おじんの放課後

仕事帰りの僕の遊び。創成川の近所をウロウロ。変わり行く故郷、札幌を懐かしみつつ。ホテルのメモは、また行くときの参考に。

いつぞやの札幌続き

2024年05月31日 | 珈琲

いつぞやの続きですが(笑

こうしてブログを書くことが、

札幌帰れないことの

ほとんど唯一の代償

になってます

orz..

この前みつけた

十数年前のデジカメばかり

このごろは使うようになり。

だってさ、

休みの日くらい、

呼び出し音から

開放されたいじゃない?

それに、スマホのカメラって、

結局は、撮れればいいや、

みたいな。

デジカメのほうが、

機能が揃ってて

僕的には使いやすいです。

北海道も

もうすっかりと

緑の大地になって。

緑つながり

なんて洒落たことは

今思いついたんで(笑

タリーズの緑のパスタ。

限定品の

瀬戸内レモンのほうが

好きだな。

中央区最古級の商業ビルも

まだまだ現役。

あれ?

今見たら、

テレビ塔、工事中なのね。

生ではなかなか

気づかないことも

写真になると

気づかれたりするもので。

そうそう。

また乗せ忘れてましたが(笑

行きつけの喫茶で、

平日日替わりランチなるものが

登場してきました。

木曜日のオムライスは

僕的にオススメです。

というのも、

昭和の時代に

レストランとかじゃなく

喫茶店で出されてた

当時のオムライスだからで

(個人的な思い出に拠る)。

お昼時は

満席状態なので、

13時過ぎがオススメ。

あと、

定番のしゃけ定食は、

ランチの時間には

注文できなく

なりつつあります。

ランチを外した時間

朝のうちとか、

15時以降とかで

注文したほうがいいみたい。

あれれ、

まだ写真あるわ。

恒例、ESTAの屋上とか。

まあそのうち(笑

 


