内田英雄文 古事記あらすじ23
第八章海幸山幸
㈢海の神の宮
山幸彦こと日遠理命は夕暮れの海岸で途方にくれてました。もとは自分が無理に釣り道具を借りたためにこんな失敗をしたのですが、もとの針を捜して来いとはあまりにもひどい。日遠理命は思わず涙を流しました。
竹の杖をついた老人が「天の神のお子さまが、なぜ泣いておいでになられますか」と声をかけられました。それは海の流れをつかさどる塩椎神(しおつちのかみ)でした。日遠理命は少し力を加えて、今までのことを残らず話され、何か良い方法はないかと相談されました。
塩椎神は「よい方法がござりまするので、これにお乗りあそばせ」と言って、手に持った竹の杖を海になげました。すると見る見るうちに一艘の小舟になりました。
これから沖に出ると、夜明け頃に海の神で綿津見神(わたつのかみ)の御殿におつきになります。船から降りて、門の前にある大きなかつらの木に登ってお待ちなさい。海の神の姫が来て、うまく取り計らってくれるはずです。
日遠理命は小舟に乗って、まばゆいばかり美しい御殿に到着しました。船から降りて大きなかつらの木に登り、素早く身を隠しました。
㈣豊玉毘売(とよたまびめ)
しばらくして侍女が壺を持って水くみに出てまいりました。水を汲もうとして、泉に写っている木の上の命を見つけました。命は侍女の持っていた壺の中に首にかけていた玉飾りをいれました。
驚いて玉を取ろうとする侍女に「この玉はこの宮の姫しかとることはできない」と仰せになりました。侍女は急いで豊玉毘売のところに行くと「若い男神様が天から降りていらっしゃいました。大王さまよりも尊いごようすでがざいます」と言い、玉飾りの入った壺を差し出しました。
姫は壺の中から玉飾りを取り出し、表に出てかつらの木の上をみました。すると侍女の言った通り若い男の神の姿が見えました。すぐに父の綿津見神に報告いたしました。綿津見神は姫の差し出した玉飾りを眺めて「邇邇藝命のみ子に違いない。丁寧にお取り持ちせなば」と申され、御殿に案内しました。
日遠理命は立派なもてなしを受け、豊田毘売をきさきにして、毎日楽しく暮らしました。
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