千秋楽と千穐楽。
どちらも同じ意味で同じ読みだが、「しゅう」の字が違う。その理由は、秋には「火」が入っていて火事を連想させ、縁起が悪いということから長寿の動物である亀が入った「穐」という字が使われた。
6月19日(日)、ディズニー・オン・クラシック春ツアーが大千穐楽を迎えた。5月7日(土)のツアー初日の公演を観に行き、「この感動はもう一度、しかもツアー最終日の公演で味わいたい!」と思い、急遽観に行った。
今回は、各パートの様子を詳しく書くより、大千穐楽の様子を紹介する。(各パートのシンガーや演奏の様子は、5/8と9にアップした記事を参照)。
13時の開場直後は、あまりお客さんがいなかったが、始まる直前になると席がほとんど埋まり、1階席はほとんど埋まっていた。
大千穐楽ということもあり、オーケストラジャパンの準備は、念入りに行われていた(特に木管パート)。彼らのプロ意識の高さは、今回の最終公演でいかんなく発揮されることになった。
開演5分前。ナビゲーターのささきフランチェスコさんによるコンサートの紹介映像が流れ、映像終了後オーケストラジャパン、指揮者の永峰大輔さんが登場し、曲が始まった。
普段の公演では、1曲目が終えた後に入ってくるお客さんはほんの僅かだが、千穐楽の今回は1曲目に加え、2パート目の『白雪姫と7人のこびと』が終わった後にも大勢入っていた。やはり、日本人キャストが最後かもしれない今公演を見に来るお客さんは、多かったようだ。
前半で誰かが、演奏中や歌唱中に感極まって涙を流すのではないか、と思っていたが、それはアマチュアの考え方だ。プロの皆様は、そんな素振りを一切見せずに、演奏して歌を唄っていた。これが、お金の取れるパフォーマンスだと改めて思い知った。
後半も、誰かが感極まって涙を流すかと思って観ていたが、やはり誰も泣かず、むしろ千穐楽だから今までの公演以上のパフォーマンスをしようとする姿が見えた。その姿に、観ている側が感動して涙を流しそうになった。
今日のハイライトは、毎公演必ずスタンディングオーベーション並びに観客が参加する『アラジン』(1992)の『フレンド・ライク・ミー』だ。5/7の最初の公演を観ていた者からすると、千穐楽の今回は、二期会シンガーとオーケストラジャパンのダンスの腕が上がっていた。公演を重ねるごとに、演奏や歌だけでなくダンスまで上手くなるのは、プロフェッショナルな人でなければ出来ないことだと感じた(中でもコンサートマスターの青木さんのダンスは、一番上手かった)。
全曲終了後、アンコールが行われたが、ここでも皆さん涙を流さずに、唄って演奏し、観客席に感動を届けて、最後の写真撮影タイムを迎えた。
シンガーたちは、自身が演じたキャラクターになりきってポーズをとり、オーケストラジャパンのメンバーは各自の楽器を持って全員起立していた。ここでも、プロフェッショナルが発揮される。
皆さん満面の笑みで観客席に向き、5分ほど同じポーズをとっていたのだ。フランチェスコさんが出演者たちの疲れを心配していたが、皆さん一切そのような姿を見せず、ファンに喜びと感動、そしてシャッターチャンスを届けてくれた。プロ意識の高さを目の当たりにし、思わず「これがディズニー・ホスピタリティーか」と感心した。
そして、撮影タイムは終了し、シンガーと永峰大輔さんが舞台袖にはけると、ついに魔法の時間が終わりを迎えた。その時、感極まり泣きそうになったが、周りを見ると泣いてる人はほとんどおらず、楽しそうにしていたり、喜んでいる人が多いことに気付いたため、涙は出なかった。
おそらく、自分のように感極まった人は、歌と演奏に感動したか、日本人の指揮とシンガーでのツアーが最後ということに感動と寂しさを感じたのだと思う。
今年の秋公演から、3年ぶりの外国人の指揮者とシンガーになり、コロナ禍前と同じディズニー・オン・クラシックとなる。初の外国人シンガーのコンサートで楽しみだが、一方で春ツアーと同様に、日本人が指揮者とシンガーを務めるツアーも観てみたいと思った。
そう思うのは、昨年から行われてきた全国ツアーを通じて、日本人キャストの魅力を存分に知ったからだ。
ディズニー・オン・クラシックの日本人キャストの魅力とは、いったいなんなのだろうか。
〈「日本人キャストの魅力」に続く〉