奉行所の奥に鬼はいた。
武藤:「ピンク影。必ず来ると思っていたぞ」
ピンク影:「おい、さよを返してもらおうか」
武藤:「そんなにあの娘を助けたいか」
武藤:「悪を滅ぼすためならば、鬼にあいては鬼を斬り、仏にあいては仏を斬る」
ピンク影:「さよを助けたいということもあるが、俺はお前のその腐った正義に幻滅したんだよ。
子供を一人さらうのに、わざわざ、私がいないときに仕掛けてくるとはな」
武藤:「所詮、貴様とはわかりあえん宿命なのだ」
ピンク影:「御託はいい。はじめようぜ」
武藤:「いくぞ」
武藤:「おらぁ!!」
ピンク影:「あまいわ!」
武藤:「馬鹿な!この間とは動きが違う!!」
ピンク影:「当たり前だ。これが忍者の」
ピンク影:「本気だ!」
武藤:「ぐはぁ!」
武藤:「なぜだ。いったい、あの娘のなにがお前にそのような力を与えるのだ」
ピンク影:「いや、なに言ってんの?これが俺の実力だよ?」
武藤:「いや、娘のためとかそういうことにしておいてくれよ。
もうちょっとドラマチックな展開を考えろよ。」
ピンク影:「ま、お前と俺の正義の差ってところだな」
武藤:「なにっ!?」
ピンク影:「お前達は自分達の正義を他人に押し付けようとする。
国を守るという自分達の正義のために、あの娘に死を押し付けたのだ」
武藤:「お前の正義とは……なんだ……?」
ピンク影:「正義とは押し付けるものではない。自らが貫くものだ。
俺はさよを守るという正義を貫いている。
国を守る、民を守るというお前らの正義が理解できないわけではない。
あの娘にお前達の正義を押し付けるような真似をしなければ、
私はなにもしなかったさ」
武藤:「がくっ……」
ピンク影:「ごちそうさまでした。いや、違う。安らかに眠れ」
武藤:(最後までしまらないやつ……)
牢獄の奥に、さよはいた。
ピンク影:「さよ。待たせたな」
さよ:「!?」
ピンク影:「さぁ、帰るぞ」
ピンク影:「さて、天風に戻ったら飯食って、字の勉強でもするか」
さよは嬉しそうに頷いた。
奉行:「野良犬風情が後先も考えずに噛み付いてきおったか」
ピンク影:「?」
奉行:「この娘を助けてどうする?」
奉行:「素魔が広がれば、この国に間違いなく災いを振りまく。
貴様がこの娘を守り続けるというのか?
この娘が生きている限り、その危険がなくなることはない。
人間は歳をとる。貴様は老体となっても、この娘を守り続ける覚悟があるというのか?
貴様のやったことは自己満足にすぎん」
ピンク影:「いや、そんなこと考えてないけど?」
奉行:「はぁ!?」
ピンク影:「お前らはこの娘が抱えている素魔という悪魔が広がらないために、
この娘を殺そうとしているが、俺は違う。別の道をいく」
奉行:「別の道?」
ピンク影:「この娘が自分の抱えている秘密に押しつぶされない。
素魔を目覚めさせることのない優しい娘に育ててみせる。。
そして、お前は私がこの娘を守り続けることが出来るかと言ったな?
私はこの娘を守るつもりはない。
私に守られなくても生きてける、強い娘に育ててみせる」
奉行:「なるほど……貴様ならそれができるかもしれんな」
奉行:「だが、私はそのような博打を打つわけにはいかん。
追撃の手は緩めぬぞ?」
ピンク影:「上等だ」
そういうと奉行は去っていった。
次回、最終話。