歌会たかまがはら

毎回お題に沿った短歌を募集してゲストの方とおしゃべりする短歌の番組です。
YouTubeで配信しています。

歌会たかまがはら2019年9月号 温さんへの質問

2019年09月29日 | その他・連絡事項
ここでは、2019年9月14日配信の歌会たかまがはら2019年9月号で皆様からいただきました温さんへの質問をご紹介いたします。

回答につきましては温さんからいただいたものをそのまま掲載させていただきます。

なお、ご不満等は一切受け付けません。あらかじめ、ご了承ください。

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<番組中にお聞きした質問>
Q1 好きな音楽は何ですか?(鹿児島県 西淳子さん)

A1 "ジャンルとしてはヒップホップが一番好きです。もうかれこれ15年くらい聞いています。好きなアーティストは(ほんとうに沢山いるのですが)まず唾奇やjinmenusagi、鈴木真海子、野崎りこん、あたりがパッと思い浮かびます。ここ最近はDos Monosとか、すこし系統が違うけどクボタカイ、Tok10あたりの若手も激熱ですね。飛びぬけて日本語のラップがうまいなと思うのはMummy-DとACE COOL、Kenny Doesの三人。もちろんバトルも大好きです。U-mallowのバトルがかなり好き。最近、ヒップホップにおける方法論から照らしてみて、短歌ってまさに音楽だなぁ、と思ったことが「これは音楽だ!と思う短歌」というテーマを設定した理由でした。
とはいえいろんなジャンルを聞きます。ここ一年くらい、一番好きな歌手はカネコアヤノです。解散してしまいましたが、andymoriというバンドも同じくらい好きでした。他にも好きなアーティストは沢山いるので、そういうのが好きな人は話しかけてください。"

Q2 短歌における定型ってなんだと思いますか?(東京都 乾遥香さん)

A2 "ヒップホップから短歌を照射してみると、短歌の定型(5・7・5・7・7)とはヒップホップで言うビートなのではないか? という説を唱えてみたくなります。
ラップは、ビートに対してアプローチする性質を持っています。アプローチとは、ビートのリズムパターンに対して「気持ちいいリズムで言葉の音をはめる」ということです。その解はもちろん唯一ではなく、オンで乗せる、オフで乗せる、もしくはレイバック気味に/あるいは早口で言葉を詰める……などなど、様々な手法があります。
短歌も、「5・7・5・7・7」という基礎的なリズムに対して、わざと余らせて空白を作るとか、完全に無視してオフで乗せるとか、促音によってジャンプ→着地するとか、そういうことが実際に行われています。それは、ラップのビートアプローチと同じ性質のものであるように僕には思われます。"

Q3 温さんがこれこそ音楽だ、と思う一首を教えてください(三重県 はだしさん)

A3 "ジュンク堂でおはようのキス 信じてる 水だけで生き延びる物語/初谷むい
(「おはよ、ジュンク堂でキス、キスだよ。」、『ぬばたま 創刊号』、2017年)
「水だけで生き延びる物語」がめっちゃきれいだと思います。この下句は「5・5・5」で構成されているのですが、短歌なので「7・7」の重力がはたらき、その影響で「延」を中心とする線対称のリズムが描かれることになります。まずこのリズムの組み立て方だけでもかなりいけてます(これがさっき話したビート(定型)へのアプローチということです)。
さらにこのフレーズは音階もよくて、音の並びの構造が同じなのです。そこに周期性があります。周期性には美がある(気持ちいい)、というのが音楽の基礎的な考え方だと思います。
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みずだけで いきのびる ものがたり
(正確には「ものがたり」の「た」はちょっと落ちると思うけど)
さらにさらに、頭文字である「み」→「い」→「も」の音が一音ずつ下がっていることも注目です。近い音階で言うとG(ソ)→F(ファ)→E(ミ)です。これはもうコード進行と呼びたいくらいなのですが、ちょっとそれは行き過ぎな気もするし、短歌は作曲ではないので「このように構築されている」という断言よりは「この結果気持ちよくなっている」という説明にとどめたほうが豊かかなぁと思うので、そのように主張します。「水だけで生き延びる物語」って、なんかわかんないけどいい感じじゃないですか。
初谷むいさんの歌は、これこそ音楽だ、と思う率が高いですね。"


<短歌についての質問>
Q1 古典和歌や古文に対して、音楽的という観点から思うところがございましたらお聴きしたいです。(大阪府 山本千景さん)

A1 "古典和歌や古文はわかんないです。すみません。
音楽の話に限らず、昔の歌については、時代を超えて作品が楽しめるなんてほんとかよ、という疑念を持っています。作品の価値とは時代通念による強固な支配のもとで成立するものであり、にもかかわらずその作品を鑑賞する際には、感動するのに邪魔なこの認識は無視されがちである、とわたしは考えているので、千年も前の人間が作成した和歌と現代の人間が作成した短歌とを同一の俎上にあげるような姿勢(とそれを可能にする、定型というものが持つ均質化のはたらき)については警戒心があります。
もちろん、その壁を取り払うために真摯に研究を重ね、現代側から価値を与えるのではなくて作品の実際の価値を受け取りに行くような研究者の姿勢には、大きなリスペクトを送りたいです。"


<音楽についての質問>
Q1 音楽の良いところを教えてください(東京都 乾遥香さん)

A1 美しくて気持ちいいことです。


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以上となります。皆様からのたくさんのご質問ありがとうございました。

歌会たかまがはら2019年9月号採用歌(2019年9月14日配信分)

2019年09月29日 | 歌会採用短歌
9月14日に行いました歌会たかまがはら2019年9月号に短歌をご投稿いただいた皆様、また歌会の配信をご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。

