歌会たかまがはら

毎回お題に沿った短歌を募集してゲストの方とおしゃべりする短歌の番組です。
YouTubeで配信しています。

歌会たかまがはら2024年3月号 山階基さんへの質問

2024年04月12日 | その他・連絡事項
ここでは、2024年3月9日配信の歌会たかまがはら2024年3月号で皆様からいただきました山階基さんへの質問をご紹介いたします。

回答につきましては山階基さんからいただいたものをそのまま掲載しております。

なお、山階基さんの回答に対する質問は受け付けておりませんので、あらかじめ、ご了承ください。

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<配信内でお聞きした質問>
Q1,たとえば20〜30首程度の連作をつくるのに、どのくらい時間をかけて仕上げていらっしゃいますか?
いちから作る場合は、一首目を作り始めたところから完成まで
いくつか作り溜めてきた歌を連作にする場合は、それらを連作にしようとしたときから完成まで
としてお答えいただければ幸いです。(石川県 塩本抄さん)

A1,ごめんなさい。時間を管理しながら書くことができていない(どのくらい時間をかけたのかまったく把握できない)ので、わかっているのはしめきりにあわせて出すということだけです。なにかの合間の細切れの時間にちまちまと書くことも、まとめて時間をとれることもあります。仮に時間をはかっていても、書けないときはほんとうに書けないので、平均とかを出してもあまり意味のある感じにはならない気がします。


<短歌についての質問>
Q1,腹が立った気持ちを歌にすることはありますか?読み直したときどんな気持ちになりますか?(神奈川県 corazoncitoさん)

A1,なんと言えばいいのかちょっと難しいのですが、自分の気持ちを歌にするということはしないです。
腹が立っていたときに作った歌を読みかえして腹が立っていたことを思い出す、ということはあると思います。が、それは歌のなかみとはあまり関係がなく、そのときの周囲の環境のようなものとして思い出されます。



<その他の質問>
Q1,山階さんが中島みゆきの歌を好んで聴いておられることはよく知られているかと思いますが、中島みゆきの歌との出会いの経緯や、歌詞/詩から影響を受けたところ、受けなかったところなどが知りたいです。(東京都 髙良真実さん)

A1,最初に意識したのは、テレビなどで『プロジェクトX』の主題歌「地上の星」がよく流れていたころ、「かッぜェのォなッかァのォすゥばるゥ〜」とうたう独特の声が耳に残るなあという感じでした。
あらためて出会ったな、と思うのは五、六年経ってから、高校一年生くらいのころです。YouTubeにあった動画(著作権法にふれていたと思います)で、「ファイト!」を聴いたとき。〈あたし中卒やからね〉の女の子をはじめ、幾人もの他人の声を引き受けるかのようにうたう姿に打ちのめされて、動画を片っ端からみて、当時さかえていたTSUTAYAの店舗をいくつも回って借りられるCDアルバムをすべて借り、カラオケでもたくさん歌いました。
「中島みゆき研究所」という気合いの入った私設のファンサイトがあり、歌詞のデータベースが参照できるので、CDをTSUTAYAに返したあとはそこで歌詞を読んでいたのですが、いま思うと、ある書き手の書いたものをまとめて読むという経験のなかでもかなり徹底していたと思います。
というわけで、影響を受けていないわけがないのですが、文体、特に韻律に影響を受けていると思います。先日、知人に「『夜を着こなせたなら』のこの連作のタイトル、中島さんの***の歌詞に(リズムが)そっくりだよね」と言われてかなり動揺しました。歌詞に七音五音で構成された部分がけっこうあるというのはもちろんですが、それだけでなく無意識にかなり染み付いているものがあるんだなという……。
逆に、影響を受けなかった(というか、この感じを短歌に持ち込むのは違うなと思ってきた)のは、意味(テーマとか)の置きかたです。

Q2,湯船派ですか。シャワー派ですか。(鹿児島県 西淳子さん)

A2,お湯につかることが好きなのでシャワーだけのことはほとんどないです。プールや銭湯、かさの大きい水に入るのが好きです。温泉も好き。サウナは苦手です。絶対にととのいたくありません。冷えやすい体質なので寒い季節には足湯を用意することもあります。

Q3,自炊のコツ(東京都 かねやまさん)

A3,自炊という言葉がでてくるということは、おそらくは主として自分だけに食べさせるものを作るにあたっての話だと思うのですが、あまねくレシピのなかで1人ぶんとされる量を作りやすいものはけっこう限られているので、できあがった2〜3人ぶんの料理を一気に食べてしまわない覚悟がいります。1日に2、3回の食事をするとして、1日に2、3回しっかり台所に立つというのもなかなかしんどいので、おなじものを続けて食べる勇気を持ってください。作り置きとか常備菜までいかずとも、昼から夜とか、夜から翌朝とか、そのくらいは冷蔵庫に居残ってもらうのがよいです。
続けるコツという意味であれば、ミニマムを意識するというのがあります。ごはんを炊くだけ、パスタをゆでるだけはやるとか。豆腐の水を切るとかでもいいんですけど、「自炊をやっている」のラインをめちゃくちゃこっち寄りに引きなおしてみるのはどうでしょう。むずかしい、凝った料理をするのは娯楽と思って「自炊」とは切り分けてしまうのもいいです。そういうのはひまなときにやる。
それから、食べたいもの・作りたいものを作るといいです。スーパーで見かけた野菜とか、使ったことのない謎の部位の肉とかが気になったら、その場でぱっとレシピを検索してみてほかに必要なものを揃えてみるとか。
レシピを信じて、書いてあるとおりにすすめることも大事です。われわれは素人なので、(使い切る気がしなくて買えない材料などはあきらめるとしても)まずはレシピ通りにやって、もしどうしても違うなと思ったら、そこではじめてアレンジを試みるくらいがいいです。(これから自炊をはじめるということであれば、NHKの『きょうの料理ビギナーズ』のテキストや関連書籍はよくまとまったものが多いです。)
あと、最も大切なのが他人を無視することです。SNSなどをながめていると、いろいろな「自炊」が流れてきますが、基本的に無視してください。「あの人やこの人みたいに素敵な・立派な・よくできた・まめな自炊」を……と考えることは、ときに邪魔にしかなりません。自炊は自分だけのためのものということを忘れず、自分も作りたい、参考にしたいと思ったときだけ、レシピを調べるなどしてやってみればいいです。いよいよ長くなりましたが、これも無視していいんですよ。


