■Qobuz純正デスクトップアプリで問題発生
休日の昼下がり、スペシャリティコーヒーを飲みながら、Qobuzのハイレゾストリーミングを楽しんでいた。
Qobuzは、ユーザー個人にカスタマイズしたプレイリストを毎週土曜日に配信してくれるので、My Weekly Qと呼ばれるプレイリストを聴いていた。
おそらく自分のローカルライブラリーを読み取られているのだろうが、30曲中手持ちの音源が5曲もあって、なかなかお薦め機能も優秀らしい。
が、Nora Jonesの「Come Away With Me」(192kHz/24bit)の再生が始まったところで、問題発生。
再生はされるのだが、バリバリというノイズが入ってまともに聴ける状態にならなくなった。
最初は、192kHz/24bitだからかと思い、音質設定を96kHz/24bi上限に変更したら、しばらくは大丈夫だったが、
ウェブブラウザで新しいタブを開いたり、テキストエディターを立ち上げたりするタイミングでノイズが入り出して、ノイズが収まることはない。
このノイズは、JPLAYを使っているときに散々聞いた。
おそらくDirettaとQobuz純正デスクトップアプリのリソースが競合している。
Qobuz純正デスクトップアプリだけを使っていれば問題ないのだが、音楽を聞きながらのPC作業ができない状態になっている。
■QobuzをAudirvana Studioで聴いてみる
これは困った。
ローカルライブラリーの再生については、再生アプリをJPLAYからTuneBrowserに変更することで回避できた。
ストリーミングについても再生アプリを変更すれば回避できるだろうか。
回避する方法としては、Qobuzをその中に統合した再生アプリを使用することが考えられる。
ROONの方は使ったことがないし、PCオーディオというよりはネットワークオーディオ向けだ。
残る選択肢としては、Audirvana Studioか。
JPLAYからの乗り換えを検討したときにAudirvana Originの方を試用したが、音はかなりいい。
ちょっと美音系なのと、消費電力が多いこと、さらに料金の問題から、TuneBrowserにした。
Audirvana のストリーミングサービス対応版がAudirvana Studio だ。
サブスク利用しかできないのが難点だが、Audirvana Originの試用とは別に20日間試用ができるようなので試してみた。
使い方はAudirvana Originと変わりなく、アプリケーションをインストールして、Audirvanaのアカウントでログインする。
見慣れたAudirvanaのUIが出てきた。
Audirvanaの出力先にASIOが使えるのは確認済み。
オリオスペック製のDiretta Target PCとPCとはLANで直結しているが、ASIOとして認識される。
あとは、Qobuzを聴けるようにするだけだが、設定の中の「接続」という項目を選ぶと、Audirvanaで利用できるストリーミングの一覧が出てくる。
その中からQobuzをクリックするとQobuzのログイン画面に飛ぶ。
そこでQobuzのアカウントでログインすると、Audirvana上でQobuzを使うことができる。
そうするとQobuz純正デスクトップアプリではタブで別れていたメニューが、Audirvanaの画面左に表示されるtreeメニューに出てくるので、
同じように使うえばいい。
AudirvanaにはQobuzが完全に統合されているらしいので、Audirvana上で検索をすると、ローカルファイルやインターネットラジオも含めて横断検索をする仕組みになっている。
Qobuzの音源を再生しようとすると、「再生中はAudirvanaがDACを排他利用するけどいいよね」という警告が出てくる。
このあたりは音楽再生専用ソフトらしいところが、この排他モードのおかげか、音楽再生中にブラウジングやらテキスト編集やら、
音楽を聞きながらするだろう作業をしてみたが全くノイズは発生しない。
まあ、元々Windowsシステムのオーディオとは出力系統を分離しているので問題はないのだが。
問題は、その音だが、Audirvana Originでローカル音源を再生したときの音が、ストリーミング再生でも聞くことができた。
純正デスクトップアプリでQobuzを聴いた時にはそれほど悪くないと思ったのだが、こうして比較してみるとけっこう差がある。
Audirvanaらしく基本的には美音系で、音の質感が非常に滑らか。
