨーロッパの歴史
 〈山猫〉が描いた同じ時代、シチリア島の反対側、カターニャの有力貴族家門の愛憎の物語。ここには、サリーナ公爵とは正反対の人格の公爵が登場する。強欲で無教養、品性陋劣で自分の立場を客観的に眺める素養や学識を持たないジャコモ。フランカランツァの領主ウツェーダ公爵である。ドラマは、ジャコモとその息子、コンサールヴォとの葛藤・相克を描く。描かれるのは、ジャコモの滅びの醜さとコンサールヴォのトラスフォルミズモ(転身)の軽薄さである。 . . . 本文を読む

〈山猫〉 滅びの美学 vs トラスフォルミスモ

2011-07-25 20:53:52 | ヨーロッパの歴史
 19世紀後半、イタリアでは幾度もの挫折を経ながらリソルジメント(国民的統合)が進んだ。1860年には、ガリバルディに率いられたピエモンテ王軍がシチリアに上陸して、統合を拒むナーポリ=シチリア王軍を打ちのめした。所領や支配地ごとに分立していた領主貴族たちは、深刻な財政危機に直面しながらイタリアという国民的レジームのなかに組み込まれることになった。特権的地位を守るために、新たな国民国家のエリートへと転身するのか、滅びのときを待つのか、選択が迫られた。 . . . 本文を読む

「サンジャックへの旅」へのオマージュ

2011-01-16 15:45:09 | ヨーロッパの歴史
 「サンジャックへの道」はフランス映画に特有のエスプリで、現代社会の状況とサンティアーゴ巡礼ブームを交差させて描き出した。そこには、ヨーロッパ史の教科書とかマスメディアの報道が語る姿とはかなり異なった「本音のヨーロッパ」(歴史と文化)の姿が現れている。 . . . 本文を読む

「山と丘の違い」にこだわる 1

2010-04-26 20:59:02 | ヨーロッパの歴史
 第2次世界戦争末期の時代を背景として、「山と丘の違い」にこだわるウェイルズのある町の人びとの気風を描く、いかにもブリティッシュな映画。ヨーロッパでも日本でも山岳の地理学的調査は陸軍の任務だった。であるがゆえに、山(標高)の測量には、軍や戦争の問題と絡み合う。ユニークな事件を扱っていて、多様な角度からの吟味が楽しめる。 . . . 本文を読む

アイアランド独立闘争へのオマージュ

2009-12-20 15:25:19 | ヨーロッパの歴史
 ジャック・ヒギンズが描いた時代から少し遡り、「アイアランド自由国」独立への動きを描いた映画作品を取り上げる。「マイケル・コリンズ」だ。アルスター州を除く南部が1922年、ブリテン王国の覇権を受容するという留保条件つきながら、政治的独立を達成した。血で血を洗う報復合戦、武力闘争から抜け出すための、余儀ない選択だった。その独立の限界が、北アイルランドでの紛争と混乱の直接の引き金になったのだが。 . . . 本文を読む

追い詰められた暗殺者 Ⅱ

2009-12-03 21:11:55 | ヨーロッパの歴史
 これまた、ジャック・ヒギンズ原作のアイアランド紛争を背景とするハードボイルド。挫折し、大義と目的を失ったテロリストの末路を描く物語。IRA武装組織に属するマーティン・ファロンは、誤爆でスクールバスの子どもたちを死なせてしまったことで、虚無的になって武装闘争から離脱した。だが、組織は彼の離脱を許さなかった。仲間に命を狙われる羽目に。しかも、ギャングたちの抗争にも巻き込まれていく。 . . . 本文を読む

追い詰められた暗殺者

2009-11-15 12:23:44 | ヨーロッパの歴史
 イングランドによるアイアランドへの侵略、抑圧と植民地支配は14世紀に始まる長い歴史を持つ。支配・抑圧と抵抗・反乱の血まみれの紛争史がつい最近まで続いていた。そのアイアランドを舞台とする、ある暗殺者・狙撃者の悲劇を描いた物語だ。KGBによって非情の暗殺者として育てられた男は、心の片隅に「心」を持っていた。だが、KGBの裏切りによって、ブリテン政府に追い詰められ、無謀で自滅的な攻撃に出た。 . . . 本文を読む

「ゴールィキーパーク」へのオマージュ

2009-06-04 21:33:54 | ヨーロッパの歴史
 映画「ゴールィキーパーク」とその原作は、刑事アルカージィの捜査活動をつうじてソ連社会のありよう(の1断面)を描いている。そのソヴィエト・レジームは20年近く前に崩壊してしまった。このレジームを、ソ連当局自身も私たち(西側)の人間も「社会主義」と呼んで疑いもしなかった。だが、それは正しかったのか。私には、資本主義的レジームの1変種、それも兵営型国家統制によって組織された資本主義にしか思えない。 . . . 本文を読む

ゴールィキーパーク

2009-05-14 20:55:38 | ヨーロッパの歴史
 1970年代末のソ連、ある殺人事件の捜査を続けるモスクワ警察の刑事。彼は警察権力の側の人間だが、共産党の支配には辟易していた。捜査線上には、抑圧的なレジームのもとで苦悩する人びとのさまざまな「生き様」が浮かび上がってきた。そのなかで、「自由を求める心」がひときわ強いがために人生を押し潰されそうになっている美しい女性に出会った。彼女が巻き込まれた事件には、西側の富裕商人と結託した国家機関が深くかかわっていた。 . . . 本文を読む