私はその頃はヨーガ教室二箇所、ダンススタジオを経営していたが
スタッフは沢山いたので比較的自由に動ける。そのため、どうしてももう
一度地方の環境の違う場で、断食による精神的な修行をしたいと思った。
それから色々調べ、日本で只一つ公共の断食道場が淡路島にある事を
知った。案内書を取り寄せて、スタッフと相談しスケジュール調整し
翌年の春もう一度淡路島の「五色断食道場」へ行った。
淡路島の「五色断食道場」は、町から離れた小高い山の上にあり、想像
以上に広大な敷地に、図書室、手芸室、体操室、大浴場などもあった。
入所する前に検査を受けて、いよいよ12日間断食コースに入った。
そこは自動で出るお茶や水が好みで選ぶが、お水よりお茶の方が腹持ち
がよさそうな気がして、毎回お茶を飲んだ。
予備断食から始まり、確か4日目位で完全断食に入った。
絶食状態でもウイスキー用小さなグラスで、生ジュースが1杯だけは
飲めるが、それはとても美味しかった。その次の日のお昼頃、お腹は空い
ていないのに、私はまた具合が悪くなった。すると先生がすぐいらして私の
脈をとり、血圧を測ったら何と上の血圧が60しかなかったそうだ。
看護師さんが牛乳とカルケツト二枚を持って来て「今すぐに食べて下さい」と渡された。早速食べたら途端に元気になり、食べることはすぐにエネルギーになり凄い事なのだと実感した。
2回目もまたドクターストップになり、しょげ返る私に先生は「あなたは
至って健康体だから断食(ほとんどの人が病気の治療のため)をする必要
はないから、体がマイナスの反応をしたのでしょう。明日から復食
(元の食事に戻るために食事)になりますが、気にしないようにね」と
慰めて下さった。復食3日目になると、マイクロバスで街まで連れて行って
くれる。大勢の仲間とワイワイ言いながら、街での散歩は楽しく、道場には
内緒だがみんなはお店に入りうどんや、お団子を食べたりするので、私は
本当にビックリした。
また山でわらび取りをしたのは生まれて初めてで、とても楽しかった。
残念ながら完全断食は2度ともたった1日だけだったが、私の体が受け付け
ないので「自然環境の中で良い体験ができただけでも良かった」と諦めた。
帰る日はマイクロバスで街まで送ってくれるが、皆さんが手を振って
見送ってくれた。達成できなかった断食体験は、私の人生にとって忘れ
られない懐かしい思い出になった。