一人ディズニー見聞録

ディズニーを切り口に世の中の出来事を紹介しています。ディズニーソングのコンサートレポートも書いています。

ディズニー・オン・クラシック 夢とまほうの送りもの 2022 千穐楽

2022-06-20 07:51:00 | コンサート
千秋楽と千穐楽。

どちらも同じ意味で同じ読みだが、「しゅう」の字が違う。その理由は、秋には「火」が入っていて火事を連想させ、縁起が悪いということから長寿の動物である亀が入った「穐」という字が使われた。

6月19日(日)、ディズニー・オン・クラシック春ツアーが大千穐楽を迎えた。5月7日(土)のツアー初日の公演を観に行き、「この感動はもう一度、しかもツアー最終日の公演で味わいたい!」と思い、急遽観に行った。

今回は、各パートの様子を詳しく書くより、大千穐楽の様子を紹介する。(各パートのシンガーや演奏の様子は、5/8と9にアップした記事を参照)。

13時の開場直後は、あまりお客さんがいなかったが、始まる直前になると席がほとんど埋まり、1階席はほとんど埋まっていた。

大千穐楽ということもあり、オーケストラジャパンの準備は、念入りに行われていた(特に木管パート)。彼らのプロ意識の高さは、今回の最終公演でいかんなく発揮されることになった。

開演5分前。ナビゲーターのささきフランチェスコさんによるコンサートの紹介映像が流れ、映像終了後オーケストラジャパン、指揮者の永峰大輔さんが登場し、曲が始まった。

普段の公演では、1曲目が終えた後に入ってくるお客さんはほんの僅かだが、千穐楽の今回は1曲目に加え、2パート目の『白雪姫と7人のこびと』が終わった後にも大勢入っていた。やはり、日本人キャストが最後かもしれない今公演を見に来るお客さんは、多かったようだ。

前半で誰かが、演奏中や歌唱中に感極まって涙を流すのではないか、と思っていたが、それはアマチュアの考え方だ。プロの皆様は、そんな素振りを一切見せずに、演奏して歌を唄っていた。これが、お金の取れるパフォーマンスだと改めて思い知った。

後半も、誰かが感極まって涙を流すかと思って観ていたが、やはり誰も泣かず、むしろ千穐楽だから今までの公演以上のパフォーマンスをしようとする姿が見えた。その姿に、観ている側が感動して涙を流しそうになった。

今日のハイライトは、毎公演必ずスタンディングオーベーション並びに観客が参加する『アラジン』(1992)の『フレンド・ライク・ミー』だ。5/7の最初の公演を観ていた者からすると、千穐楽の今回は、二期会シンガーとオーケストラジャパンのダンスの腕が上がっていた。公演を重ねるごとに、演奏や歌だけでなくダンスまで上手くなるのは、プロフェッショナルな人でなければ出来ないことだと感じた(中でもコンサートマスターの青木さんのダンスは、一番上手かった)。

全曲終了後、アンコールが行われたが、ここでも皆さん涙を流さずに、唄って演奏し、観客席に感動を届けて、最後の写真撮影タイムを迎えた。

シンガーたちは、自身が演じたキャラクターになりきってポーズをとり、オーケストラジャパンのメンバーは各自の楽器を持って全員起立していた。ここでも、プロフェッショナルが発揮される。

皆さん満面の笑みで観客席に向き、5分ほど同じポーズをとっていたのだ。フランチェスコさんが出演者たちの疲れを心配していたが、皆さん一切そのような姿を見せず、ファンに喜びと感動、そしてシャッターチャンスを届けてくれた。プロ意識の高さを目の当たりにし、思わず「これがディズニー・ホスピタリティーか」と感心した。

そして、撮影タイムは終了し、シンガーと永峰大輔さんが舞台袖にはけると、ついに魔法の時間が終わりを迎えた。その時、感極まり泣きそうになったが、周りを見ると泣いてる人はほとんどおらず、楽しそうにしていたり、喜んでいる人が多いことに気付いたため、涙は出なかった。

おそらく、自分のように感極まった人は、歌と演奏に感動したか、日本人の指揮とシンガーでのツアーが最後ということに感動と寂しさを感じたのだと思う。

今年の秋公演から、3年ぶりの外国人の指揮者とシンガーになり、コロナ禍前と同じディズニー・オン・クラシックとなる。初の外国人シンガーのコンサートで楽しみだが、一方で春ツアーと同様に、日本人が指揮者とシンガーを務めるツアーも観てみたいと思った。

