ワニなつノート

Niiといっしょ・ゆきぐみ編(その1)



「だめだ、だめだとおもっていても、
やってみれば、なんとかなるもんだね」
ももぐみ最後の日に、4才のNiiはそうつぶやいた。


4月からは改めて、幼稚園に通う。
今度は週に二回とかじゃなく、毎日幼稚園に通うことになる。
4月3日。
緊張と期待といろんな思いに包まれて、Niiは40°の熱を出した。

いつもなら、40°の熱があればぐったりしてしまうのだが、
熱が高いこと以外に、特に症状はない。
Niiはわりと元気で、一緒にトランプをしたり、本を読んで過ごした。

二日たっても熱が下がらず、40°を超えているので病院に行ってみた。
「ちょっと扁桃腺が腫れてますね」と言われただけだった。
風邪で40°前後の熱が出たときには、食欲もないし
遊ぶ元気もなくなるのだが、そんな感じではない。
食欲もあるし、ふつうに遊んでいる。

ゆきぐみ入園式の3日前、
私の部屋にきて遊んでいたNiiが、ぽつんとつぶやいた。

「Nii、ももぐみのこと、おもいだすと、
やめなければよかったっておもうんだ…」

そんなこと気にしなくていいのにと思いながら答えた。
「あの時は、本当に行きたくなかったんし…、いいんだよ」

Niiはそれ以上、何も言わなかった。
でも、その時のNiiは「そういうことじゃないんだけど…」
という顔をしていた。

しばらくしてから、その表情の意味に気づいた。
Niiは、「あの時のこと」をかばってほしかったんじゃなく、
これからのことを話したかったのだ。

入園式の前日も、39°の熱があった。
「あした、いけるかなー」
Niiが心配そうにつぶやく。

「だいじょうぶだよ。ちょっとくらい熱があったって行けるよ。
今日だって、熱があったのに病院にいけたでしょ。
それにお薬ももらってきたから、明日はそんなに熱は出ないと思うよ。
それに、新しいせんせい誰かなーって楽しみだもんね」

「うん! なかざわせんせいだといいなぁー」
Niiは一日入園のときに遊んでくれた先生の名前をうれしそうに口にした。

「ゴリラみたいな先生だったらどうする?」
私がそう言うと、Niiはなにか吹っ切れた感じでコロコロ笑いだした。

ゴリラのマネをしながら、「楽しみだねー」と話しかけると、
Niiはいろんなことを話し始めた。
「このまえ、Nii、ようちえんのゆきぐみの夢みたんだよ。あのね……」

Niiの話を聞きながら、「やっぱり、そうか」という思いが湧いた。
Niiが幼稚園に行きたくても行けない状態のとき、
できるだけNiiの気持ちに添うようにと気遣ってきた。
幼稚園を休むことはいけないこととか、
幼稚園に行かない子は悪い子だとか、そんなことを思わせたくなかった。

でも、「行きたくない」とか不安な気持ちを口にした時に、
「いかなくてもいいんだよ」と言われてしまうことが、
いやなときもあったのだろう。

「休んでいいよ」とか、「行かなくてもいいんだよ」と言ってあげることも
大事なことだが、それよりも、Niiが不安を語ることそのことを、
もっと大事にしてあげるやり方もあったのだろうなと思う。

不安をなくしてあげようとか、早く楽にしてあげたいと願うときに、
「親の気持ち」がNiiの気持ちを追い越してしまうときがあったのだろう。

Niiの不安を不安のまま、
Niiの時間に寄り添ってあげればよかったと後悔した。
ただ、Niiの気持ちの揺れるままに、耳を傾けてあげればよかった。

それはきっと、「行かなくていいよ」という物分りのいい親であることより、
子どもにとってうれしいときがあるんだろうな。
子どもにとって不安な時間、揺れる時間も、
その年齢の時だけの大切な子どもの時間だもんな。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Niiといっしょ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事