サッカーと野球、危機管理の違い

　先日、脳梗塞で倒れたイビチャ・オシム監督に代わって
前日本代表監督の岡田武史が就任すると言われている。
　日本サッカー協会の迅速な行動には、感心する。
　ここで比較されるのが、アテネ五輪の長嶋ジャパンだ。
　
　03年のアジア予選で圧勝した長嶋ジャパンだったが、
04年になって長嶋茂雄監督が脳梗塞で倒れた。
　そして一命を取り留めたものの、右半身に麻痺が残って
しまった。
　長嶋監督本人は8月のアテネまでに復帰すべく、リハビ
リに邁進したものの結局 猛暑のアテネでの指揮は厳しい
との判断で監督以外のスタッフで五輪を戦う事にした。
　ところが某ヘッドコーチの無能采配で、金メダルを取れ
る力がありながら銅メダルに終わったのだ。

　国の名誉を賭けた過酷な戦いに、リハビリ中の指揮官で
戦って勝てると思ったのだろうか？
　結局プロ野球関係者達が‘プロが出場するのだから9戦
全勝で優勝しなければいけない’などと言うなど、国際
試合を甘く見ていたとしか思えない所業だ。
　そう心のどこかに‘プロが出るのだから無敵だ’という
思いと、‘長嶋の生きがいを奪ってはいけない’という感
情的なものがあったからの体制保存だ。
　しかも‘北京でも長嶋ジャパンでいくべき’などと平然
と吹聴するメディアやOBがいたのには呆れてモノが言えな
かった。
　代表チームは長嶋の私物ではないし、体調が優れないのに
凄まじいプレッシャーに苛まれる監督業を続る事自体無茶
である。
　本来なら取り巻きが何とか説得して止めさせるのが、当然
なのに逆に‘長嶋の気持ちを汲んで’などといって続投させ
ようと言うのだ。
　私は正直長嶋ファンだが、もはや長嶋ジャパンは必要ない
と思う。長嶋の体調の方が心配なのだ。
　
　その点サッカーは常に世界を相手に戦っているので間違っ
ても野球のような感情的な事は許されない。
　監督不在で勝てるほど甘くない。
　代表強化の空白は許されない、だからこその迅速な次期
監督の選定だったのだ。
　この例を見てもプロに徹しているサッカーと、しょせん
実業団野球に毛が生えたに過ぎない野球の違いでもある。