そう思うのは、昨年から行われてきた全国ツアーを通じて、日本人キャストの魅力を存分に知ったからだ。

ディズニー・オン・クラシックの日本人キャストの魅力とは、いったいなんなのだろうか。

〈「日本人キャストの魅力」に続く〉

オヤジはつらいよ ジョージ・ダーリング編

2022-06-19 07:36:00 | 映画
「かわいそうなナナ、みんなナナ、ナナ。だがオヤジのことは知らん顔」。その男は、そうぼやきながら飼い犬を外に連れて行った。


今日6月19日(日)は、父の日だ。ディズニー作品には、数多くの父親が登場し、ムファサ(『ライオンキング』)やゼウス(『ヘラクレス』)のように威厳がある父親もいれば、マーリン(『ファインディング・ニモ』)やトリトン(『リトル・マーメイド』)のように、子どもを守るため過保護になるものもいる。


様々な父親たちがいるが、その中でも一番ぞんざいな扱いを受けるキャラクターがいた。それは、『ピーターパン』(1953)に登場するジョージ・ダーリングだ。ジョージは、イギリスのロンドンに妻・メアリーとウェンディ、ジョン、マイケルの3人の子ども、そして犬のナナと暮らす会社員だ。立派な家に住み、3人の子どもを育て、正装でどこかのパーティー(たぶん会社主催)に夫婦揃って出席することから、ジョージは稼ぎの良い男だと思われる。


しかし、ジョージは高給取りであっても、家の中で特に子どもたちからはあまり尊敬されていなかった。例えば、パーティーに着ていく用の胸当てには、宝の場所が書かれた地図が書かれ(マイケルがチョークで書いた)、シャツにつけるカフスボタンは、マイケルに隠されてしまい、パーティーに行く準備が遅れてしまった。


さらにはナナと交錯し、タイヤのついたおもちゃに足を滑らせ、タンスに激突した時は、同じく壁に激突したナナの下に家族全員が寄り添ってしまうほど、家の中では飼い犬より大事にされていなかった(その結果、ナナを家の外に連れ出した)。


子どもたちのイタズラの被害を受け、さらにはペットより大事にされない父親は、ディズニー映画史の中でジョージだけだと思う。今日までのディズニー作品に登場した父親たちには「威厳がある」、「子どもにやさしい」、「心配症」の3つの要素のうち、どれか2つは必ず兼ね備えている(トリトンのように全て持っているキャラクターもいる)。


しかし、ジョージだけは先述の3要素が1つも無いように思えた。子どもたちが信じているおとぎ話を頭ごなしで否定し、乳母の役目を果たすナナを子ども部屋にいさせなくても全く心配する素振りを見せなかった。そういったところが、ジョージの父親としての威厳を無くす要因になっていると思う。これでは、ナナ以下の扱いを受けても仕方がないな。


そんなペット以下の頑固おやじジョージだが、話の終盤で意外な顔を見せた。パーティーから帰り、ネバーランドから帰ったウェンディを見つけると、出かけ際に怒って1人部屋に移すと言ったことを撤回。さらにはピーターたちが乗った船の形をした雲を見ると、自身も過去に見たことがあると話してウェンディに寄り添うなど、ジョージは、物語終盤で本当は子ども思いの優しい父親だということが判明したのだ。


子どもにイタズラされ、ペット以下の扱いを受けて怒鳴り散らしても、父親はなんやかんやで子どもには優しいものだ。しかし、あそこまでぞんざいな扱われ方をし、さらにそれが面白く見えた父親のディズニーキャラクターは、後にも先にもジョージ・ダーリングただ1人であった。


山寺宏一爆誕祭② 本当にすごい、やまちゃんのディズニー映画

2022-06-18 08:01:00 | 声優
昨日(6月17日)、61回目の誕生日を迎えた大人気声優の山寺宏一さん。それに関連して、昨日の『ディズニー小噺』では、やまちゃんがディズニー映画で吹き替えを務めたキャラクターを紹介。今日はその中から、やまちゃんの声優力が最も発揮されていたキャラクターを発表する(あくまで個人の感想です)。


そのキャラクターとは、『美女と野獣』(1991)のビーストだ。意外なチョイスかもしれないが、ビーストは高い演技力がなければ、アフレコを務めるのが難しいキャラクターだ。


<ビースト>

ビーストの声は、野獣時と人間時の2種類に分けられる。さらに野獣時は、ベルを助ける前と後で声が変わっているため、実質ビーストの声は3種類に分けられるのだ。1つのキャラクターの1つの声を演じるだけでも難しいが、3つの声となると、高度な演技力が必要になる。