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以上となります。皆様からのたくさんのご質問ありがとうございました。

歌会たかまがはら2024年3月号採用歌(2024年3月9日配信分)

2024年04月12日 | 歌会採用短歌
2024年3月9日に行いました歌会たかまがはら2004年3月号に短歌をご投稿いただいた皆様、また歌会の配信をご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。

ここでは、当日採用した短歌、当日紹介できなかったけど気になった短歌、出演者の短歌をご紹介いたします。

なお、採用歌への評については省略いたします。ご了承ください。


※投稿歌の取り扱いについて
ご投稿いただいた短歌についての取り扱いは
・配信・ブログで紹介した投稿歌→既発表
・配信・ブログで紹介しなかった投稿歌→未発表
・既発表の投稿歌→配信・ブログで紹介したかしないかにかかわらず既発表
となります。


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お題:「湯」※テーマ詠
ゲスト:山階基さん
司会:天野うずめ

<当日紹介した歌(順不同)>
◎山階基さん選
・涙が冷えることはない 煮沸した安全ピンを耳朶に刺す(沖縄県 塩見佯さん)

・いつかゆく花の都で湯あたりをするだろう調子乗りの私は(愛媛県 海老沼夕さん)

・干からびた星を一粒持っているお湯をかければたちまち瞬く(兵庫県 大池アザミさん)

・押しボタン式信号を 帰ったら湯船につかる 律儀に待った(茨城県 茂呂直人さん)


◎天野うずめ選
・明け方に電気ケトルのふたを開けわたしいつまでつらいんだろう(愛知県 岡田奈紀佐さん)

・追ひ焚きのまへの湯船はひえびえと湯とならむものしづかなりけり(東京都 髙良真実さん)

・クリーニング屋のホースからひょっとして俺のスーツの煮汁だろうか(東京都 七部和也さん)
→山階基さんも選


<当日紹介できなかったけど気になった歌>
◎山階基さん選
・ほら 簡単に永遠とか言うから 湯豆腐浮かび始めちゃった(神奈川県 暇野鈴さん)

・ぼくたちは白湯のお湯割りとか飲んで長生きしちゃうタイプなのです(鹿児島県 西淳子さん)

・ゆたんぽもたまにはえなじーどりんくをのみたかったとおもうんだよね(鹿児島県 西淳子さん)

・人間の60%(ろくじゅっぱー)は水分でなりそこないの湯たんぽみたい(鹿児島県 西淳子さん)

・午前三時、はだかで鍋を火にかける 誰もわたしに耳を貸さない(沖縄県 塩見佯さん)

・泣いたっていいんじゃないか泣いたあと焼き梅干しを白湯に落とせば(東京都 淀美 佑子さん)

・ムーミンのバスボム買ってムーミンの解放をする幸せだから(神奈川県 上牧晏奈さん)

・また誰のせいにしようか考えていた ぬるま湯ですすぐスプーン(神奈川県 上牧晏奈さん)
→天野うずめも選

・お湯に柚子浮かべてなんて日本人 時間わすれてお手玉しちゃう(茨城県 茂呂直人さん)


◎天野うずめ選
・八月の既に暑さを孕む朝ただ習慣で飲んでゆく白湯(東京都 永井駿さん)

・あの朝のあなたの顔を想ひだす 熟れたトマトを湯剥きしてゆく(沖縄県 塩見佯さん)

・後継の少なさゆえに価値上がる銭湯絵師の富士山と松(東京都 淀美 佑子さん)

・首と名のつくを柚子湯に沈めおりきみと繋がる手首以外を(石川県 塩本抄さん)

・リビングで桜の白湯は冷めてゆき客の素性を母は語らず(東京都 深影コトハさん)

・たっぷりのお湯より多い悔恨を抱えて茹でるマ・マーのパスタ(愛知県 岡田奈紀佐さん)

・なにもない僕だけれども君がいる湯気があるからお湯だとおもう(茨城県 茂呂直人さん)

・湯引きした鱧をつついて今後とか今までのこととかを話した(橘 亜季さん)

・湯の花がゆっくり開くように子の肩の重荷も溶けますように(橘 亜季さん)

・温泉を楽しむ猿の切手脇 前島密の一円添える(神奈川県 corazoncitoさん)


<出演者の短歌>
◎山階基さんの歌
・夜ふかしのあけた小さな穴がある湯に沈めれば泡吹く身体


◎天野うずめの歌
・僕に何かを求められていてこの冬はお湯が冷めていくのが早い


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<反省会>
歌会たかまがはら2024年3月号へのご投稿いただいた皆様、番組の配信をご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。
今回は山階基さんをゲストにお迎えいたしました。
ご予定がたくさんある中、ご出演いただきありがとうございました。
また、配信ではたくさんお話することができ、とても勉強になりました。
改めて、ありがとうございました。
さて、私事ではありますが、歌会たかまがはらはしばらくお休みいたします。
再開する際はお知らせいたします。
それでは、今後も歌会たかまがはらをよろしくお願いいたします。
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