ロンドン五輪の柔道とレスリングを見ていて感じたのが‘格闘技はレベルが
上がると試合が地味になる’という事。
子供の頃から五輪での柔道やレスリングを見ていたので、これらの競技は
本来なら一本やフォールを取るものと認識していたがロンドンでの試合ぶりを
見ていたら特に決勝など一本勝ちやフォール勝ちを殆ど見る事がなくなった。
例えば昭和のキング・オブ・柔道の山下泰裕はロス五輪の無差別級で4試合
を全て一本勝ちしての金メダル獲得だったが、ロンドン五輪の100㌔超級の金
メダリスト・リネールは2回戦こそ内股での一本勝ちしたものの他の試合は全て
指導3つの勝ちという日本人にしてみるとスッキリしない勝ち方だ。
ちなみに今回の日本人選手唯一の金メダリスト・松本薫も一本勝ちは1試合も
なく判定勝ちばかりで決勝に進出し、最後は相手の足取りでの反則勝ちと意外
な形での結末だった。
レスリングでも2分1ピリオドで2ピリオド先取に同点の場合は追い付いた方の
勝ちというルールだから吉田沙保里の試合でも基本的に1分30秒まで睨み合
いが続き残り30秒から おもむろにアクションを起こすのだが、マットから押し
出したりタックルからバックを取って1ポイントを挙げてピリオドを取って これを
繰り返すというパターンばかりでフォール勝ちはない。
特に柔道はプロ化しているので選手達は勝ちに拘るため互いの得意技を出し
合うよりも自分の得意技を封じても相手の得意技を出させないという戦い方が
主流になってしまうし、北京五輪後は効果ポイントを廃止したので有効以上を
取らないと決着が付かないため延長戦に入るケースが続出した。
競技レベルが上がり勝ちに拘ると決して見て面白いという展開にはならない
のはモハメド・アリ対アントニオ猪木戦が証明している。
つまりフォールを狙わずに1ポイントを取って逃げ切って勝つという‘オトナの
戦い方’をもできるレスリングが結果を残し‘きれいな一本勝ち’に拘って折り
合いを付けきれなかった男子柔道が惨敗したのは当然だろう。
男子柔道の惨敗は‘どんな相手にも自分の型に拘って一本勝ちを狙う’という
スタイルに反旗を翻して勝ちに徹する柔道で金を取った石井慧を否定した時点
で決まっていたのかもしれない。