『短歌』2021年6月号の寄稿した。歌書の書評である。
塩川治子著『歌人番外列伝・異色歌人逍遥』短歌研究社刊
特徴のある一冊。職業歌人以外の著名人の短歌作品を紹介している。小説家であり詩人の石牟礼道子。理論物理学者の湯川秀樹。知の巨人と呼ばれ、九条の会の発起人の加藤周一。『青鞜』を発刊・「新日本婦人の会」の創立に加わった平塚らいてう。詩人の高村光太郎。政治家の尾崎咢堂。など。
それぞれ特徴のある作品を残している。命の問題、平和を願う思い、相聞。作者の資質・世界観が作品化されているから秀作なのだ。これは前半の「歌人番外列伝」。
後半約三分の一の「異色歌人逍遥」では、紫式部、源実朝、本居宣長、良寛、樋口一葉などの歴史的人物作品が紹介されている。それぞれが皆、作者を紹介する散文とセットになっていて、作品の背景がよくわかる。
どの作品の市販のアンソロジーでは補足出来ない。お薦めの一冊。
短歌研究社刊 2750円