ではビーストの3つの声は、どのように違うのか。最初は、野獣の姿でベルを助ける前の声について説明。ベルを助ける前のビーストは、元来の傲慢な性格に加え、野獣に変えられたことで暗く、怒りやすくなった。そのため、ビーストの声は低く野太いものとなり、口調は高圧的で常に怒っている感じだった。


続いては、野獣の姿でベルを助けた後の声。野獣はベルを助けた後、彼女に心を許し、ベルと一緒に城の中で過ごすことになった。そうしていくうちに野獣は、人間らしい感情と優しさを取り戻していき、さらにベルに心を通わすようになり、人を愛することの大切さを知っていった。その時のビーストの声は、野獣であるため低く野太いものだが、若干高くなっている。また、口調は温厚な性格へと変わったこともあり、柔らかいものになっていた。


そして最後は、人間時の声。ビーストが人間になって声を出す時間は約1分ほどだが、それでもしっかりと聞くことが出来る。人間になったビーストは野獣時と比べ、高く透き通った声となっており、口調はベルを助けた後の時と同じく柔らかいもので、さらに人間に戻れたことへの喜びからか生き生きとした感じになっていた。


ここまでビーストの3種類の声を説明してきたが、野獣時と人間時ならまだ変えやすいと思うが(それでも素人じゃ出来ないと思う)、野獣時の声の変化は至難の業だ。声の高さを若干変えて、高圧的な口調から物腰やわらかなものへと変え、それによってビーストの心情の変化を表すのは、ベテラン声優だけでなければ難しいことだ。


しかしやまちゃんは、声優デビューから6年という早さで、ベテラン声優が成しえることを出来たのだ。ビーストは、やまちゃんが高いポテンシャルを持つ声優であることを証明させたキャラクターだった。


『美女と野獣』の吹き替えで演技力の高さを見せたやまちゃんだが、翌年公開の『アラジン』(1992)で、陽気でおしゃべりなランプの精霊・ジーニーを演じたことにより、「山寺宏一=おしゃべりで陽気なキャラクターの声優」というイメージが付いたと思われる。


その後のディズニー作品でも、『ムーラン』(1998)のムーシューや『トレジャー・プラネット』(2002)のベンといった陽気でおしゃべりなキャラクターを多く演じたのだ。そういったキャラクターが出来たのは、東北学院大学で落語研究会に所属していたことが関わっていると思う。落語をのしゃべり方を通じてマシンガントークを身につけたのではないだろうか。


また、落語は1人で何役もこなすため、その経験がビーストの声の変化に繋がったのかもしれない。いずれにせよ、『美女と野獣』のビーストは、やまちゃんが本当に上手い声優であることを知れるキャラクターであった。


山寺宏一爆誕祭① やまちゃんのディズニー作品

2022-06-17 07:46:00 | 声優
1961年6月17日。この日、宮城県塩竃市である男の子が生を授かった。


その子の名は、山寺宏一。そう、後に「七色の声を持つ男」と呼ばれ、声優やタレントとして大活躍をするあのやまちゃんだ。そして本日は、大人気声優・山寺宏一の61回目の誕生日だ。


正直言うと、全然61歳に見えない。口周りのほうれい線は出てきているが、それでも見た目は、1997年に放送開始された『おはスタ』の頃とほとんど変わってない。四半世紀経っても見た目が変わらないのは、きっとやまちゃんの体内には、他の人より老化を防ぐ細胞が多くいるのかもしれない。だから、32歳下の女性タレントと3回目の結婚ができた…じゃなくて、今日まで精力的に活躍できたのか。


現在、多方面で活躍するやまちゃんだが、メインの仕事は声優業だ。今まで数多くの作品をアフレコをしてきたが、その中でも山ちゃんは、日本で一番ディズニー作品のキャラクターを演じた声優だ。ディズニー作品は、熊倉一雄さん、大塚周夫さん、すずきまゆみさんなど、常連声優が多くいるが、やまちゃんはその人たちの中でも群を抜いて、演じるキャラクターが多かった。


やまちゃんは、今まで以下のキャラクターたちを演じてきた(ディズニー・ピクサー作品に限定)。


・ジーニー(『アラジン』シリーズ)


・バート(『メリー・ポピンズ』)


・ロジャー・ラビット(『ロジャー・ラビット』シリーズ)


・スティッチ(『リロ&スティッチ』シリーズ)


・ドナルド・ダック(短編集、『クワック・テイル』等)


・野獣(『美女と野獣』シリーズ)


