断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

ティモワーニュTymoigneのブログ Money and Banking

2016-07-30 15:23:03 | MMT & SFC
ティモワーニュのブログを簡単に訳してみた。
ただ、図が多いのだが、うまく張ることができなかった。。。。
原文は

http://neweconomicperspectives.org/2016/01/money-banking-part-1.html

です。。。。。いつもながら、ご本人からの許可は得ていないので、
あくまでも個人の学習の参考までに。。。


貨幣と銀行 - 1
[原文タイトルはMoney and Banking なので、
銀行というより、銀行業務にしたほうがよかったかもしれないんだけれど。。。]



エリック・ティモワーニュ


ここ何年か、貨幣と銀行(M&B)講義担当者として四苦八苦していた。
この講義は一貫性を欠いており、学生たちに
貨幣の部と銀行の部との間の結びつきを理解させることに困難を
感じていた。問題の大部分は、M&B用の教科書のせいである。その教科書は、
時代遅れの表記法についてはともかく、
一貫したコアを欠いたバラバラの章を寄せ集めただけの物であった。
それ故、筆者はその教科書を使うことをあきらめ、自分のやり方で進めることにした。


金融システムのコアは財務書類から成っているのであり、
それらの中でも、特に重要なのがバランスシートである。
バランスシートには、M&B講義の教程範囲内の基礎の大部分が含まれている。
即ち、銀行および中央銀行による貨幣創造、貨幣の本質、金融危機、
証券化、金融的依存関係、なんでもバランスシートに関係せざるを得ないのである。
ミンスキーがよく語ったように、どんな理屈を言たところで、
バランスシートで表現できないのであれば、その論理には問題があるのだ。


それ故、筆者の「教科書」の第1章ではバランスシートのメカニズムを扱うこととし、
そしてそれがこのM&Bに関するブログ・シリーズの第一歩となる。まあ、
会計というのは退屈だが、カギとなる会計的概念についてきちんと把握しておくことが、
金融メカニズムを理解するうえでは絶対必要なのだ。M&Bの教科書は普通は
「貨幣」の章で始まるのだけれど、本ブログではもっと後回しにし、
バランスシートや、例えば「現在価値」のような金融概念が十分理解された後で、
学習する。出来れば週1回更新するように務めるが、赤ん坊と
4歳児の面倒を見る合間に書くことになるので、まあ、
その通り行くかどうか。。。このブログで、M&Bの全領域を
カバーしようということではない。まずは銀行、中央銀行、そして貨幣という順序で
進めてゆくつもりだ。


バランスシートとは何か?


バランスシートとは、会計書類の一種で、
その経済主体が所有しているもの(「資産」)と、
他の経済主体に負っているもの(「負債」)を記録したものである。
資産と負債の差額は「純資産」または「持ち分」「資本」などと呼ばれる。


[※ここに最初の図が入る・・・]
図 0aバランスシート


資産と負債の分類には異なる数多くのやり方がある。
我々の目的にとっては、バランスシートは、細かくは以下の通りに内訳される。

[※二つ目の図]
図 0b単純なバランスシート



金融資産とは他の経済主体に対する請求権であり、実物資産とは、
通常は減価する物体(自動車、建築物、機械、ペン、机、棚卸資産、等々)である。
要求払い負債とは、債権者の要求をもって満期とする負債
(例えば、銀行口座からは、時を問わず口座名義人の要求があり次第、
現金が即座に払戻しされる)であり、偶発債務とは、
ある特定の事象が起こった時に満期となる債務(例えば、生命保険)である。
有期負債とは、あらかじめ期日の定めのある負債
(例えばモーゲージ債の金利[の見越計上]及び元本の償還は、毎月決まっている)である。


バランスシートは、すべての経済主体について作成することができる。経済主体は、
一個人かもしれないし一企業かもしれないし、
経済全体の一つの部門ということもあるし、一国、その他、
資産と負債を所有する物であれば何でもよい。以下は、合衆国における家計部門
(および、NPO)のバランスシートである(Finanicial Accounts of
the United Statesより)。2015年の第3四半期、合衆国の家計部門は
996億ドルの価値の資産を所有しており、144億ドルの価値の負債を負っていた。したがって
純資産は852億ドル(996-144)に等しい。
家計部門は306億ドルの実物資産、689億ドルの金融資産を有していた。
主要な負債は二つで、ホーム・モーゲージ債(95億ドル)と、消費者金融、
すなわち、クレジットカード、自動車ローン、学資ローン等々であった(35億ドル)。


[※最初の表が入る]
B.101 Balance Sheet of Household and Non profit Organization


バランスシートの諸法則


バランスシートは、複式簿記の原理に従う。例えば、
「バランスシートは常にバランスしなければならない」。すなわち、
以下の式が常に成立しなければならない。


資産 = 負債 + 純資産


実務的な、かつ中心的な含意は、バランスシート上のある項目の変化は必ず、
他の少なくとも一つの項目の変化と等しくなり、そうすることで、バランスシートは
常にバランスを保つということである。


ごく単純なバランスシートから始めよう。資産は一つだけで
100,000ドルの価値を持つ住宅家屋である。これを購入するため、
20,000ドルが現金払いされ、80,000ドルは銀行からの借入に頼る。


