映画に 乾杯! / 知の彷徨者(さまよいびと)

名作映画に描かれている人物、物語、事件、時代背景などについて思いをめぐらせ、社会史的な視点で考察します。

映像物語の流れと構成の方法  映像の現象学9

2012-10-08 09:13:02 | 映像表現
 映像物語の画面は、時間の流れに沿って進むしかない。すべての人間の営為は、時間の流れ・進行にしたがって動くしかない。起承転結は原理的に時系列に沿って進むしかない。しかし、画面が描きだす場面の順番・構成は、時間の流れから相対的に自由である。過去を現在や未来よりもあとに描いたり、結末から物語の展開を始めたりすることもある。ここに、物語の展開の流れや構成を編集する面白さと難しさがある。 . . . 本文を読む

幻影は権力? それとも権力は幻影?

2012-06-17 16:06:54 | 映像表現
 《幻影師 アイゼンハイム》は、現代のイリュージョン・テクノロジーを過去に投影した寓話。19世紀末のオーストリア(=ハンガリア)帝国のヴィーンを舞台としているが、物語はほとんど史実にはもとづいていない。だが、史実から多くの材料を背景や時代設定に取り込んでいる、不思議なファンタジーだ。 . . . 本文を読む

物語性と演技 (映像の現象学 7)

2011-05-24 21:19:20 | 映像表現
 映像物語、映像劇としての映画を語るうえでは、物語の展開構造と演技について考察しなければなるまい。だが、あまりに難しい問題領域根なので、これまで避けてきた。とはいえ、避けては通れない領域である。というわけで、これまた勝手な解釈と評論を捏ね上げてみる。 . . . 本文を読む

田舎暮らしの記録 31

2011-03-19 15:20:07 | 映像表現
 「ゲゲゲの女房」をきっかけに見るようになったNHKの連続ドラマ。今、大団円に近づきつつある「てっぱん」を見ながら、脚本・演出の手法について考えさせられている。というのも、これが〈大阪=関西の力技〉か、と感心する点が随所に見られるからだ。NHKを含めて東京や関東のテレヴィ局ならば、「ようやれん」ような、恐ろしいほど原則的で「あざとい」方法を駆使して、毎日、毎週、見せ場やクライマクス、笑いどころ、泣きどころを散りばめて、視聴者を惹きつけている。脚本と演出陣は、どうやら理論と技法をきわめた芸者(「技芸に秀でたつわもの」の意味)が控えているらしい。 . . . 本文を読む

映画作品 おススメ短信 4

2011-03-12 16:00:53 | 映像表現
 映画や小説、音楽などの創作物=芸術作品(工芸作品も含めて)は、つまることろ、私たち人間が「なにものであるか」を語るための形式であるようだ。それは、自然科学や歴史学や社会科学などにも当てはまることなのだが。内容がフィクションやファンタジーであっても。物語や思考は、つまるところ、人間とはそういう内容を想像したり意識したり、認識したりする存在であるということを表現するからだ。「事実」であるかどうかは、この本質を左右するものではない。 . . . 本文を読む

映像の地政学 その2 (映像の現象学 6)

2011-01-02 15:12:48 | 映像表現
 映画作品がリアリティを求めて描いたあれこれのシーン(たとえ数秒なりとも)から、世界のパウワーポリティクスや権力構造が浮かび上がってくることもある。すぐれた映画作品には、しっかりした状況設定と背景描写がある。何を読みとるか、それが見る側の課題となる。「何をことさら…」と言われてしまえば、それまでのことだが。まあ、要するに、物好きな知的好奇心からにすぎない。 . . . 本文を読む

「スターウォーズ」のコスモロギー

2010-09-05 21:07:49 | 映像表現
 「スターウォーズ」シリーズは、各クールの物語も面白いが、その物語全体が予定=想定している状況設定、つまりその世界観=宇宙観=文明観がじつに興味深い。なにしろ、巨大な銀河系全体にまたがる文明システム・世界システムが想定されているのだから。それ自体としては描かれていない「スターウォーズ」のコズモロギーを、物語のあちらこちらに散見される断片をつつき回して、好き勝手に構想してみよう。 . . . 本文を読む

8人の目撃事実のモンタージュ

2010-02-23 20:42:37 | 映像表現
 かつて黒沢明は、「羅生門」で事実は見る者の立場によって異なるものだということを映像表現にした。映画「ヴァンテイジ・ポイント」も、エスパーニャでのアメリカ大統領狙撃事件の真実を、8人の目撃者の視点を合成して描き出そうとしている。映像物語の表現方法としては、じつに興味深い。 . . . 本文を読む

映像の現象学 5

2010-01-11 10:45:27 | 映像表現
 このブログでは、これまでにいくつかの「暗殺事件(暗殺者)」の物語を取り上げた。そこで、ここでは、暗殺事件そのものと、その背後に潜む「政治史の文脈」、「謀略の政治史・社会史」という視角から、映像表現とストリー構成ないしプロットを分析してみよう。 . . . 本文を読む

映像の現象学 4

2009-12-06 13:01:52 | 映像表現
 私は、このブログで映画作品の物語(表現)について説明=再現している。批評・評論しているのではなく、映像の物語や文脈、意味合いついて考察し、説明している。このような記事を書くのは、じつは映画の物語や文脈はかなりわかりにくい、複雑な動的な構築物だからだ。観客はわかった気になるかもしれないが、制作陣が込めた思いや問題提起、仕掛けなどは奥が深くて、いく度か観て分析し、再構成しないと、理解には程遠いのが実際のところだ。 . . . 本文を読む

映像の現象学 3

2009-08-02 21:01:16 | 映像表現
 ときおり思い出したように登場するこのコーナー。今回は映画作品の物語の筋立て、ストーリー展開について考えてみる。映像芸術における「現実味=リアリティ」(または実在性)と「現実の世の中」とは、そもそも別次元のものだ。判断基準(評価基準)として、現実世界での経験的感覚や現実味を映画作品のなかに直接持ち込んでも、あまり大した意味はない。むしろ、作品が取り上げた素材やテーマを手がかりに、現実世界の見方や感じ方を問い直したいものだ。 . . . 本文を読む