歌会たかまがはら

毎回お題に沿った短歌を募集してゲストの方とおしゃべりする短歌の番組です。
YouTubeで配信しています。

歌会たかまがはら2019年7月号 乾遥香さんへの質問

2019年08月04日 | その他・連絡事項
ここでは、2019年7月15日配信の歌会たかまがはら2019年7月号で皆様からいただきました乾遥香さんへの質問をご紹介いたします。

回答につきましては乾遥香さんからいただいたものをそのまま掲載させていただきます。

なお、ご不満等は一切受け付けません。あらかじめ、ご了承ください。

**********************************************************************************
<番組中にお聞きした質問>
Q1 良い歌は好きですか?「良い歌だから好き」ということはありますか?(東京都 雪吉千春さん)

A1 良い歌は好きです。良い歌だから好きということはありません。好きだから良い歌だなと思うこともありません。好きな歌で、かつ良い歌だなと思うことならあります。
「良い歌!」っていう感情は、理屈ではないですよね。ぱっと見たときに思ってしまう「かわいい!」や、なにが入ってるんだかよくわからない食べ物への「おいしい!」とかと似ているような。私は紫やチョコレートが好きですが、紫色だからかわいいとか、チョコレートが入ってるからおいしい、みたいな判断ってしなくないですか?良い歌かどうかには理屈も理論もなく、私の心が「良い歌」だと思えばそれが良い歌で、それ以上もそれ以下もないです。


Q2 短歌以外で「良い」と思うものを教えてください(大阪府 泳二さん)

A2 チョコレートや化粧品やアクセサリーなどの造形のうつくしさ。好きなひとの仕草や手書きの文字や喋り方の癖。制御しきれない感情。生きているということ。
自然のものよりも、作り手や持ち主の存在を感じるような、人工的なものに惹かれます。


<短歌についての質問>
Q1 とても抽象的な質問で申し訳ないのですが、いぬいさんは短歌を容れ物と捉えていますか?それともそこに入る中身だと捉えていますか?(宮城県 岩瀬花恵さん)

A1 この「短歌」は定型ではなく、短歌一首一首を指すとのことなので、そうすると……容れ物ですかね。中身って、容れ物から取り出して中身を確認したときに、それ以上のことが起こらないような気がするけど、短歌は、その一首を前にしたときにその一首に収められている以上の景色が見えることがあるし、その歌と関係のある(あるいは関係のない)思考や想像を連れてきてしまうと思うんですよ。そういう意味で、容れ物かなぁ。いろんな形や大きさや柄の容れ物になにかを仕舞い込んで部屋に積み重ねて、そのまま忘れてしまったり、なんとなく開けて急に全部思い出したり、みたいなことが「短歌にする」という行為なのではないでしょうか。


Q2 大学短歌バトル優勝おめでとうございます。提出歌はどのような方法で決めたんでしょうか。(雨月茄子春さん)

A2 優勝おめでとうございますをありがとうございます。提出歌は、まず仮の〆切を作ってそれぞれが各題に挑んでみて、途中経過のときに出た歌の中で良い歌があったら、そのお題はもうその人の歌!って決めて、余ってる題を割り振り直してほんとの〆切までに作り直す、みたいな感じで進めました。
最終的にどの歌を出すかは、作者本人も含めて選歌した上で、念人(評者)をする人の意思がなるべく尊重されるように決めました。念人の存在が短歌バトルという形式の最も良い部分であり、褒めたくない歌を褒めちぎって勝っても意味がないと思ったので。


Q3 乾さんの思う「いい歌」の基準を教えてください。(愛知県 岡田奈紀佐さん)

A3 『乾さんの思う「いい歌」の基準』なら、『乾が読んで「いい歌」と思ったかどうか。以上』ということになってしまうような……。チェックリストとかを用意してあるわけではないので、とくに明確な基準はありません。
(※うずめ追記:Q4につづく)


Q4 どんな歌がいい歌だと思いましたか?わたしは、読んで元気が出るとか、ふっと気持ちが和らぐ歌かな、と考えて投稿しました。(兵庫県 ふらみらりさん)

A4 もうすこし一般化するなら、みんなきっと短歌によって世界を認識できている面が少なからずあるので、ふつうに生きていてふっと思い出す歌は、良い歌なんじゃないでしょうか。なぜか思い出してしまう歌も含めて。(今/今後)(あなたが/わたし自身が)使えるから良い歌だなと思うことがあります。ひとつ言えるのは、あなたが良い歌だと思えば、それはあなたにとっての「良い歌」で間違いないですよ、ということです。


Q5 乾さん自身がこれだとおもう自作はどういったものですか?(三重県 はだしさん)

A5 ごもっともすぎる質問だけどこれを訊かれるのはめちゃめちゃこわいですね……。
わたしは、自分で良い歌だと思えないなら発表するべきではないと考えているので、そういう意味では「全部」って答えることもできるとは思いますが……今見ると、短歌はじめたばかりの「ぬばたま」創刊号や第二号の頃の歌はちょっとあやしいのもありますね。まとめて読めるものなら、第三号の「Iris」30首と、谷じゃこさんの「バッテラ」のゲストをさせてもらったときの「何階で降りるの?」7首は全部良い歌です。わたしはどんどん間違えなくなってきているので、これからもっと良くなると思います。