ローカル音源を聴いているのに極めて近い印象だが、ストリーミングの方が若干解像感に欠けるというか、音の輪郭がほんの少し甘い印象がするだろうか。
このくらいのクオリティになると、プレイリストの曲を聞き流していても、その曲がハイレゾなのかロスレスなのか聴感で区別できるレベルになっている。
すっかり気をよくして、Audirvana Studio経由でQobuzを聴く気でいたが、この数日間この環境でQobuzのオフィシャルプレイリストの曲を聴いていると、やや聞き疲れを感じるようになった。
若干付帯音というかざわざわした感じも受ける。
あとは、UI関係だと、単純にAudirvana Studioは文字が小さくて見づらい。
■QobuzをQobuzデスクトップアプリ+DDC経由で聴いてみる
そういえば、ハイレゾストリーミングなのでDiretta経由で聴くことしか考えていなかったが、通常のWindows系統で聴いていなかった。
使っているADI-2 DACにはUSB入力が1系統しかなく、当然そこにはDiretta Target PCを接続している。
これだと、Diretta Target PCを出力先にできないアプリなどの音は鳴らないので、PCのUSB端子からDDCを介して同軸デジタルまたは光デジタルに変換して、DACに接続している。
PC → (USB) → DDC(FX-D03J) → (Optical) → DAC(ADI-2 DAC)
音声の切り替えは、DACの入力を切り替えて使っている。
ここは、Audirvana経由ではなく、Direttaとの相性が悪かったQobuz純正デスクトップアプリを使って聴いてみる。
Qobuzのデスクトップアプリの出力先にしっかり「SPDIFインターフェイス(FX-D03J)」と表示されているのでこれを選択する。
FX-D03Jは劇安のDDCでありながら、Windowsの標準ドライバーで作動して、「Wasapi(Exclusive Mode)」としてしっかりと認識されている。
PCとDDC間こそ、いちおうオーディオグレードということになっているエレコム製のUSBケーブルを使っているものの、
DDCとDAC間に使っていた同軸デジタルケーブルはWiiM Proに使ってしまったので、とりあえずWiiM Pro付属の見るからに安っぽい光デジタルケーブルで接続している。
音の方は、あまり期待していなかったのだが、これが案外悪くない。
Hi-Fi感というかハイレゾ感は後退したものの、すっきりとした印象でとても聴きやすい。
Audirvanaで感じていたざわついた感じもない。
ただ、192kHz/24bitの曲を再生しているはずなのに、DAC側では48kHzと表示されている。
もしかして、と思ったら、やはりFX-D03Jは96kHz/24bitが上限だった。
それなら96kHz/24bitで出力されても良さそうなものだが、なぜか48kHzで出力されてしまっている。
試しにQubuzの96kHz/24bitの曲を再生したら、やはり同じ状態になる。
これはアプリの設定を確認する必要がある。
出力音質はDACに合わせて192kHz/24bit上限にしていたので、これをDDCの使用に合わせて、96kHz/24bit上限に変更した。
あと、デフォルトの出力先がJPLAYになっていたので、これを「SPDIFインターフェイス(FX-D03J)」に変更した。
その項目の上を見たら、排他モードの項目があり、OFFのままになっていたので、これをONにした。
Windowsの場合、サウンドが共有モードだとサンプリングレートが48kHzに設定されている場合が多いから、アプリの設定で排他モードにしないと、48kHz/24bit超のハイレゾがそもそも出力されない。
Qobuz純正アプリで排他モードをOFFにしたままだと、サウンドに共有モードが適用され、48kHz/24bitまでしか出力されていない状態だった。
FX-D03Jに罪はなかった。
ハイレゾを売りにしているQobuzのWindows用アプリには、排他モードの設定が必須なのだ。
以上の設定だと、192kHz/24bitの音源でもQobuz側で自動的に96kHz/24bitに切り替えてくれる(アプリ上でのダウンコンバートではないと思われる)ので、DAC側で「96kHz」で認識される。
まあ、再生側の機器(主にDAC)のスペックの問題があるから、再生音源の音質が選択できる機能がアプリにあるわけなので、こうして使えばいいのだな。
音の方はというと、くっきり、はっきりしたPCM的な音になったが、耳障りな要素はほとんどなく、とても聴き心地がよい。