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審判

2024年05月31日 | 小金井充の

 長い長いエスカレーターが、空の上の雲まで続いていた。教育者は、昔、そういう場面を、猫と鼠のアニメで見たなと思いながら、ひとりぼっちで、空の高みへと、ゆっくりゆっくり運ばれていく。下界を眺めれば、我が家の屋根が見え、見慣れた大通り、そこから山のきわまで広がる、住み慣れた街の景色が広がっている。街外れの墓地に、ひと群の黒い人影があり、かすかに鎮魂の鐘が聞こえたようだ。人間、死ぬときはひとりぼっちだと言うが、本当なんだなと、教育者は思った。寂しい限りだ。しかし、この高みから見下ろしても、人だかりが見て取れるほどの人数が、自分を見送ってくれたのだ。そのことが誇らしくもあり、勇気づけられもした。教育者は、甥が着せてくれた、一番お気に入りの背広を正し、先立った妻からの、最後の贈り物のネクタイを締めなおした。胸を払い、ついでに肩を払って、常世のチリを落としたつもりだ。見上げれば、エスカレーターの動きに従い、輝く真っ白な雲が、ゆっくりゆっくりと近づいてくる。あれが天国かと、教育者は、細いフレームの丸みを帯びた眼鏡をかけなおして、その雲の妙なる陰影に見入った。かすかに、ざわめきが聞こえる。どうやら、あそこには沢山の人たちがいるようだ。地上を去って、つかの間の寂しさが、教育者のそこへの焦がれを、一層、強いものにした。
 ようよう、エスカレーターは終わりを迎えて、教育者は、幾本もの光の柱が立ち昇る、その真っ白な世界へと降り立った。重力はあるなと、一歩一歩確かめながら、教育者は考えた。してみると、ここはまだ地球なのか。向こうにはやはり、沢山の人たちが整然と列を作っており、ただあのアニメと違うのは、みな、それぞれの服装をしていて、誰も白いベールをまとっていないことだ。しかし、それはどうでもいい。この光景を見ろ。ここが天国でなくて、どこだというのだろう。教育者は、今まさに自分が目の当たりにしているこの眺めを、至極当然のものと思った。人生、振り返れば、本当に苦労をしてきた。言葉ではあったが、敵を倒さねばならぬことも、少なからずあった。そのことで咎められるのであれば、致し方あるまい。包み隠さず、ありのままに事情を話そう。教育者の全身が、今、恵まれた人生を歩んだ者だけが醸しだす雰囲気をまとって、光り輝いている。そう考えるだけで、目頭が熱くなるのを、教育者は覚えた。どんなに長く辛くても、最後には、報いが必ずあるものだ。実感に打たれて、教育者は夢見心地で群集の列に加わった。あちこちから、再開の喜びや、明るい笑い声が聞こえてくる。もしも地獄であれば、こうはいかない。教育者は、この先、自分が迎えるだろう場面を想像して、胸が熱くなった。これだ。この報いこそは、人生の総決算なのだと、教育者は感動した。そして感動のあまり、前に並ぶ婦人に声をかけた。
 「ここは天国でしょう。」教育者の声に、疑いはなかった。
 婦人は教育者を振り返って、微笑むと、白く縁取られた青いドレスの裾をつまんで、少し膝を折って見せた。都会ではもう、そんな挨拶の仕方はやらない。このご婦人はどこか地方のかたなのだろうと、教育者は親しく思った。よく見れば、ドレスは、幾つか別の青い生地から出来上がっている。婦人は、差した小ぶりな日傘を、少し上げて、その影に教育者を入れようとした。
 「ええ。わたくしも、ここが天国だろうと思いましてね。官吏のかたに聞いてみましたのよ。そしたら、天国ではないとおっしゃいますの。地獄でもないと。」
 婦人の言葉に、教育者は辺りを見渡した。官吏など、いただろうか。見渡す限り、さまざまな服を着た人々しかいない。無論、軍人や警官もいるが、そういう意味での官吏ではあるまい。辺りを一渡り見回してから、教育者は婦人に目を戻した。
 「官吏が。しかし、今はいないようですな。」そう言いながら、教育者はまた、辺りを見回す。
 「ええ。少し前に、みなさん、門の向こうへ下がりましたわ。」
 「え、門?」と、思わず声に出た教育者の目線を、婦人が白い手袋をした指先で導く。そこには確かに、大きな門があり、今しがた、それが開かれたように見えた。
