ワニなつノート

≪支援者のさじ加減≫という言葉



ちょっと前に紹介した『良い支援?』の岩橋さんの文章から、
私がいちばん好きな箇所を紹介します。

21日の集会のことを考えながら、何度もこの文章が浮かびました。
自立生活に限らず、学校でもまったく同じなのだと思いますが。

いちばん岩橋さんらしい文章だと思います。



【毎日違う支援者が入るからこそ、見えてくる当事者の姿】

親元にいれば、毎日親が同じ形で本人と関わります。
ところが、自立生活をはじめれば、毎日違う支援者が入り、
一応の対応については情報として伝えてあっても、
それぞれの支援者のさじ加減は支援者一人一人で違ってきます。

自閉症を伴う人の場合、一定した関わり方によって
本人が落ち着いた生活ができるとよく言われます。

しかし、一人暮らしをはじめると様々な人が関わるので、
一定した関わり方はできません。
また、親元にいれば生活のほとんどを親が担い、
本人が関わるのはごく一部です。
しかし、自立生活をはじめれば
一切合財に本人が関わらなければなりません。

それゆえに、
「知的を伴う自閉症の人の一人暮らしは無理」と言われます。

しかし、親や特定の人たちだけで作り上げた一定した関わりでも、
実際は親がお手上げ状態になるケースは多く、一人で抱えてきた分、
事切れれば施設入所というケースが多くあります。


ところが、日々変わる支援者を前にすると、
一つの事柄に対しある人の時はスムーズにことが進み、
ある人の時は大変な状態になることがあります。

Aさんの時はよくて、Bさんの時は混乱している。
実は、その違いから本人が何をどのように認識し、
どのような支援をすれば良いかが見えてきます。

        ☆

入浴を例にとってみれば、
Aさんの時はゆっくり湯船につかっていたという報告があり、
Bさんの時はほとんど湯船につからずに出てしまったという
報告がありました。

また、Aさんは
「自分で身体を洗うことができないので介助が必要です」との報告で、
Bさんは、
「自分で上手に洗っていました」という報告。

それだけでは、何故そのような違いが現われたのかは解りません。

その時の様子をもっと詳しく聞けば、
Aさんは、当事者が湯船につかる時「50まで数えましょう」と
声かけし、「一緒に数を数えていた」からゆっくり湯船につかれた。

またBさんは当事者と一緒にお風呂に入り一緒に体を洗う。
当事者はそれをまねて洗ったので、
「上手に洗えた」ということが分かりました。

また、Aさんは浴室の外からの声かけ、
Bさんは一緒に入るという違いが、
実は当事者の違いとなって現れたということも分かりました。

調理についても、
Cさんは「料理も一人でできます」と言い、
Dさんは「介助者がやらないとうまくできない」と言い、
Eさんからは「危なくて包丁を持たせることができません」
と報告がありました。

その違いはどこから来るのかを、入浴と同様に聞いていけば、
Cさんは当事者が作れるメニューを考え、
Dさんは当事者の栄養面を考えたメニューで作り、
Eさんはちゃんと料理をすることにこだわったために、
本人と折り合いがつかなくて当事者を緊張させてしまった、
という違いが見えてきて、
ではどのように支援すれば良いかがみえてくるのです。

様々な支援者が入るということは、
それぞれに向き合い方が違い、
その時々の情報を共有することで、
当事者は支援者が提供する何を見て理解しているかを
知ることができるというメリットがあります。

『良い支援?』 岩橋誠治・他 生活書院より


コメント一覧

ワニなつ
コメント、ありがとうございます。

ネットの世界ってすごいね~。
本の紹介したら、著者からコメントが来るんだもんな~(・。・)

このブログは今年の2月からだから、お伝えしてはいませんでした…。
まあ、私も最近まで、たこの木ブログをみてなかったので、お互いさまかなー。

実は、昨日のたこの木ブログで、「良い支援?」を紹介しているブログ一覧に、
「ワニなつ」が入ってなかったので、お知らせしなくちゃと思ったのですが、
あまりにご無沙汰していたので、どこから話そうかと、迷っていました。

ちょうどよかったです。

いろいろ話したいことや、聞きたいこともあるので、
また連絡します。

とりあえず、リンクはOKですよ。


岩ちゃん
 申し訳ないです、ワニなつノートなるブログがあることを、今日知りました。(以前教えていただいていたかな?)
(知人の知人の紹介で)

 いろいろお褒めの言葉をいただきたいへん恐縮です。
 自分が始めて本を出せたことよりも、この本を通じて新たな出会いが生まれている事に喜んでいます。
 
 ほんの少し前までは「重度知的当事者の自立なんて無理!」と一蹴されていましたが、こちらでもそちらでも、その事が何ら特別な事ではない状況が生まれているように感じます。

 でも、自立生活を始めた当事者の方々はみな、私の想像を超える様々な困難さを抱え日々過ごされていると実感しています。
 でも、その中身が何なのか?支援の側としてはまったく計り知れず、その事が当事者の皆さんをさらに追い込んでいる事は良くわかります。

 『良い支援?』と言う本は「良い支援」ではなく、「?」にこだわった本です。
 当事者にしか分からない困難さは確かにあっても、支援の側の分からなさに当事者の方々にも付き合ってもらいたい。そのためにはひたすら「自立生活」と言うもの「支援」と言うものにこだわっていきたいと思っています。

 ブログは改めて読ませていただきますね。
もし宜しければ、こちらにリンクを貼ってよいでしょうか?

 ではでは又!
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