映画に 乾杯! / 知の彷徨者(さまよいびと)

名作映画に描かれている人物、物語、事件、時代背景などについて思いをめぐらせ、社会史的な視点で考察します。

「政治劇」としての戦争  虚構の開戦理由

2016-09-26 20:21:23 | 戦争史(軍事史)
 現在、私たちは、イラクに対するアメリカの侵攻・侵略戦争を正当化した理由が根拠のない虚構であったということを知っている。「大量破壊兵器の開発と保有」というのが、開戦の理由だった。目標は虚偽だったが、何万人もの兵員が戦場に送られ多数の死傷者がもたらされ、イラクの国家と秩序と平和は破壊された。このおぞましい事態を大量破壊兵器の探索と除去のために最前線で戦った兵士の目から描いたのが、《グリーンゾーン》だ。 . . . 本文を読む

米ソ共謀としての冷戦 その3

2012-11-01 08:36:52 | 戦争史(軍事史)
 シカゴ警察にも軍情報部のエイジェントが浸透していた。ギャラガーらのヘンケ捜索行動は監視され、執拗な妨害と攻撃を受ける。ギャラガーには憲兵隊の追手が迫り、デリッチ警部は銃撃されて負傷した。他方、ボイェットはソ連書記長の暗殺に向けて着々と準備を進めていた。 . . . 本文を読む

米ソ共謀としての冷戦  その2

2012-11-01 08:27:53 | 戦争史(軍事史)
 ギャラガーはジョン・ボイェットという兵士をアメリカに護送する任務を割り当てられた。ところが、本国の基地に到着すると、ボイェットは逃亡した。逃亡は仕組まれたものだった。ギャラガーは、ボイェットを追跡しようとするが、ボイェットには周到に逃走経路が用意されているうえに、ギャラガーに対してさまざまな妨害と攻撃が仕かけられていた。 . . . 本文を読む

米ソ共謀としての冷戦

2012-10-24 17:08:10 | 戦争史(軍事史)
 かつての「冷戦構造」は、アメリカとソ連の双方が、それぞれ相手側の脅威を理由に自らの軍備拡張と軍事予算の維持拡大を求める仕組みを含んでいた。つまり、双方の権力中枢としての軍産複合体の利権を極大化する構造だった。その意味では、冷戦とは米ソ(政界と軍部)の暗黙の共謀関係のうえに成り立っていたともいえる。だが、もし意図的・意識的な共謀が組織されていたら…というのが、この作品のプロットの背景にある。 . . . 本文を読む

政治の手段としての戦争

2012-03-20 13:58:55 | 戦争史(軍事史)
《父親たちの星条旗》は、クリント・イーストウッド監督が独自の視点から、「太平洋戦争」の実体を切り取った傑作だ。戦場の悲惨な現実、とてつもない破壊と殺戮、そこには英雄も善悪の弁別もない。ただ暴力が自己運動する場でしかない。だが、その戦争を発動した者は誰か。戦争に向けて国家全体の資源を動員し、人員を動員して死に直面させた権力とは何か。こういう問題を鋭く提起している。 . . . 本文を読む

映像の地政学  映像の現象学 6

2010-12-19 14:51:08 | 戦争史(軍事史)
 すぐれた映画は、できごとの背景文脈をも描き出す。今回は、映像物語の背景としての諸国家の軍事的構造と結びついた権力構造や経済や文化、あるいは国家や民衆がおかれた軍事的環境を読み取る試みをおこなう。題して「映像の地政学」。映画を手がかりに、どこまで歴史的な軍事状況や権力構造を読み解くことができるか。 . . . 本文を読む

ブリトン好みの皮肉な結末

2009-08-15 22:06:32 | 戦争史(軍事史)
 ブリテン人(ブリトン)は、映像作品でも、単純な「勧善懲悪」の物語よりも「皮肉な結末」「苦い現実」を好むようだ。その傑作の1つが「マッケンジー脱走」だ。第2次世界戦争の後半、スコットランドのマッケンジー収容所に収容されていたドイツ兵捕虜の脱走計画とそれを追跡・阻止しようとするブリテン軍情報部将校の知恵比べと出し抜きあい、騙し合いをスリリングに描く佳作。知恵比べの巧妙さと「結末の苦さ」が、深い印象を与える。 . . . 本文を読む

