悪口の作法

悪口を分析すると、

　悪口を言う対象に対する改善すべき事項の提言であろう。改善すべき事項とは悪口を言う対象の弱点でもある。弱点を見抜き、その弱点を大衆に向かって公言し暴露するのが悪口の本質なのかもしれない。悪口を言うことはそれほど悪いことではなさそうである。それでも悪口を言う人は悪人呼ばわりされるし、悪口を言う人を善人だと賞賛する人も居ない。何でだろうと思うが、結局は、悪口を言う人の作法が間違っているのではないかと思った。

悪口を言う作法とは何だろう。

　まずは、悪意を持った悪口でなく建設的な悪口であることである。悪意を持った悪口とは、相手の弱点を悪意を持って意図的に悪用し攻撃することである。これとは別に悪用はしないが、相手の弱点を一般大衆に向かって暴露する人も居る。自分では悪用しないが、この弱点を知らしめた一般大衆の中に悪用する人が存在することを否定できないし、その可能性は大きい。その可能性を助長するような行為も含めて悪口を言うことになる。

悪意を持って弱点に付け入り悪用する悪口は言語道断で、許されないが、

　悪意を意図しなくても結果的に誰かに悪用される可能性を助長するような行為も許されない。そのためには、一般大衆に相手の弱点を公開する前に相手に報告することである。相手に改善するための機会を与えることだと思う。相手に黙って相手の弱点を公開し暴露することは許されないのである。悪口の目的は相手に改善してもらいたいという欲求である。そうであれば、相手に改善するための機会を与えることは重要で、唐突に一般大衆に向かって暴露されたのでは改善の余地もないし、一方的に一般大衆から弱点を追求されてしまう。

次に、相手の対応が完了するまではその弱点を漏らさないことである。

　ここで漏らしてしまったら、肝心の対策が不可能になってしまう。ここで漏らしてしまったら、改善しようとする勢いを止めてしまうし、周囲からの抵抗を大きくしてしまう。または、一般大衆からその弱点を集中して追及され、対応どころではなくなってしまう。悪口を言うのも気長な忍耐強さが必要なようである。ただ単に感情に任せて悪口を投げつけるだけでは何の目的も達成できなくて、単なる不満のはけ口としてストレス発散しているに過ぎない。

次に、プライバシーを侵害しないことである。

　プライバシーとは基本的には「見ても見ない振りをする」ことである。弱点を見つけても、見なかったことにする、もしくは見逃してやることでもある。事実ではあっても、その事実の当事者であることを公表しないことである。当事者を特定しないで事実を表明する努力をすることでもある。最後までプライバシーは守られなければならない。悪口は言っても、相手を特定しないのが賢い悪口の言い方である。悪口の主体である責められるべき弱点を一番よく知っているのは、その当事者である「相手」なのであるし、その相手が責められるべき弱点を改善してくれれば悪口の目的は達成できるのである。

次に、相手を直接攻撃しない。

　相手の存在を脅かすようなことをしないことである。悪口は相手の改善を望むものであり、相手の抹殺や破壊を望むものではない。これを望む者は悪意の破壊者でしかない。破壊者には発展的な向上は望めないし、いずれは自分も破壊される運命を背負うこととなる。こんなことを言うと、いかにその場限りの刹那的な感情に任せた悪口を言う人の世間に多いことかと思い知らされる。それなのに当の悪口を言う本人はそのことに気づいていない。悪口を言うのも難しいのである。

最後に、悪口を言う人は相手の行動を妨害しないことである。

　相手が弱点を克服するために大いに活動できる場を与えてやることである。時には活動を支援するくらいの心がけが必要である。弱点を克服するための助言も可能であろう。弱点を指摘した悪口を言う本人としては、何がしかの解決のヒントを持っているだろう。最低限でも相手の行動の自由を確保してやることが重要である。制限や強制や拘束をすることはもってのほかである。あれもだめこれもだめといって余計な注文や要求をするのも間違っている。悪口を言った後にああだこうだと難癖をつける人が多いが、これは慎むべきである。改善をするのは悪口を言われた相手自身なのである。