侍道2P ~その16~

2013年06月08日 | 侍道2P


奉行所の奥に鬼はいた。



武藤:「ピンク影。必ず来ると思っていたぞ」

ピンク影:「おい、さよを返してもらおうか」



武藤:「そんなにあの娘を助けたいか」



武藤:「悪を滅ぼすためならば、鬼にあいては鬼を斬り、仏にあいては仏を斬る」

ピンク影:「さよを助けたいということもあるが、俺はお前のその腐った正義に幻滅したんだよ。
      子供を一人さらうのに、わざわざ、私がいないときに仕掛けてくるとはな」



武藤:「所詮、貴様とはわかりあえん宿命なのだ」

ピンク影:「御託はいい。はじめようぜ」



武藤:「いくぞ」



武藤:「おらぁ!!」



ピンク影:「あまいわ!」

武藤:「馬鹿な!この間とは動きが違う!!」

ピンク影:「当たり前だ。これが忍者の」



ピンク影:「本気だ!」

武藤:「ぐはぁ!」





武藤:「なぜだ。いったい、あの娘のなにがお前にそのような力を与えるのだ」

ピンク影:「いや、なに言ってんの?これが俺の実力だよ?」

武藤:「いや、娘のためとかそういうことにしておいてくれよ。
    もうちょっとドラマチックな展開を考えろよ。」

ピンク影:「ま、お前と俺の正義の差ってところだな」



武藤:「なにっ!?」

ピンク影:「お前達は自分達の正義を他人に押し付けようとする。
      国を守るという自分達の正義のために、あの娘に死を押し付けたのだ」

武藤:「お前の正義とは……なんだ……?」

ピンク影:「正義とは押し付けるものではない。自らが貫くものだ。
      俺はさよを守るという正義を貫いている。
      国を守る、民を守るというお前らの正義が理解できないわけではない。
      あの娘にお前達の正義を押し付けるような真似をしなければ、
      私はなにもしなかったさ」



武藤:「がくっ……」



ピンク影:「ごちそうさまでした。いや、違う。安らかに眠れ」

武藤:(最後までしまらないやつ……)



牢獄の奥に、さよはいた。



ピンク影:「さよ。待たせたな」

さよ:「!?」



ピンク影:「さぁ、帰るぞ」



ピンク影:「さて、天風に戻ったら飯食って、字の勉強でもするか」

さよは嬉しそうに頷いた。



奉行:「野良犬風情が後先も考えずに噛み付いてきおったか」

ピンク影:「?」



奉行:「この娘を助けてどうする?」



奉行:「素魔が広がれば、この国に間違いなく災いを振りまく。
    貴様がこの娘を守り続けるというのか?
    この娘が生きている限り、その危険がなくなることはない。
    人間は歳をとる。貴様は老体となっても、この娘を守り続ける覚悟があるというのか?
    貴様のやったことは自己満足にすぎん」



ピンク影:「いや、そんなこと考えてないけど?」

奉行:「はぁ!?」

ピンク影:「お前らはこの娘が抱えている素魔という悪魔が広がらないために、
      この娘を殺そうとしているが、俺は違う。別の道をいく」

奉行:「別の道?」

ピンク影:「この娘が自分の抱えている秘密に押しつぶされない。
      素魔を目覚めさせることのない優しい娘に育ててみせる。。
      そして、お前は私がこの娘を守り続けることが出来るかと言ったな?
      私はこの娘を守るつもりはない。
      私に守られなくても生きてける、強い娘に育ててみせる」



奉行:「なるほど……貴様ならそれができるかもしれんな」



奉行:「だが、私はそのような博打を打つわけにはいかん。
    追撃の手は緩めぬぞ?」

ピンク影:「上等だ」



そういうと奉行は去っていった。



次回、最終話。
コメント
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