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ゲノム編集食品 新たな流通ルール議論

ゲノム編集技術利用食品の取り扱い

遺伝子を効率良く改変できる「ゲノム編集」技術を利用した農作物などの食品安全審査について、厚生労働省の専門部会は2019年1月17日、報告書案(ルール)をほぼまとめたようです。この専門会議には、医師や品種改良の専門家、医学研究者、消費者団体が参加しています。

生物の細胞内の核の中にあるDNAには、生物を形作る設計図である遺伝子情報がある。そして、遺伝子情報の集合体をゲノムと言います。参考:人の体を構成する細胞のお話

ゲノム編集とは遺伝情報を高い精度で改変する技術で、DNA切断酵素である人工ヌクレアーゼを用い、ゲノム上で特定のDNA塩基配列を標的として遺伝子を壊したり、置き換えたりするもの。2010年以降、遺伝子治療や農畜産物の育種への応用を目指して研究が急速に進められている。

今回議論になったゲノム編集は、2種類あります。
①遺伝子の特性を切断(欠失)して機能停止させる。
②切った部分に別の遺伝情報を組み込み、機能変更・機能付加させる。

この①は当初、自然界の突然変異と変わらないから、審査は必要ないとされていましたが、異論が出てきたので、最終的に届け出制となりました。届け出の内容は、品種名・遺伝子改変の内容、アレルギー物質や毒性・栄養などの主要成分の変化、となっています。届け出が必要なゲノム編集食品を輸入する場合、開発者から情報を得て報告してもらう。必要な届け出をせずにゲノム編集食品を流通させた業者を厚労省が把握した場合、業者名を公表することとしました。私としては不安が残ります。「業者名を公表した時点ではすでに大きな影響が広がった後になる。」ということも考えられるからです。また、この種の食品が急速に増え、知らないうちに食べているという事態が容易に想定されます。
②の場合は、遺伝子組み換え食品と同じく、食品衛生法に基づく安全性審査の手続きが必要となりました。

これまで実際に取り組まれた実例
マダイ・・・筋肉の成長を止める遺伝子をゲノム編集で壊したため、これまでの1.5倍の筋肉がつき大きくなった。
トマト・・・血圧の上昇を抑える物質を豊富に含む品種を開発。
マッシュルーム・・・黒くならない品種を開発。
米・・・収穫量を増える。
マグロ・・・常にマグロは動き回らないと死ぬから、養殖が難しいので、おとなしい性格にした。

自然界の突然変異の実例
ベルギーの牛で、ベンジャン・ブルーという。筋肉量が異常に多い牛が誕生し、有名になっています。これをヒントに筋肉量の多いマダイを考え付いたそうです。

現状として、日本には遺伝子組み換え食品表示義務があります。これは遺伝子組み換え作物の商業用栽培が始まった1996年から懸念の高りがあり、消費者運動でその表示義務を実現しています。私も買い物の時助かっています。
しかし、日本での表示義務の対象は、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜やパパイヤの8種類の農産物と、これを原材料とする33種類の加工食品だけです。家畜の飼料は遺伝子組み換えのとうもろこしなので心配されているのです。表示義務の対象になっていない農産物や加工食品については皆目分からない。EUではスーパーなどの販売店のみならずレストランでの表示も全品目義務付けられています。これから益々遺伝子組み換えが増加してくるのに、こんな状況では、消費者は知らない間に遺伝子組み換えを食べてしまうことは確実です。

それぞれの生物はそれぞれの遺伝子が引き継がれ、あるいは環境や経験などにより情報が上書きされたりし、時に突然変異も確かにあります。しかし、異なる生物間の遺伝子情報を組み入れたり、付加したりすることが何を意味するか誰も分からない状況で、全国の食卓に知らないうちにそんな食品が並び、食べていくことが、2019年という年から急加速するという事実は、しっかりと受け止めておきたいと思います。今年4月以降、表示方法の議論が始まるそうです。


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