小さな脳の存在

脳は一つだけではないようである。

　あちこちに小さな脳が存在し、身体を動かしている。この小さな脳に指令を出して統一的に制御しているのがいわゆる我々が考えているところの頭脳である。頭脳とは頭にある脳であって、この頭脳もたくさんの小さな脳の組み合わせで構成されている。そしてそれぞれの脳が役割分担して指令機能を果たしている。頭脳はコンピュータのプログラムのようにすべてを制御しているわけではないし、いちいち細部まで統制しているわけではない。まぁ、コンピュータプログラムもメインとサブに分かれていて、メインがサブを呼び出しながら動作しているのは間違いない。

人間には無意識と意識がある。

　人間が意思決定する時に最初に決定しているのは無意識においてである。意識する前に無意識ですでに決定しているのである。我々は自分の意識で行動や決断を決定していると思うが、実は意識の前に無意識で決められているのである。面白いことである。まぁ、細かいことは無意識だけで、重要なことは意識に挙げられて意識の下で決定するのであろう。しかし、それにしても最初のきっかけと言うか小さな決定は無意識が行っているのである。

例えば、卓球で球を返す時、

　相手が球を打った瞬間を意識して、そのあとの返球動作を意識下で行ったら、その時には球はすでに通過しており永久に打つことはできない。返球するためには無意識下で打った瞬間を察知して無意識に返球動作を開始しなければならない。それでも高速球であれば返球できない場合がある。一流選手はこの無意識下の動作が俊敏にできるように日々鍛錬しているのである。それこそ第六感で勝負していることになる。瞬間に球筋を予測して瞬時に返球動作を開始しているのである。この時頭脳は働いていない。頭脳が介入すると間に合わないのである。

我々の一日の生活はほとんどが無意識のもとに営まれている。

　呼吸をするのも心臓が動くのも体温を調整するのも食物を摂取して消化するのも排泄するのも歩くのもいろんな道具を操作するのもしゃべるのも会話するのもみんなほとんどが無意識のうちに行っている。これらの機能を司るのが自律神経であるが、自律と言うからには律するものが必要である。それが身体の各所にある小さな脳ではないだろうか。頭脳は細部のことは自律神経を機能させている小さな脳に委ねているのである。それがどこにあるのかは現在のところよく分かっていない。

歩行のための小さな脳は脊髄の第２脊椎にあるらしい。

　脳は「歩け」「止まれ」と指令を出しているだけで、あとはこの小さな脳が細かいことを処理して歩行を可能にしている。歩くだけでもたくさんの機能を調整し統一的に歩く動作を制御しなければならない。筋肉の使い方、重心のバランス、足裏の感覚、傾きの調整、などなどである。地面の状態に応じて平衡を保ち、脚を前後に動かし、両手でバランスを取りながら、必要な筋肉を働かせている。呼吸さえ連動しているし、心臓も対応させている。

歩行している時、頭脳は解放されている。

　頭脳が思考するのに最適の環境にある。歩くことは小さな脳に任せているのである。昔の学者と言われる人たちはこのことをよく理解し活用していたようである。歩きながら思考することにより素晴らしい創造的な発想が生まれるのである。歩くことは長時間継続できるが、歩く以外の食べること排泄すること入浴することなどでも斬新な発想が得られることがある。机に座って一生懸命頭脳を働かせていても良い発想は生まれないようである。

意識は無意識から生まれているのである。

　膨大な無意識の一部が意識に現れてくるのである。そうであれば、膨大な無意識を活性化させることにより豊富な意識を生むことになる。意識に上がってきたものは具体的な思考として取り上げられ重要な決定や決断に使われることとなる。無意識を活性化させるためには、無意識の行動を繰り返すことであり、頭脳が休んでいる状態を作り出すことだろう。ボーッとして頭を空白にするのである。そうすると無意識から意識が湧き出てくるのだろう。

仕事の効率を上げるには、

　朝から晩まで一生懸命働くのではなく、途中にボーッとできる時間を設けることではないだろうか。まぁ、休憩時間はあるだろうが、身体を休めるだけでなく、頭脳を休める時間も必要なのだし、無駄に頭脳を使う時間をなくすことが必要なのだろう。時間給の単純な仕事は別として頭脳労働をしている人達は大いに仕事をサボることを推奨する。ただし、成果は求められるので、頭脳の環境を整えていかに成果を出すかを考えながら仕事をしなければならないのだろう。