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国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

東京23区の灰溶融炉事情

2007年10月04日 | 灰溶融炉
 本年(07年)5月半ば、東京23区の灰溶融スラグから基準値以上の鉛が検出され、中央防波堤の溶融施設が全面操業停止になっているという情報が入りました。そこで東京二十三区清掃一部事務組合(一組)に対し「止めよう!ダイオキシン汚染・東日本ネットワーク」が情報開示をかけることにし(灰溶融施設の一覧は末尾)、7月26日にデータを入手しました。以下は事実を裏付けるため一組の担当部署等に取材し、文章化したものです。

◆予想外の数値
 施設中、最大規模のひとつ、中防灰溶融炉施設( 100トン×4炉以下中防)の溶出試験結果は別紙のとおりですが、鉛の溶出は最小でも5月7日の0,11mg/l(溶出基準は,01mg/l)、最大は5月21日の0,96mg/l,つまり96倍でした。昨年7月、国がJISを制定するにあたって適用を決めた含有量試験でも1度だけですが、160mg/kgを検出しています(東京都が2003年に決めた基準は150mg/kg)。

 溶出試験は1週間ごとに行なわれましたが、毎回 0,32mg/l、0,41mg/l、0,55mg/lという高い数値を示しています。

 灰溶融炉を設置している他の清掃工場でも溶出試験で大田第二が0,12mg/l、足立で0,13mg/lという数値が出ています。

 現在灰溶融炉が設置されている清掃工場は8(世田谷を含む)、灰溶融炉の数は17です。そのすべてが安定稼動するなら処理能力は1,650トンとなり、23区で稼働中の清掃工場の焼却灰(飛灰)が全量処理できるというのが一組の計算でしたが、それはみごとに外れました。

 そこでいま大田第二を除く各清掃工場では1炉だけ動かし、残る1炉の修理に入るなどの措置をとっています(多摩川は最初から1炉方式)。

 ただし板橋は今月(8月)10日からオーバーホールに入るため全面停止となり、品川の1炉は出滓口の詰まりで修理に入っていましたが、8月中には両炉を立ち上げたい意向のようです。

 中防については1号炉と4号炉が5月24日から9月5日まで、2号炉は5月22日から10月16日まで、3号炉は5月26日から10が16日までという大規模な修理工事になっています。
なお中防の灰溶融炉で鉛が基準値を大幅に超えた理由はプラズマトーチの失火とのことです。

◆金食い虫の灰溶融炉
 仮に安定操業が実現し、焼却灰の全量処理が可能になったとしても、そこにかかる運転コストを考えたら「何のための灰溶融か」という価値逆転の世界に入ってしまうことでしょう。たとえば中防の場合、熱源としてのプラズマトーチ(灰溶融炉に差し込んでプラズマアークを発射する部品)1本の値段は5万6,000円。しかし寿命は1日半です。

 同じプラズマでも足立や世田谷はトーチの内部に冷却水を高速で循環させるという方式のため、トーチの先端部分がウイークポイントになっています。つまりトーチそのものは堅牢なSUS(ステンレスの一種)でできていますが、先端のコリメータという部品は通電性のよい銅で出来ているため、炉内の超高温に耐える限界は最大でも400時間(約17日)なのです。そのコリメータは1個100万円強で、1炉に2本使いますから、半月で約200万円が消費される計算です。

 灰溶融炉を動かす電力費も軽視できません。ある清掃工場の試算では年間5~6億円、中防では30億円を下らないといわれています。しかも青森RER(産廃の中間処理業)と足立清掃工場ではコリメータが炉内に脱落し、水蒸気爆発を起こすという重大事故がありました。ちなみに足立の場合、異常燃焼ということで地域には一切知らされず、新聞にも載りませんでした(青森RERと足立清掃工場の水蒸気爆発事故についてお問い合わせは次のアドレスまで。 tsuga@mtj.biglobe.ne.jp

続きはこちらへ~ 東京23区の灰溶融炉事情(津川敬) A4版3ページ PDFファイル


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-06-26 23:28:53
先日から今日にかけて中防灰溶融炉施設で
なんと規定値を超えた硫化水素が大量に
噴出したらしい。
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