重低音のBlue Canary

♪ 思いつくままを、つたない文と photo で …

競演。

2007-03-19 | つれずれ
いま、街のそこかしこで、
2つの花が、
その白さを競い合っています。

1つは――



「ハクモクレン」。

そして、
他の1つは――



「コブシ」です。


ともに、純白の花。
近寄らなければ、
なかなか区別がつきません。

というより、
「ハクモクレン」と「コブシ」とではどこがどう違うのか、
私は比較的最近まで、見分け方を知りませんでした。


満開でも、
花が開き切らないカップ状で、上を向いてボテッとした感じで咲くのが



「ハクモクレン」。


他方、
「ハクモクレン」に比べると1枚1枚の花弁が細身で、かつ、開き切って咲くのが



「コブシ」だそうです。


咲き方の違いもさることながら、
一番の特徴は、花の基部に必ず1枚の若葉が付いているのが「コブシ」だと、
ネットで調べて知りました。
なるほど。


とりわけ「コブシ」の花を見ると、
千昌夫の歌「北国の春」を思い出し、
つい口ずさんでしまう世代です。


白樺 青空 南風
コブシ咲く あの丘 北国の
北国の春 ……

そして、最終節は
♪ あの故郷へ 帰ろかな 帰ろかな~

………。
帰るべき故郷があろうとなかろうと、
望郷の思いがこみ上げてきます。

それはたぶん、
誰しもが胸の中に抱いている「心の故郷」を、
思い浮かべるからなんでしょうね。



壇ノ浦の戦いで敗れ、熊本の山奥に逃れた平家の落ち武者たちが、
ある朝目覚めると、
周囲の山々が源氏の白旗で埋め尽くされているのを見て驚き、
「もはやこれまで」と覚悟して全員が自刃しました。

しかし――。

その「白旗」は実は、
その朝、山肌に一斉に咲き始めた「コブシ」の花だった――という話があるそうです。


あるいは、
森鴎外「山椒大夫」では、
一緒に奴隷として買われた弟・厨子王を逃すために、
自分は拷問を受けて亡くなった安寿の化身が「コブシ」の花になったのだ、とも……。


そんな話を知ると、
「コブシ」の花の白さが、



余計に
目に沁みます。



そんな昔から、
純白のまま咲き続けている「コブシ」や「ハクモクレン」の花。

その、あまりにも汚れのない白さを見て「眩しい」とさえ思ってしまうのは、
もしかすると、
私たち自身が、
大事な「何か」を汚し、
純粋さを失いかけているから、なのかも知れませんね。



♪ あの故郷へ 帰ろかな 帰ろかな~ 

心の中で、
リフレインが、
止まりません。



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