ヴェルディもとい読売クラブOBは時間稼ぎを嫌う?

【六川亨の日本サッカーの歩み】J開幕から25年。もう一度聞きたいチアホーン

 今から25年前の昨日5月15日はサッカーJリーグがスタート
した日で、この頃を境に一気にサッカー系の情報が氾濫するよう
になった。

 それまで一般のライトな層はサッカーのルールといえば11人で
行い手を使ってはいけないぐらいの知識から、フォーメーションや
プレッシングなどの用語が知れ渡っていったのだが昔からのファン
だけでなくライトな層にもサッカーのセオリーを知らしめたのは何
といってもリードして迎える試合の終わらせ方だろう。

 この年の10月にカタールのドーハで行われたアメリカW杯アジ
ア最終予選の最終戦・イラク戦で2-1と1点リードしてのラスト
プレーで追い付かれ、引き分けに持ち込まれた事でW杯の出場権を
失ったわけだが問題はラストのショートコーナーではなく途中出場
した武田修宏のプレー。

 相手DFラインを抜け出して一気に敵陣に入り込んだものの誰も
上がってないのにクロスを上げGKにあっさりキャッチされると、
そこから攻め込まれてCKに逃れた時点で90分を迎えていたのだ。

 つまり武田がコーナーあたりでボールをキープし時間稼ぎをして
いれば日本はW杯出場できたのだが当時は、そういった時間稼ぎ
のようなプレーは‘好ましくない卑怯なプレー’という意識もあっ
た時代だった。

 しかしジーコをはじめとした強豪国の関係者達は‘なぜコーナー
でボールをキープして時間稼ぎをしない’という論調だったわけで、
ライトな層の人達も終了間際までリードしていたらボールをキープ
して時間稼ぎをするというのは完全に常識になった。

 ところがボールをキープしての時間稼ぎについて否定的なコメン
トをするのが、当事者である武田が所属していた東京ヴェルディOB
の面々。

 4月に行なわれた女子アジア杯では なでしこジャパンが見事に優
勝したのだが、グループステージ最終戦で得点しての引き分け以上
でW杯出場権であるベスト4進出が決まるオーストラリア戦で先制
したものの残り5分あたりで追い付かれるとオーストラリアも引き
分けOKのためボールを取りに来なかった事もあり日本も自陣でボー
ルを回して時間を潰して引き分けに持ち込んだのだった。

 通常ならば当然のプレーで下手に攻めに行ってボールを奪われて
得点される事だけは避けなければいけないのに、民放で解説してい
た松木安太郎氏は勝ちに行かない事に対し批判したのには驚いた。

 あの強気でなる本田圭佑も北京五輪アジア最終予選や11アジア
杯の韓国戦では、終盤コーナーあたりでボールをキープする戦術に
不満を漏らす事はなかった一方で新聞の批評では川勝良一氏が松木
氏同様に批判していたのが印象的だった。

 考えてみればヴェルディの前身・読売クラブはブラジルサッカー
を標榜しているわけだがブラジルといえば引き分ければ優勝だった
自国開催の50年W杯最終戦のウルグアイ戦や、引き分ければベス
ト4進出だった82年W杯2次リーグ最終戦のイタリア戦で勝ちに
行った結果カウンターを食って失点し痛い目に遭っている。

 ただしブラジルも94年にW杯で優勝してからは勝ちのみに拘る
事はなくなったのだが、80年代のブラジルに憧れた読売クラブOB
の面々は‘いついかなる時にも勝ちに行くべき’という当時のブラ
ジルのメンタリティまで受け継いでしまったのかと思ってしまう。

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