Q6 好きな歌集を教えてください(複数でも)(大阪府 雨虎俊寛さん)

A6 うーん。好んで読む歌集なら何冊もありますが、気分によって変動もするので明言したことがないんですよね……。歌集(という発表形式)としてこの形が最善だったと思えることってなかなかなくないですか? リアルタイムで連作単位で追いかけるほうがつらくないから同人誌が好きだし、本にすらなっていない紙とか画像とかも好きです。
先のことなら、(7月)23日に短歌研究社から刊行される山階基『風にあたる』に期待しています。


Q7 質問とは違うかもしれませんが、題詠のものを題詠から離れた場所で詠むことの意義というと大げさですが、どんな感じになるのかなと興味があります。(抹茶金魚さん)

A7 申し訳ないんですが、質問の意図が捉えきれず……。関係なく読んだ歌に、題詠の文字が含まれているから出詠する、というような話ですか?それとも、題詠の題から意識を外して、意図的に関係のないことを詠む、ということでしょうか?でも題詠って題字詠み込み必須だろうから、完全に離れたところから題詠をクリアするのってむずかしくないですか? 個人的に題詠はあんまり好きじゃなくて、題詠しなきゃいけないときはなるべく題のことを忘れるようにがんばっています。うーん。回答が不十分だと思うので、もしこれ以上聞きたければご連絡ください。


Q8 乾さんが最初に出会った良い歌はなんですか?(東京都 越 慶次郎さん)

A8 基本的に今月のことだけを考えて生きているので、「最初に」なんて言われると遠い目をしてしまうけれど……短歌をはじめる前のことを思い出すと、たぶん短歌バトル2016の
春を抱く どこに行っても君の踏む土は土だよだいじょうぶだよ/初谷むい
なんじゃないですかねぇ。そのときのわたしに「好き」と「良い」の区別はなかったので、これで回答になっているかは不明ですが……。


<その他の質問>
Q1 「本当」って、なんだと思っていますか?(青森県 カリフォルニア檸檬さん)

A1 「本当」は、嘘じゃないこと。これは最近の予感だけれど、嘘じゃないっていうのは、信じられるかどうかってことと同じなような気がしています。あなたが「死なないよ」ってわたしに言ったとして、あなたが本気で言っててわたしもそれを信じるんなら、「死なないよ」は「本当」。


Q2 「人間」って、なんだと思っていますか?(青森県 カリフォルニア檸檬さん)

A2 「人間」は、よくわからない。
定義の話なら、「人間はいつか死ぬらしい」ということだけは知ってるんだけど、でもそれって死ぬそのときまでわからないから、現状あなたが人間かどうかを判断する術はない。しいて言うなら、本人が自分は人間だと主張しているならその人は人間なのでは?全く定型でない歌でも、短歌連作のなかに置かれていて作者が短歌だと言っているならそれは短歌、と同じような話で。
性質の話なら、それこそよくわからない。いろんな人間がいるなぁとは思うけど。みんななに考えてるのかわからないし知らないし。わたしに確かにわかるのは、わたしがあなたのことをどう思っているか、っていう、それだけですよ。


Q3 「主張」って、なんだと思っていますか?(青森県 カリフォルニア檸檬さん)

A3 「主張」は、自分による自分のための自分に対して取るポーズ。セルフブランディングにかなり近い。あなたのことは、たぶん二の次。ここで黙ったらわたしじゃないなって思うときに主張をする。主張をすると(その主張が通るか通らないかとは関係なく)あなたがわたしのことを少しだけわかる。それを繰り返していって、あなたがわたしを理解していればいるほど、わたしは生きやすくなる。ここでお題「良い歌」と主張したことで、あなたはわたしのある一面を認識でき(ているつもりになっ)たでしょう?


Q4 「五感」の意識について、何かありますか?(青森県 カリフォルニア檸檬さん)

A4 「五感」の意識は、あると便利だろうなと思う。短歌を作る上でも、たぶん。わたしは視覚と聴覚から得た情報を記憶することにステータスを全振りしてしまっている気がするので、今後は五感をつかった生活もそれなりにやっていきたいなとは思っています。


Q5 「不満」はありますか?(青森県 カリフォルニア檸檬さん)

A5 「不満」は、いっぱいある。それをなくすためにするのが「主張」だとも思っているからわたしはたくさん喋ってるつもりだし、年度目標のうちのひとつを「発信する」に定めたのも、不満があるからですね。権力が心底欲しくて、なるべくはやく国王になりたい。


Q6 街などで、これは良いと思われたネクタイの色や柄はありますでしょうか?(近日購入予定)(東京 上條 素山さん)

A6 人生でネクタイに注目した回数がそれほどなくて今はひとつしか思い出せないんですけど、斜めの線で、明度のちがう紫のグラデーションみたいになっている柄のネクタイが好きでした。自分の言語力の限界を感じているので、気が向いたら写真をツイートしますね……。


**********************************************************************************

以上となります。皆様からのたくさんのご質問ありがとうございました。

コメントを投稿