正直これで十分かなと思えるほどだったが、そう簡単ではなかった。
Qobuzのオフィシャルプレイリストにある曲をあれこれ聴いていると、アプリ上では再生されているのに音が出ない曲があることに気づいた。
共通しているのは、88.2kHz/24bitの曲だということだ。
FX-D03Jのスペックを確認してみると、「96kHz/24bit上限」とあるだけで、88.2kHzのサンプリングレートにも対応しているかどうかはっきりしない。
メーカーのQ&Aにもそのことは書いていないが、DACの動作を見るとそもそもDACに音声信号が届いていないようだ。
Diretta経由のときは、問題なく88.2kHzも再生できていた。
原因を特定するため、試しにAudirvana StudioでもFX-D03Jを出力先にしてQobuzを聴いてみることにした。
Audirvana Studioの設定を開いて思い出したが、Audirvanaは出力設定を細かく行うことができる。
Audirvana Studioの設定上、コンピューター側の出力は、「WASAPI」、「ASIO」、「カーネルストリーミング」に別れている。
FX-D03Jは、「WASAPI」と「カーネルストリーミング」の出力先として認識されている。
出力デバイスの項目では、デバイスごとに対応するサンプリングレートが表示される。
FX-D03Jの対応サンプリングレートは「PCM 44.1 48 88.2 96」と表示されており、Audirvana Studio側では、FX-D03Jは88.2kHzに対応していると認識されているようだ。
しかし、Qobuz純正デスクトップアプリで音が出なかった88.2kHz/24bitの曲を再生させてみると、再生スライダーは動いて、曲は再生されているようだが、Qobuzアプリと同様に音が出ない。
ちなみに音の方だが、Qobuz純正デスクトップアプリとそれほど大きな差は感じないが、そこはAudirvana、整ったいい音がする。
Direttaとの組み合わせより、WASAPI出力の方が相性は良さそうだ。
カーネルストリーミングの方も確認してみたが、個人的にはいまひとつ。
ハイレゾ音源のサンプリングレートでCD系の88.2 kHz/24bit、176.4 kHz/24bitというのはかなりマイナーでそれほど流通しているわけではないが、Qobuzでは思いのほか多いような印象を受ける。
おそらくCD音源をアップコンバートしたものかなと推測されるが、DDCの仕様上対応していると思われるのに音が出ないのはどうしたものか。
FX-D03Jとは別にFX-D03+というモデルがあり、こちらは192kHz/24bitまで対応するチップを使っている。
今やUSBを同軸・光デジタルに変換するDDCを出しているのはFX-AUDIOぐらいしかないので、Qobuzのハイレゾストリーミングにフルで対応させるならDDCをFX-D03+に換える必要がある。
しかし、気になるのは88.2kHz/24bit問題だ。
FX-D03+はスペック上、88.2kHz及び176.1kHzにも対応していることになっているが、採用しているデジタルオーディオコントローラーICはSavitech社のSA6123で、FX-D03のと同じメーカーのものを使っている(FX-D03はSA6023)。
デジタルオーディオコントローラーICが変更される前の初代FX-D03+の説明書では、対応サンプリングレートが「44.1 kHz、48 kHz 96 kHz、192 kHz」と明確に88.2kHz/176.1kHzに対応していないことが記載されていたが、現行の2代目FX-D03+の説明には、対応サンプリングレートは「192kHz/24bitまで」としか記載されておらず、88.2kHz/176.1kHzに対応しているかどうかはっきりしない。
これは、メーカーのQ&Aに答えがあり、現行のFX-D03+は88.2kHz/176.1kHzに対応しているとのことなので一安心。
■Diretta導入のきっかけ
ここで改めて考えてみた。
Qobuzを聴くためにQobuz純正デスクトップアプリで問題が発生するのは、Direttaを使っているからだ。
そもそもDirettaを何のために導入したかというと、音質向上が主たる目的ではなく、当時メインで使っていたプレーヤーソフトJPLAY FEMTOとRME製のDAC ADI-2 DACの相性が悪くて、PCM系なら768kHz/32bitまで、DSD系なら11.2MHzまで対応しているはずのDACでハイレゾが再生できなかったからだ。