ヨーロッパの解放 リアリズムとプロパガンダ

2009-03-10 21:15:28 | 戦争史(軍事史)
 第2次世界戦争の東部戦線の最前線の戦闘やソ連軍によるナチスからの「ヨーロッパの解放」の進展を、実物そっくりの兵器(戦車、大砲など)や多数の兵員を登場させて描いた巨大スケイルの映画。それが、「ヨーロッパの解放」シリーズだ。そこには、当時のソ連の「社会主義的リアリズム」という思想や方法論が駆使されている。搭乗する戦車などの兵器の実物感や迫力は圧倒的だ。しかし、作品としての取り扱いは、きわめて難しい作品だ。 . . . 本文を読む

バトゥル オヴ ブリテン

2008-08-18 21:33:42 | 戦争史(軍事史)
 1940年初夏までに、ナチス・ドイツ軍は西ヨーロッパの大半を制圧し、ブリテンへの攻撃準備を整えていた。ヒトラーは、ブリテン諸島への侵攻の構えを見せながら、ブリテンに講和交渉を迫った。だが、この要求をブリテンは強硬に突っぱねた。こうして、ドイツの航空戦力によるブリテン本土爆撃作戦が始まった。この「ブリテンの戦い」は、英独双方の力関係と状況についての「計算違い」「目算誤り」から始まった戦闘だった。 . . . 本文を読む

戦艦ビスマルクの最期

2008-02-24 15:35:34 | 戦争史(軍事史)
 列強諸国家による兵器開発競争の果てに始まった第2次世界戦争では、「局部的合理性」を追求するあまり、戦略的かつ戦術的に見て「とんでもない」兵器がいくつも登場した。ドイツ帝国海軍の戦艦ビスマルクもその1つ。この映画は、ブリテン海軍の立場から、対戦艦ビスマルク作戦を描いた作品。戦役投入後の最初の作戦であえなく海の藻屑となった、この戦艦の数奇にして皮肉な運命を追いかける。 . . . 本文を読む

日本の軍事=安保環境と巨大怪獣映画

2007-11-26 20:51:41 | 戦争史(軍事史)
 ゴジラを筆頭とする怪獣映画は、世界の安全保障や政治的・軍事的環境のなかでの日本の地位や位置づけの問題を、良くも悪くも反映している。今回は、東宝のゴジラ映画シリーズをつつき回しながら、このような問題群を考えてみる。実際には相当深刻な問題が提起・投射されているのだが、「たかが怪獣映画」と割り切って、肩の力を抜いて安保・軍事問題を眺めてみよう。 . . . 本文を読む

パリは燃えているか?

2007-07-01 17:13:42 | 戦争史(軍事史)
 1944年8月の末近く、パリはナチスの軍事的支配から解放された。だが、パリ市街が、それゆえまた、エッフェル塔、ノートルダム大聖堂、ルーヴル宮など、この都市にある歴史的建築物や史跡がほぼ無傷で残されたのは、いくつかの偶然と幸運が重なった結果だった。ヒトラーはドイツ軍の司令官にパリを明け渡すときには廃墟にせよ、爆破し、破壊しつくせ、と命じていたからだ。解放にさいして、パリが経験した混乱や紛争、そして幸運な偶然の連鎖を追跡する。 . . . 本文を読む

史上最大の作戦

2007-06-14 21:02:02 | 戦争史(軍事史)
 連合軍のノルマンディ上陸・侵攻作戦は、ヨーロッパのナチスからの解放にとって決定的に重要な意味をもつ。この作戦は、ヨーロッパの大西洋岸にナチズムを撃破していく拠点をつくるもので、東部でのソ連の侵攻に呼応するものだった。だが、そこにいたる道は険しかった。ドイツ軍の電撃戦の成功と、成功ゆえの没落の要因を追いながら、ヨーロッパの軍事的解放への過程を一瞥する。 . . . 本文を読む

プロット & ウィット

2007-06-04 20:51:26 | 戦争史(軍事史)
 1984年初冬、北大西洋でソ連の最新鋭の大型原潜、レッドオクトーバーが消息を絶った。それは無音推進装置を備えた先制攻撃用核ミサイル潜水艦で、通常のソナーには捕捉されずに攻撃目標に接近、先制攻撃するために開発された原潜だった。この艦の艦長ラミウスは、艦もろとも士官全員でのアメリカ亡命を企てていた。しかし、ソ連の大艦隊が分厚い包囲網を敷き、レッドオクトーバーの破壊をめざしていた。CIAのアナリスト、ライアンは亡命計画を察知して、亡命作戦成功のために奮闘する。 . . . 本文を読む