内田英雄文 古事記あらすじ25
第八章海幸山幸
㈥降参した兄ぎみ
帰ってきた火遠理命に、「三年の間何処に行っていたのだ」と火照命は大声で怒鳴りつけました。ほんの数日だと思っていたに、三年も経っていたなんて。火遠理命は釣り針を海の国に行って捜して来たと言い、綿津見の神に教えられた通りに釣り針を返しました。
火照命はひったくるように針を受け取りましたが、それからは魚はいっこうに釣れず、だんだん貧乏になっていきました。
仕方が無いので稲でも作ろうと、低い所に田をつくりました。すると大水が出て田を流してしまいました。ならば高い所に田をつくると、日照りが続いて稲ができません。一方弟の方は兄とは反対の所に田をつくったので、いつもたくさん稲ができました。
兄ぎみは弟が羨ましくなり、たくさんの家来を連れて攻めてきました。そこで火遠理命は塩盈珠をとりだすと、潮が満ちてきて兄上をおぼれさせました。兄が許しを乞うたので、塩乾珠を取り出し潮を引かせました。
火照命は弟の御殿の番人になりました。
㈦鵜葺草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)の誕生
それから数か月経ったある日豊玉毘売突然訪ねてきました。天の神の子は海の国で生むことはできないので、こちらに参りました。と申します。火遠理命はたいそう喜んで海岸の洞穴の中に産屋を建てました。
ところが屋根をまだ屋根を葺き終わらないうちに子供が生まれそうになり、姫は急いで産屋に入りました。子どもを産むところを見てはいけないと言い残して入っていきました。
しかし「見てはいけない」と言われれば、見たくなります。我慢できなくなった命は、戸の隙間から中のごらんになりました。
すると中には一匹のわにざめが、のたうち回っているではありませんか。あの美しい姫がさめだったなんて。命は驚きその逃げ出しました。しばらくして元の姿に戻った姫は「本当の姿を見られたので、もうここにはいることができない」と、子どもを残して海に帰って行きました。
豊玉毘売がお生みになったみ子は、鵜の羽根の屋根が葺き終わらないうちにお生まれになったので鵜葺草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)と申しあげることになりました。
(おわり)
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