この原因がADI-2 DACのASIOドライバーとJPLAY FEMTOの相性問題だということがようやく分かり、ADI-2 DAC以外のASIOドライバーが使えれば、この問題を回避できるのではないかと考えた。
結果的には、Diretta(正確にはDiretta USB Brigde)の導入は大成功で、JPLAY FEMTOとADI-2 DACの組み合わせでも問題なくハイレゾが再生できるようになった。
ただ、今度はJPLAY FEMTOとDirettaがリソースの競合を起こし、Direttaの性能をフルに発揮できないという別の問題が発生した。
まあ、そもそもJPLAY FEMTOというソフトが気難しすぎるということに尽きるのだが、さすがにJPLAY FEMTOに嫌気がさし、JPLAY FEMTOから国産のTuneBrowserに乗り換えて、今やJPLAYは全く使っていない。
JPLAY FEMTOからの乗り換えを考えたときに、比較検討したのがTuneBrowserと他でもないAudirvana Originだった。
Diretta USB Brigde の使用を前提として、これとの組み合わせを試したときにTuneBrowserの方が好みの音だったので、TuneBrowserにしたという経緯がある。
(これとは別にAudirvana Originがかなりの電力食いだったということも、TuneBrowserを選択した要因になっている。)
■Qobuzのハイレゾストリーミング再生をどうするか
そして、Qobuzである。
Qobuzを聴くためにQobuz純正デスクトップアプリでノイズが発生する原因がDirettaにあるならば、Direttaを使わなければいい。
そうした場合に選択肢は2つある。
まずは、Diretta USB Brigdeを使わず、PCとDACを直接接続する通常のスタイルに戻すこと。
ただ、ローカルファイル再生に限って言えば、TuneBrowser+Direttaは非常に魅力的であり、ヘッドフォンHD6XXとヘッドフォンアンプZEN CAN Signature 6XXとコンビとともに満足度が極めて高い。
Direttaを導入してからまだ3年足らず。
少なくともファイル再生については、Direttaを使わないという選択肢は今のところあり得ない。
もうひとつ方法は、QobuzについてはDiretta USB Brigde経由ではなく、DDC経由で再生する方法だ。
そうすれば、再生アプリにAudirvana Studioを使う必要性は必ずしもなく、Audirvana Studioのサブスク利用料金もいらなくなる。
当初の予定どおり、Qobuzデスクトップアプリを使えばいい。
メインのシステムで使っているWiiM Proをデスクトップで使うという手もあるが、再生アプリがタブレット上のWiiM Homeになってしまうため、デスクトップ環境では使いにくい。
せっかくQobuzのデスクトップ用アプリがあるのだから、そちらを使いたい。
ただ、DDCの選択肢が実質上FX-D03またはFX-D03+しかなく、FX-D03+にしたとしてもQobuzの音源スペックにフルに対応できるかどうか分からないというのが、困ったところだ。
Audirvana Studioをどうするかも悩ましい。
DDC FX-D03を経由してWASAPI出力にした場合、Qobuzのデスクトップ用アプリでも十分いい音がするが、Audirvana Studioの方がいいのは間違いない。
音質的な面だけではなく、もともとオーディオ向けとして実績のある再生アプリであるので、細かい設定が可能でかゆいところに手が届く。
ただ、ストリーミング再生のためだけに使うことになるので、それに年額9800円の価値があるかといわれると果たしてどうだろうか。
まあ、Audirvana Studio の試用期間もまだあることだし、ゆっくりと考えてみることにする。
とりあえずQobuzのデスクトップ用アプリを使ってみて、不満を感じるようであればAudirvana Studioを導入することにしても何の問題もないが、Audirvana Studioを使うとしたら、年払いにして料金を抑えたいところだ。
Audirvana ではQobuzローンチ記念として、年額9800円のプランを15か月間使えるキャンペーンを12月までやっているので、Audirvana Studioの導入は年内中に決めた方がいいかもしれない。