ワニなつノート

動物感覚(1)






『動物感覚─アニマル・マインドを読み解く』

著者:テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン
出版社:日本放送出版協会   
定価:3,360円(税込み)



「私は動物がどんなふうに考えているかわかるのだが…」
という言葉で、この本は始まる。

その理由は、
「自閉症をもつ人は
 動物が考えるように考えることができる」から。

テンプルさんは自閉症の動物学者である。

テンプルさんは、3歳のとき、
神経学者のところへ連れていかれ、自閉症と診断され、
おそらく一生施設暮らしになるだろうと言われた。

テンプルさんは、また、ケンカで高校を退学になったのだが、
ケンカの原因は、クラスメートに『知恵遅れ』とか
『テープレコーダー』などと悪口を言われたことだった。

その子どもが大人になり、動物学者になって、こう言う。

「自閉症の人は、動物が考えるように考えることができるし、
 人が考えるようにも考える」

「自閉症は動物から人間へ至る道の途中にある駅のようなものだ。
 そのおかげで、私のような自閉症の人は動物のおしゃべりを
 通訳する絶好の立場にある。

 私は動物の行動のわけを飼い主に説明できる。」


テンプルさんが、動物の考えていることが分かることは、
アメリカ政府もカナダ政府も認めている。
だから、アメリカとカナダにいる牛の半分!に、
テンプルさんが設計した
『人道的な食肉システムが使われている』。

そう、私はマクドナルドや吉野屋で、
テンプルさんのお世話になっていたのだ(・。・)


この本は、私にとって、子どもを分けないで、
共に生活することがどれほど大切なことかを
考えるためにとても大切な宝物だ。

私は、動物にはそれほど興味はない。
私が知りたいのは、子どものことだ。
そして、障害をもつ子どものことも。

だから、この本を紹介しながら、
私が思いついたことを書いてみたい。


テンプルさんには、
「人間の知性と動物の知性の関係」が見えるという。


【長年、動物とともに暮らしていながら、
 私たちが動物の特殊な才能に気づかない理由は簡単だ。
 その才能が見えないのだ。
 ふつうの人は、動物がもっている特殊な才能を持っていないから、
 どこに目をつけたらいいのか分からない。

 動物が何か賢いことをするのを眺めていても、
 見ているものの正体が分かっていない。
 動物の天分は肉眼では見えないのだ。】(18)



こうした説明を読みながら、わたしの中では、
子どものことがまったく見えない大人のことが浮かぶ。

      ★


≪長い時間、障害のある子どものいるクラスで生活していながら、
 先生が子どもたちの特殊な才能に気づかない理由は簡単だ。
 子どもたちの「ふつうの子ども同士の関係」が見えないのだ。
 子どもたちの「才能」が見えないのだ。

 ふつう学級の先生も特殊教育の先生も、
 自分が子どものころにふつうに障害児と暮らした
 経験が乏しいために、
 どこに目をつけたらいいのか分からないのだ。

 だから、いじめられる心配や、
 周りの子どもがお世話しすぎる、とか、
 そうすると本人が甘えてしまうからよくないとか、
 あまりに能力の差があると本人が自信を失くすとか、
 そんな見当違いのことしか見えない。

 障害のある子と、言葉以外のコミュニケーションで
 豊かに会話している子どもたちを見ても、
 その子のいる授業の風景をみても、
 「分からない授業はかわいそう」としか見えない。

 そこにいっしょにいる子どもたちにとっての、
 授業という生活の正体が分かっていないのだ。

 そう、大切なことは目にはみえない。≫



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