[※図1が入る]
図 1単純なバランスシート


モーゲージ債の元本(未償還残高)の内、40,000ドルが償還されたとき、
どのように変化するだろうか。

[※図が入る]
図 2モーゲージ債元本償還の効果


モーゲージ債の価値は40,000ドルだけ引き下げられ、
純資産の価値は40,000だけ増加する。こうして会計等式は守られる。


最初のバランスシートに戻って、住宅家屋の価値が20,000ドル上昇したら、
どうなるだろうか。


[※ 図]

図 3住宅価格上昇の効果



モーゲージ債の価値は20,000ドル引き上げられ、
そして純資産が20,000ドル増加することになり、ここでもまた会計等式が守られている。

論点をより素早く把握し、変化をより可視的にするため、
エコノミストたちはしばしば好んで「Tアカウント」と呼ばれる表示を使う。
(表の枠がT字の形になるのでそう呼ばれる。)ここではバランスシートの変化のみを記録する。


[※ バランスシートの変化を示した図]

図 4Tアカウント上で、モーゲージ債元本償還を記録する場合

[※ バランスシートの変化を示した図]

図 5Tアカウント上で、住宅価格の上昇を記録する場合

両者が等しいことが、より鮮明に示される。これはバランスシートの
右側の二つのアイティムがそれぞれ反対方向に同額変化する場合(図 4)と、
資産と純資産が同額変化する場合(図 5)とある。勿論、
これらだけが会計等式を守り貸借を一致させるただ二つだけの方法というわけではない。
先へ進むほどに、他のやり方も見るであろう。ここでのポイントは、
A(資産) = L(負債) + NW(純資産) の等式を守るためには
バランスシート上では少なくとも二つの項目に確実に変化がなければならない、
ということである。常にこう問わなければならない。すなわち、この変化に対応し、
どの反対勘定が変化するのか。これは、銀行及び中央銀行が
いかに運営されているのかを学習するに際しての、実務的含意である。


何がバランスシートを変化させるのか?


バランスシートを変化させる要因を、3つのカテゴリーに分類することができる。


キャッシュ・インフローとアウトフロー、すなわち、ネット・キャッシュフロー
収入と費用、すなわち純所得
キャピタル・ゲインとキャピタル・ロス、すなわち、資産・負債の市場価値の純変化


これら諸カテゴリーは、バランスシートではなく
他の書類によってより慎重に記録されているのだが、
このブログではバランスシートとの関係に焦点が合わされるであろう。


ネット・キャッシュフロー


キャッシュ・インフロー及びキャッシュ・アウトフローは
経済主体が保有している資金の額に変化をもたらす。つまり、
資産側で、物理的に保有されている通貨または銀行口座に保有されている預金が
変化することになる。ある資産はキャッシュ・インフローをもたらす一方で、
ある負債および資本はキャッシュ・アウトフロー(例えば配当支払い)をもたらす。



[※仕訳ボックスのような図からあっちこっちに線や矢印が出ている図]

図 6バランスシートとキャッシュフロー



もし、キャッシュ・インフローのほうがキャッシュ・アウトフローより大きければ、
経済主体が保有している貨幣性資産は増加する。経済主体は、
それを使って資産を購入したり、借り入れによってレバレッジをかけることができる。
もしネット・キャッシュフローがマイナスなら、貨幣性資産の残高は減少し、
そして経済主体は、場合によっては、費用の一部を賄うために債務額を
さらに増やさなければならないことになる。


当期資金残高 = 前期資金残高 + 当期純キャッシュフロー


ごく単純なバランスシートに戻って、40,000ドルの給料を稼ぎ、
その給与の中から30年間固定金利10%のモーゲージ債の償還を行ったと仮定しよう。
単純化のため元本返済は定額法によるものとすると(実際の
モーゲージ債の償還計算は違う)、キャッシュフローの構造は、図のようになる。



[※直前のよりは多少すっきりした仕訳ボックスと矢印の図]
図 7バランスシートとキャッシュフロー、一例


翌年の期首のバランスシートは(すべてのキャッシュフローは
電送ではなく実物現金による支払いで行われると仮定する)以下の通り。

[※最後の図]
図 8キャッシュフローの変動後のバランスシート

バランスシート内ではきわめてわずかな変化しかない。現金の純インフローは
29,300ドルであり、モーゲージ債残高(つまり、未償還の金額)は
元本が弁済された金額分減少する。純資産の変化はこれら二つの変化の差額である。


純所得


純所得は純資産の変化を引き起こす。


当期純資産 = 前期純資産 + 当期純所得


純所得(例えば、税引き前所得を純所得の代わりに使うことができる)は、
プラスにもマイナスにもなり得るので、
純資産も増加するかもしれないし、減少するかもしれない。先の例(図7、8)においては、
純キャッシュフローおよび純所得は同じものということでよかった。しかしながら、
すべての所得が資金の増加になるわけではない。この点は後で銀行を学習する際に説明しよう。


キャピタル・ゲインとキャピタル・ロス


最後に、資産および負債の価値は、その市場価値の変化によって
変化する。もし「市場 対 市場」原則会計[時価会計]が採用されているなら、
つまり、バランスシート項目が現在の市場価値をベースにして評価されているのなら、
これらの変化はバランスシート上で以下のように説明され、
また純資産もそれに応じて変化することになる。


当期純資産 = 前期純資産 + 当期純所得 + 当期純キャピタル・ゲイン
図 3の例では、キャピタル・ゲインの影響が簡単に説明されている。

これで本日は終わり!次回はこの原理を銀行及び中央銀行に当てはめてみよう。




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