 「あ、開きましたな。すると、これから審判が始まるのですね。」教育者は、小手をかざして、開け行く門を望んだ。群集のざわめきが静まる。教育者も群集も、門からやってくる、白いベールに包まれ、大学帽のような小高い帽子をかむった人々の姿を見つめた。ひとしお、群集のざわめきが高まる。あれが判事か。私たちの行方を決めるのね。教育者もまた、群集と同じ不安と憧れとをもって、その一群の白い人々を眺めた。
 やおら、その白い人々が、群集の誰かに向かって、それぞれ、無言で指を差す。するとまるで、ベルトコンベアに乗せられた荷物が仕分けされていくように、群集のなかから、ひとり、またひとり、歩くこともなく、時に座り込んだままで、スムーズに滑るようにして、その白い人々の前へと運ばれていく。雲に隠れて、椅子が用意されていたのだろう。白い人々は、おのおのの席に着座して、運ばれ来る人々と対面を始める。聖書にある通り、白い人々の前に、分厚い書物があらわれて、開かれ、白い人々の指がその紙面をなぞる。書かれてある通りだと、群集は興奮して、口々に褒め称えた。
 突然、つんざくような男の叫び声が響いて、群衆は静まり返り、一度にその声のほうを見た。誰かが赤く燃えて、彗星のように落下していく。ヒャッと小さな叫び声をあげて、婦人は教育者の腕に抱きついた。日傘がクルリと回って、ふわりと雲の上に落ちる。群衆の雰囲気も一変した。
 その刹那、教育者は、自分の腕が引かれていくのを感じた。見れば、婦人の体が静かに動いていく。その抱きつく腕は、するりと教育者の腕を滑って離れ、婦人は座り込んだまま、自分を指差す白い人物のほうへ、何の障害もなくスムーズに移動していく。婦人は片手を雲の上に突き、残る片手を、教育者のほうへ差し出す。思わず、教育者は婦人のあとを追った。子供らの姿が、その姿にダブって見えた。
 白い人物は、婦人とともに自分のもとへと来る教育者の、哀れみに満ちた姿を見てとると、「お前の番はまだだ」と、毅然として言った。
 教育者は、その声の重みに、思わず立ち止まったが。しかし、この哀れむべき婦人のために、意を決して、その白い人物の視線に立ちはだかる。
 「ここに居させてください。ご覧なさい。ご婦人はふるえている。」教育者は、自分の言葉の半ばにはもう、自信を取り戻していた。しなやかな姿勢で、その白い人物を見返す。
 「よかろう」と、白い人物は言った。そしてもう、教育者のことなど忘れたというふうに、その視線は婦人だけに向けられた。
 教育者は、休めの姿勢で足を出し、腕を組んで、婦人と白い人物との問答に耳傾ける。必要を感じれば、いつでも、婦人に加勢するつもりだ。
 白い人物の前に、厚い書物が開かれ、その指が、一行一行をなぞる。声には出されないが、婦人には、書いてあることが逐一、伝わっているようだ。段落を終えるごとに、婦人の姿勢が変わるので、それが知れた。白い人物が、やおら、顔を起こす。
 「間違いないか」と、白い人物が婦人に聞く。その高圧な態度に、教育者は怒りを覚えた。
 「はい。」とだけ、婦人は答える。そしてうつむいてしまい、その口から嗚咽が漏れるのを、教育者は聞いた。なんたる、痛々しい尋問だろう。教育者のみけんに、おのずとシワが寄る。こめかみに、細い血管が青筋を立てた。
 「ちょっと」と、思わず、教育者は言った。まだいたのかというふうに、白い人物が顔をあげ、教育者を睨む。関心は引いたと、教育者は思った。すかさず、教育者は言葉を続ける。
 「このご婦人は、生前、ずいぶん泣かされてきたのです。死んでなお、泣かされる必要がありますか。」相手が口を開く前に、まず論点をハッキリさせておかねばならない。教育者は、そこでわざと言葉を切り、相手から目をそらして見せた。眼鏡のつるをつまんで、位置をなおす。レンズがキラリと光る。
 しかし、白い人物は、何も言わないまま、分厚い書物へと視線を戻して、続く段落を、その指で追い始めた。婦人は顔をもたげて、両手を雲の上に突いたまま、ほかには聞こえない声に、聞き入っているらしい。
 教育者は、見るからにイライラした態度で、相変わらず腕を組んだまま、その様子を眺めている。こんな屈辱は、久しぶりだ。無名だった若い時分は、ずいぶんこういう目に遭ったが。しかし、世間に認められて以来、今日までなかったことだと、教育者は腹立たしく思った。
 「いえ、それは……」と、婦人は消え入るような、か細い声で言った。「それは……」と繰り返したが、上手く言えないようだ。
 この婦人も、十分な教育を受けられなかったのだなと、教育者は心の内で哀れんだ。なんたることか。教育者は、自分の努力が、まだ及んでいない人が、こうして目の前にいることを、深く悲しんだ。思わず膝を折って、教育者は、婦人と同じ目の高さに、自身の身を置く。