ここでは、当日採用した短歌、当日発表できなかったけど気になった短歌、出演者の短歌をご紹介いたします。

なお、短歌の感想等は省かせていただきます。ご了承ください。


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お題:「これは音楽だ!と思う短歌」※自作に限る
ゲスト:温さん
司会:天野うずめ

<当日発表した歌(順不同)>
◎温さん選
・夏たちのなれあい左右で違う耳かざりしている人のウインク(青森県 カリフォルニア檸檬さん)

・野良犬をポテトサラダと名付けたりぽてさらぽてさら付いて来るから(滋賀県 涸れ井戸さん)
→天野うずめも選

・ダーツ・ダーツ・ダーツ 子守歌?ふたたびダーツ・ダーツ・ダーツ おれの十四の誕生日会(東京都 瀬口真司さん)

・でも君が未練未練と鳴るようなオルゴール捨てないとこも好き(滋賀県 西村湯呑さん)
→天野うずめも選

・台風が来て去ってった 台風が来て去ってった いぇーい、連チャン(三重県 はだしさん)


◎天野うずめ選
・ひとりきり菜の花畑に寝転んだ名前にくさかんむりが欲しくて(東京都 乾遥香さん)
→温さんも選

・ひび割れたガラスフィルムをシャシャシャッとフリックしたらゆ/び\が/す\ぱ/す\ぱ/(雨月茄子春さん)

・えー明日はあすはアスワンハイダムとよく分からない君のOK(滋賀県 西村湯呑さん)
→温さんも選


<当日発表できなかったけど気になった歌>
◎温さん選
・盛りつけのセンスがなくて切るだけのサラダのなんと難しいこと(茨城県 小田たくみさん)

・万札を崩すため買うガムなれどいちばん好きな味を選びぬ(茨城県 小田たくみさん)
→天野うずめも選

・いちじくの食べ方がよくわからないわたしに五つきりのいちじく(東京都 乾遥香さん)
→天野うずめも選

・こころがこころを追い越すのを見ているお祈りを口のなかで溶かしながら(東京都 乾遥香さん)

・昼の鳩 たとえ行くなと言われればどこにも行かないのに 夜の鳩(東京都 乾遥香さん)

・そんなわけないじゃんという笑い方をし続けている長い半袖(青森県 カリフォルニア檸檬さん)

・パンの耳 これからの日々 いい気味 犬が吠えまくる意味(東京都 瀬口真司さん)

・「よよよよよよよよよよ~」で歌ってよ吹き出しがほら楽譜になるよ(南極さん)

・ゆーがためーる ずっと夕方メールって思っていたよ宮川彬良(鹿児島県 西淳子さん)

・標識のすべてがいらすとやのイラストです。そういう国です。よかったですね。(鹿児島県 西淳子さん)

・今からを今更にして走り出す後ろ向きでも私の向きだ(鹿児島県 西淳子さん)

・ポンピングブレーキポンピングブレーキはじめてきみを助手席に乗せ(滋賀県 西村湯呑さん)

・誓います、フルーツグラノーラを二度とそのまま食べないと おいしいな(三重県 はだしさん)
→天野うずめも選

・たのしいな、花鳥風月 Everybody ミカンを食べて黄色くなろっと(三重県 はだしさん)

・ぬるま湯のぽちょりぽちょりに閉じてゆく昼間は音を聞きすぎる耳(東京 深影コトハさん)

・しづみゆくしづくしづかにいづくにか咲きにほふらむ蓮のありけむ(大阪府 山本千景さん)


◎天野うずめ選
・採血の部屋の四つの砂時計生老病死カラフルな砂(滋賀県 涸れ井戸さん)

・冷蔵庫たまごケースで歌ってる色とりどりの点眼薬は(滋賀県 涸れ井戸さん)

・ねえスパンク、今日すごい素敵な人に会った話を聞かせてあげるよ(滋賀県 涸れ井戸さん)

・また君のどれみふぁぴょーな鼻歌にヒマワリつんのめって、夏だね。(滋賀県 西村湯呑さん)

・さくらさくら今降りそそいでくれないか棺に眼鏡は入れられないんだ(東京 深影コトハさん)

・詩の火? いや、死の火であつたこれまでをしのびつつよみがへる燈し火(大阪府 山本千景さん)


<出演者の短歌>
◎温さん詠歌
・じゃあまたね、グミ 眠れればとても耳あなたのようなあなたの体重

◎天野うずめ詠歌
・だからって泣くことはないぐちゃぐちゃにぐちゃぐちゃになるハンバーグ見て


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<反省会>
歌会たかまがはら2019年9月号へのご投稿及び番組の配信をご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。
まずは、配信開始時間が大幅に遅れてしまいまして、申し訳ございませんでした。
YouTubeでの配信方法が変更したため、新しい配信方法を使いました。
ですので、練習はしていたのですが、本番ではスムーズにいかず、対処しているうちに時間がかかってしまいました。
次回まで、スムーズに配信ができるよう、練習しようと思います。
さて、今回はゲストに温さんをお迎えしました。
前回のゲストの乾遥香さんが今、注目している歌人としてご出演いただきましたとおり、面白いお話をたくさんお聞きすることができました。
音楽と短歌のお話は、私が意識していなかったところですので、お聞きすることができ、大変面白かったです。
温さん、ご出演いただきありがとうございました。
それでは、次回も、歌会たかまがはらをよろしくお願いいたします。
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次回の歌会たかまがはらですが、現在調整中です。

決まり次第、こちらのブログ&Twitterで告知いたします。

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「歌会たかまがはら」twitterアカウント:@utamagahara
「歌会たかまがはら」Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCJkfNZG1lIS645KmqIR0pkg

今後とも、歌会たかまがはらをよろしくお願いします。