乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

息子ジェフリー・ダーマーとの日々

2006-08-12 | 読書全般(古典など以外の一般書)
記録のみ   ★★★★☆

     息子ジェフリー・ダーマーとの日々



              著者 ライオル・ダーマー

              訳者 小林宏明

              1995年8月20日 初版印刷

              1995年8月31日 初版発行

             (株)早川書房

              1600円(本体1553円)


 異常連続殺人犯であるジェフリー・ダーマーを息子に持つ父親ライオネルが心痛の思いで綴られた手記。

 かなり残酷な殺しに現場での緊迫した環境と彼の置かれた一般人には理解しがたい心理状態に興味を持ち、興味深く一気に読みました。

 父親の言うように病理的ななにがしらのものが彼を支配したのかもしれませんが、彼がなくなった今となっては、解明する手段をたたれ、残念です。

 私は一読者に過ぎませんが、この場を借りまして、被害者15人のご冥福をお祈りいたします・・・




 話はそれますが小林宏明さんの訳も日本語が美しく、読み安い文章でした。

 明治大学文学部英文科卒業をされたそうです・・・
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HAZAN ★★★★★

2006-08-12 | 映画

  HAZAN  (写真は東大寺の壁面)

 

 あらすじ無し、感想のみでごめんなさ~~い。

         満足度★★★★★

         感動度★★★★☆

         話の展開★★★★☆

         芸術性★★★★☆

         全体の好み★★★★★

 

 

         2003年 日本 108分

          監督   五十嵐匠

         原案    荒川正明

         脚本    荻田芳久  五十嵐匠

         美術    池谷仙克

 

         キャスト  榎木孝明

                南果歩

                中村嘉葎雄

                康すおん

                柳ユーレイ

                益岡徹   他

 

 まず一番に思い浮かべるのは『炎の変化』。

 初めに窯に火を入れた時には炎にもてあそばれた挙句の果てが無表情な炎の朱色。

 この主意とは他人行儀で、板谷波山を陶芸家とは認めていなかった。

 二度目に火を入れると、運悪く地震、炎は前よりも赤みを増していたが、その燃え方は縦筋が強く、まるで阿修羅のような火。

 作品には少々意地のの悪い赤であった。

 三度目にしてようやく炎は作品を包み込み、いたわり、炎の中に板谷独自の形状や色彩といった芸術性を見せてくれる。

 炎の中に覗かせる作品は美しい。

 波山の『葆光釉』(ホコウユウ)』という釉薬を究めた成果でした。

 

 この映画は少し中国映画や韓国映画の影響を受けている。

 こういったところが私のこの映画を好きな由縁かもしれない。

 ただし、中国映画等でこういったテーマを扱っている場合は『赤』の使い方や『汗』、遠近法の描き方が少々違う感じがする。

 心理描写の揺れ動きに関しては、日本の風土や四季に準じて、微妙な表現をとっており、日本の映画も素晴らしい。

 

 この映画も『全体の好み★★★★★』といったように、かなり好きな映画の一つ。

 まず映画そのものを作品としてとらえ、丁寧に描こうとしている。

 初めの出だしの構図に関してはわざと少しはずされていた。

 映画が進むにつれ構図はぴたりとはまり、見ていて心地が良い。

 構図にあわせて色彩も重厚に変わっていく。

 家族の食事シーンから後の何コマかは『小出楢重』の数枚の油絵を思い浮かばせてくれる。

 それはとても懐かしい私たちの知らない、しかしふるさとのような日本の風景を思い起こさせる。

 古きよき時代のいい感じの『家族』を描気とらえた瞬間であった。

 ただしこの『家族』は時には『男社会』や『貧困』や『傲慢』をも描き出す。

 それを支えるのが『家族愛』であり『夫婦愛』『親子愛』であった。

 第三者から見てかなり苦生活に見えるが本人たちはそれをばねに支えあう。

 顔で笑って苦を乗り越えて・・・といった感じに映る。

 夫の作品は芸術なのだといった妻には抽象的で理解しがたい内容を、愛情でひたすらに信じて支える。

 体は強く、子をよく生み、子供たちにだけはひもじい思いをさせないといった良妻賢母の典型のような女。

 懐かしい今は少ない日本を垣間見たような気がした・・・

 

 後半に差し掛かると構図はまた変化する。

 手前の花や壺を左右に離してに持ってきてぼかす。

 そして中央から上の人物に焦点を絞るが、左右のぼかした物体が数コマも続くと少し間延びがする。

 それを微妙に左の壺を強調したりして変化させているが、連続は面白みにかける。惜しい・・・

 

 重厚な場面が映っているかと思うと、明るい場面にタンポポやつつじをぼかした故意ピンクといった具合に場面をカメラのシャッターのようにころころと変えるが、季節感を現したい場面とまたコントラストのきつさが多いような気がする。ロケ地の自然の美しさを意識して捨てがたかった為に、少し説明的になったのかもしれない。

 せみの声などの聴覚的刺激は心地が良い。

 季節的な表現として風鈴売りの売りに来る場面と帰り行く場面の表現は見事に美しい。

 中国映画のように斜め構図を使って表現されていましたが、日本のこのシーンの方が少し対象物が小さく表わされていた。

 邦画と中国映画の好きな私はこの映画を比較しながら楽しんで見ていた。

 

 榎木孝明さんの暗い部屋でスケッチなどする重厚さを大切にした場面は、フランスの故ジェラール・フィリップを思い起こさせてくれた。特に左横顔が『モンパルナスの灯』のジェラール・フィリップと重なって映る。

 彼のスケッチや絵付け、彫刻刀使いや子供のための菊作りは本当に手際よく、素晴らしい・・・さすが絵心のある榎木孝明さんだと感心してしまいました。

 

 南果歩さんはまっすぐで迫真の演技の心打たれる。

 柳ユーレイさんの淡々としたコマの進め方は気持ちが良い。

 

 康すおんさんの役柄は難しさが伝わってくる。

 一番初めに土をひいた花瓶の口は彼の手から離されたのですが、ほとんどわからないほどの少しいびつな口になったのが惜しい・・・

 後の作品に関しては作品の出来上がりが写されていり、美しい形だった。

 康すおんさんの土を引くシーンは理屈で考えるのではなく、目、口、手、体全体で感じ、指先で表しているようで、見入ってしまいました。

 

 妻が家族と子供のために恥をしのんで夫の失敗作の花瓶の傷の上から釉薬をぬり、住職に渡したその駄作を住職は本人に返す。

 テーブルの上におかれたその愛情そのものの壺の陰はとても美しいものでした。

 その壺に見守られて夫は右作業机で大きな壺の彫り物をする。

 そして姿の映らない妻と子供たちの幸せそうな歌声が聞こえてくる・・・

 とても満足のいく映画でした。

 

 

 http://www.idemitsu.co.jp/museum/new_tenjimain9.html

 出光美術館『HAZAN展』

http://www.cetera.co.jp/gerard/

ジェラール・フィリップオフィシャルサイト(ブック・マーク)

http://www.geocities.jp/yurikoariki/philipe

ジェラール・フィリップ(ブック・マーク)

http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/b3df4167392d50f5a900a4a9b14c96c0

 備前焼き記録

http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/14f92c72ef820fcd166e686ca30e4b18

 萩焼記録

 

 

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