 「落ち着いてください。言葉を選ぶ必要はありません。ご自身の言葉でいいんです。言葉を重ねれば、あの人も理解してくれるでしょう。」教育者は、婦人に優しく話しかけて、白い人物の顔を仰いだ。
 「はい」と、婦人はようやくに言って、呼吸を整えながら、二言、三言話し始める。
 白い人物は、別に何も言わず、婦人の言葉に耳傾けている様子。相変わらず、教育者の存在を、忘れたような素振りでいるが。しかし、教育者にしてみれば、気にもならなかった。こんなこと、何度も経験したことだ。
 婦人のたどたどしい話を聞き終えて、白い人物は、ただ、「よろしい」と宣告した。教育者は、驚いて、一歩二歩、あとずさった。婦人の姿は、急に輝き始めて、音もなく、浮かびだす。
 「ありがとうございます。最後に、伝えたいことを、伝えることができました。」婦人は、教育者を振り返って、頬を涙で濡らしつつ、頭を下げた。その姿は、次第に形を失い、ついに光となって、大きな門へと入る。
 ああ、あのご婦人は、天国へ行ったのだなと、教育者は、にこやかに手を振りつつ、しみじみと思った。背後で、群集がざわめく。あの人はすごい。自分もぜひ、言葉添えを願いたいものだと、人々が口々に言うのを、教育者は満足して聞いた。
 しかし、群集の願いは、叶わなかった。教育者は、自分がいつしか、滑るように移動しているのに気がついた。いよいよ私かと、教育者は、背広の襟を正す。自分が引かれた先は、先の白い人物よりも、見たところ、ずっと若い人物のように思えた。なんだか、見たことのある顔だなという気がして、よくよく見れば、それは、かつて自分が教えたクラスの、落第生ではないか。
 「君は……」と、教育者は言って、その人物の名前を思い出そうと、指を額に添えた。しかし、思い出せない。この生徒が自分に関心がないのと同じく、自分もまた、この生徒に関心がなかったのを、教育者は、痛烈に思い出した。なんということか。若木の至りだと、教育者は唇を噛んだ。
 「すまない。君の名前を思い出せないんだ。あのころ、私はまだまだ若造に過ぎなかった。」教育者は、その若い人物に、頭を下げた。
 「僕も、あなたに興味ないです。」と、素っ気なく、若い人物は言って、先の婦人のものと変わらない厚さの書物を開いた。
 「それは、ありがとう。」とだけ、教育者は答えて、あとは黙って、ほかには聞こえない声の到達を待ったが。しかし、この人物は、普通に、みなに聞こえる声を出して、教育者との問答を始めた。
 「あなたは教育者ですね」と、若い人物が言う。
 教育者にしてみれば、これは答えるまでもない。皮肉かなとも思いながら、教育者は、微笑み返すだけで済ませたが。しかし、若い人物からの次の質問で、教育者は凍りついた。
 「あなたは、大勢の人たちから、訴えられています。」分厚い書物を指で追いながら、若い人物は淡々とそう言った。実際、そう言ってから、若い人物は黙ったまま、分厚い書物を三枚、四枚とめくった。
 「え……、なぜ?」とだけ、教育者は言うことができた。自分の人生を急いで振り返ってみても、そんな沢山の人たちから訴えられる理由は見つからない。現に、今さっき、ひとりの婦人を救ったじゃないか。
 「あなたは多くの子供たちから、学びの機会を奪ったのです。」と、若い人物は、罪状を淡々と述べた。教育者の顔が、にやけてくる。
 「ねぇ君、ちょっと、何を言われているのか、分からないが。」一体、この人物は、何を言っているのか。嫌がらせなのか。妬みからか。それなら、あるかもしれないと、教育者は真顔に戻った。仕返しというのなら、応戦せざるをえまい。なんてことだ。死んでまで、戦わねばならんとは。しかも相手は、落第生とはいえ、教え子だ。
 「あなたの教育の信条を、聞かせてください。」若い人物は、分厚い書物を閉じて、背筋を伸ばし、教育者と真っ直ぐに対面した。
 いいだろうと、教育者は思った。人生の集大成に、それを語る機会を設けてもらったというのならば、粋な計らいというものだ。教育者は、かつて教壇にあった時と同じに、両手を後ろに組んで、その場を逍遥しつつ、語り始めた。
