記録だけ 2011年度 21
『説経節』から 「付 信太妻」
昭和44年3月10日 初版
平凡社
東洋文庫 248
「付 信太妻」 253-306
361ページ
「われはもとより、仇し野の、草葉に影を、隠す身の、人の情けの、深きゆえ、幾年月を、送りしが、以下なれば、浅間氏や、色香妙なる、花ゆえに、心を寄せて、水鏡、うつる姿を、嬰児(みどりご)に、見とがめられしは、何事ぞや。これぞ縁の尽きばなり。………」 (286)(『説経節』より引用)
(アクセントの関係で句読点が付いています。)
歌舞伎で好きな演目のひとつ『芦屋道満芦屋道満大内鑑』(あしやどうまんおおうちかがみ)
恋しくば、尋ねて来てみよ、和泉なる、信太の森の、うらみ葛の葉
(アクセントの関係で句読点が付いています。)
子を抱きかかえながら障子に書く姿のしなやかさと切なさは心に染み入る場面です。
子を抱えあやしながら、右手左手、後ろ向き、口で筆を持ち書く葛の葉。
その見事な運筆には感動致します。
一番最近では扇雀さんの演じられた『芦屋道満芦屋道満大内鑑』を見ましたが、驚くばかりの表現力で、年月のたった今も心に残っています。
「付 信太妻」では清明の祈祷による安名の死の再生も描かれ、色々な意味で興味深く感じました。
「付 信太妻」は「付」とあって、『説経節』における信太妻の全てでないのが少し残念かも知れません。
好きな演目の話を読み、有意義な時間を過ごさせていただきました。
今回も題名記録のみにて失礼致します。