・ラルフ(『シュガー・ラッシュ』シリーズ)


・サンダーボルト(『101匹わんちゃんII パッチのはじめての冒険』)


・ジャック(『シンデレラ』シリーズ)


・セバスチャン(『リトル・マーメイドⅡ』、『~Ⅲ』)


・ベン(『トレジャー・プラネット』)


・ムーシュー(『ムーラン』シリーズ)



紹介してみると、やまちゃんは数多くのディズニーキャラクターを演じてきた。一方、ピクサー作品には、一切出演していないことも分かる。その背景は、あくまで推測だが『トイ・ストーリー』事件が関わっていると思うが、それは後日紹介する。


ジーニーやムーシューのマシンガントーク、ドナルドやスティッチの独特の声など、「七色の声を持つ男」のやまちゃんだからこそ、これだけ多くのキャラクターを演じれたのだと思う。その中で、「やまちゃんは本当にすごい声優さんだ」と教えてくれるキャラクターがいるのだ。果たして、それは誰なのだろうか?


<「山寺宏一爆誕祭②」に続く>


ディズニー・ボールパーク① 1994年の『ライオンズ・キング』

2022-06-16 07:52:00 | 野球
1994年は獅子年だ。


「いや、何言ってんの戌年だから」とか「獅子は干支にいないけど」、とツッコミたくなるところだが、1994年(平成6年)の日本では獅子にまつわる2つの大きな出来事があった。


1つ目は、大人気ディズニー映画『ライオンキング』(1994)が公開されたことだ。1994年7月23日(土)に日本で公開され(アメリカは同年6月24日公開)、世界興行収入は約9億8千万ドル(日本円で約1兆円(当時のレート))、日本の配給収入は約19億6千万円という大ヒットを果たした。そして1994年のアカデミー賞では2冠(作曲賞、主題歌賞)、ゴールデングローブ賞では3冠(作品賞、音楽賞、歌曲賞)を果たすなど『ライオンキング』は、1994年に最も大ヒットしたアニメーション映画となった。


2つ目の獅子にまつわる出来事は、プロ野球の西武ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)が5年連続のリーグ優勝を果たしたことだ。前年に日本一を逃した西武は、日本一を奪還しようと1994年のシーズンに挑んだが、前半戦はケガ人が続出、さらに投手陣が不調になるなど苦しい戦いが続いていた。しかし、後半戦に入ると投手陣が復調し、優勝争いの佳境を迎えた9月に11連勝を果たし、見事に5年連続の優勝を成し遂げた。


『ライオンキング』に西武ライオンズ。片やアニメーション映画で、片やプロ野球チームという全然違う者同士だが、たまたまそれらの名前には「ライオン」という文字が入っており、さらに1994年に両者は、それぞれの世界で大活躍を果たすという奇跡を起こした。


奇跡を起こすミラクルレオたち。しかし、彼らの奇跡は他にもあった。それは、両者ともに日本一になれなかったことだ。


『ライオンキング』は、1994年のアニメーション映画で世界興行収入1位を獲得したが、日本では海外ほどヒットはしなかった。なぜなら、同作の公開1週間前にジブリスタジオが製作した『平成狸合戦ぽんぽこ』が公開されたからだ。『~ぽんぽこ』の国内配給収入は約26.5億円と、『ライオンキング』より多かった。そして『~ぽんぽこ』は、1994年の邦画ナンバーワンヒットという快挙を成し遂げた(当時のマスコミは、「タヌキ対ライオン」と報じていた)。


一方西武ライオンズは、日本シリーズでセ・リーグ王者の巨人を相手に2勝しかできず、2年連続で日本一を逃した。それに伴い、チームを長年指揮し、ライオンズの黄金時代を築いた森祇晶監督は勇退(在任中は優勝8回、日本一6回)。さらにオフには、チームリーダーを務めたベテランの石毛宏典選手、エース投手の工藤公康選手が揃って、福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)に移籍するなど、西武の黄金時代はついに終わりを迎えた。


残念ながら日本では頂点を取れなかった2頭のレオたち。しかし、この両者はその後も不思議な運命を共に辿るのだ。1994年から4年後の1998年、日本の劇団四季が『ライオンキング』のミュージカルを上演を開始、そして大ヒットとなった。同じく1998年、西武ライオンズは2年連続でリーグ優勝を果たし、新たな黄金時代を迎えようとしていた。


これは何かの偶然か、それとも起こるべくしておこったことなのか。『ライオンキング』と西武ライオンズの間には、不思議な絆が結ばれ、2頭は奇跡を起こすミラクルレオだった。