 「子供の自主性を前提にすることは大事だが、ただ子供に任せてしまうのはよくない。経験ある者が、陰からサポートしなくては。課題の解決、コミュニケーション能力、洞察力、リテラシー。この四つの基本を軸にして、適当な機会に、子供の興味関心をそそるものを、与えてやらねばならん。安全な場所で、のびのびと育ちながら、将来を見据えた、子供ひとりびとりのための適切な課題を与えてやることで、この世界で生きる子供らが、みずからの未来を、希望のあるものにしていける。5Eとも言うが、有意な物事に関心を持たせ、探求させ、理由の説明を受け、みずから実践し、みずから評価する。それこそが、長い教育史を経て、ついに確立せられた、教育のスタンダードなのだよ。私の教育の信条も、その5Eにある。子供たちが、この世の必要とする産業や、社会の出来事にみずから関心を持ち、考案し、新たな常識を築き上げていくのを見るのが、私の人生の醍醐味だった。」
 若い人物は、何も言わずに、教育者が言うことを聞いた。それから、分厚い書物を開いて、おそらくは該当する箇所を指でなぞり、独り、うなずく。教育者を見て、「確かに、そう記されています。」と言った。
 それだけか?と、教育者は、やや、面食らった様子で、定まらない視線を、若い人物に投げかけた。若い人物は、教育者の視線など気にもせずに、次の質問を口にした。
 「あなたが言う、安全な場所、ここにはキャンパスと書かれていますが、それはどういう場所ですか。」若い人物は、また、分厚い書物を閉じて、教育者の語るのを待った。
 君にも教えたじゃないかと、言いかけて、この場の趣旨を思いなおし、教育者もまた、淡々と話すことにした。何十年かぶりの授業再開だな。
 「キャンパスとは、本来、野原というくらいの意味がある。子供たちが、あたかも野原で元気よく駆け回るみたいに、好きなことに、自由に興味を発揮して、そこから、学びの機会が拓けてくる。しかし実際には、野原で駆け回るわけにはいかない。野獣が狙っているし、先生にとって予測不可能な出来事が起こるからな。整えられた環境、教室などで、安全にそして自由に子供たちが活動して、十分に用意された教材によって、無駄を省いた実りある教育が与えられる時、子供たちの生きる能力は、飛躍的に伸びる。そうした子供たちが、将来の世界の指導的立場に立ち、すべての人々のための、新しい社会を創っていくんだ。」
 群集は、ざわめきをやめて、この問答に関心を寄せている。さすがに、群集を振り向いてはみなかったが、どうだ、と、教育者は思った。しかし、若い人物の反応は、教育者の思いのほか、薄いようだ。
 「確かに、そう書かれています。」若い人物は、さっきと同じことを言う。ちぇっと、教育者は思った。しかし、それでモチベーションを下げられることはない。多くの先生がたを悩ますシチュエーションを、この教育者もまた、幾度となく打開してきた。
 「ところで」と、若い人物はまた、分厚い書物を閉じて言った。「僕はそういう教育も受けず、そういう育てられかたもしてないですが。こうして、あなたばかりでなく、あなたが育てた人たちをも、裁く立場にいるのは、どういうわけですかね。」
 教育者は、笑って答えた。「それは君が、私より先に死んだからだよ。」
 「ごめんなさい、何言ってるのか分からない。」と、若い人物は面を伏せて、片手を振って見せた。
 「私が先に死んでいたら、私がそこに座っていたってこと。」と、教育者は、少しイライラした気分で、若い人物を指差した。若い人物は、ただ、従前のように、まっすぐに教育者を見たまま、ハッキリとこう告げた。
 「もしもあなたが、誰からも訴えられていなくても、私が死のうと死ぬまいと、ここに座ることは、けっして許されません。」
 なぜ?という顔で、教育者は、若い人物を睨んだ。
 「自然が、あなたにとっての敵だからです。」
 何を言われているか分からないというふうに、若い人物を睨んだままの教育者に、若い人物は、ためらっていたが、ふと、何かを聞いたように天を見上げると、教育者の視線を避けて、うつむいたまま、こう宣告した。
 「あなたが育てたのは、この地上の、生きものの子供ではなく、自然を拒絶するこの世が続いていくための、部品としての子供だからです。」
 教育者は、叫んだ。「動物の子供を人間の子供に育てるのが、教育の使命だ!お前は、それすら知らないのに、そこに座っているのか!」その開かれた口から炎が吹き出して、教育者は、真っ赤に燃えながら、墜落していった。若い人物の濡れた瞳に、その光跡が一筋、淡く輝いた。


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