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【生きるヒント】⑩30分の「退屈」を

2011-06-15 00:24:09 | 高森光季>生きるヒント

 ニーチェの言葉に、「なんとしても退屈を避けようとするのは愚か者のすることだ」「退屈することを学ぶことで、人間は最も自己に沈潜する15分を手に入れる」といった主旨の言葉があります(正確な表現や出処はちょっと今わかりませんスマソ)。
 人間は気晴らし、暇つぶしを求めるものです。なかなかぼうっとしていることができない。何にもない時間があると、テレビを見たり、その他碌でもないことをしたりして、「退屈」を避けます。ところが、この「退屈」――外界の刺激を追わない状態――こそが、自分と向き合う時間だということです。
 外界に対応しないこの時間の中で、初めて人は「俺は何をやっているんだろう」「何を求めているんだろう」「この世界って何のためにあるんだろう」ということを問うことができます。レコード針のように盤面に始終くっついて溝をなぞるだけの生き方から、目を上げて「自己超越的な観点」を探ることができます。
 だから、退屈しましょう。何もない、外を排除した時間を持ちましょう。
 (こう言うとお説教臭くなるかもしれませんが、このことはとても大事だと思うので、あえて押しつけがましく言いますw。まあ、こういったことを必要としない人――いろいろな意味で――もいるでしょうが、そういった人たちはそもそもこんなところを読んだりしないでしょう)

 ニーチェは「一日のうちの数時間を自分のために持てない人間は奴隷と同じだ」というような過激な発言もしています。それはちょっと無理で、人はなかなか忙しい。
 でも、30分なら誰でもどうにかなるのではないでしょうか。テレビの一番組をやめれば簡単に手に入れられる時間です。家では家族がかしましいという人は、帰宅前に喫茶店や公園でぼうっとする。あるいはお風呂の中でもいいわけです。
 そんな時間があるなら本を読んで勉強した方がいいだろうという人もいるでしょう。確かに読書・勉強は大切なことですが、それもやはり「外部刺激への反応」です。高級な霊的メッセージを読んで学ぶことは大いによいことですけれども、読んで感動しているだけでは不十分なので、それをじっくりと「心に落とし込む」ことも必要です。そのためには、目を本から上げて、ぼうっと思いにふけることが欠かせないでしょう。

 ぼうっとしても、最初のうちは、生活に関する細々とした念慮が浮かんでくるものです。「あれは失敗だったな」「まったくあいつは……」「どうして俺は……」とか言う現実の思いばかりがはじける。
 肝心なことは、そうした「外側の事柄」をともかく捨て去ることです。「そういうことは別の時に考えよう」「今は世界から“いち抜けたっ”の特別な時間」、さらには強引に「ええい、サタンよ退け! お前は私に何の関わりがあろうか」と叱りつける(笑い。でもこれ瞑想の時にも有効ですよ)。
 そのうちそれもなくなって、「はあ……人生というのは不思議なものだな」といった「現実離れした」境域に進んでいく。そしてそのうち、考えているような考えていないような、15分がやってくる。そんなものは何の役にも立たない――それはそうです。でもそこで初めて、心の奥底の――つまりは魂の――息づきが浮かび上がってくる。

 心は厄介なもので、その手前でもいろいろな「表層的な思い」が乱舞します。
 だいたい人はその人なりの「心癖(こころぐせ)」というものがあります。内省している時、考えを追っている時、どうしてもある種のパターンにはまってしまう。
 ある人は、「不安」かもしれません。「何かやり忘れていることがないか」「未来はどうなってしまうのか」
 ある人は、「他者批判」かもしれません。「私はこんなに正しいのに、あの人たちはわかってくれない」「なんで世の中というのはこんなに不条理なんだろう」
 ある人は、「自己くさし」かもしれません。「私ってダメだなあ」「どうしてもっとうまくできなかったのだろう」「こうやってもダメだろうなあ」
 その他いろいろ……。こうした心癖は、なかなか脱することができないものです。ぼうっとしていても、こうした心癖による「雑念」が次から次へと出てくるかもしれません。
 まあそれはそれでいいわけです。しばらくやっていれば、だんだん飽きてきます。あるいは「ああ、自分はこういった考え方ばかりしている」と気づく。そうすればまた次のステップへ進める。
 何年、何十年もかけて「源泉」から離れ、偏った「癖」にはまってきた心は、そう簡単に変わることはできません。でも、「真実の自分」に少しでも触れたい、戻っていきたいと思うのなら、少しずつでも「外界刺激」から離れて自分に沈潜することが必要でしょう。

 退屈しましょう。テレビもインターネットも本もやめて、一人になって、ぼうっとしましょう。ただでさえ現代人は忙しく働き過ぎているのだから、せめて2日に一度、30分くらいは、ぼうっとしてもバチは当たらないと思いますよ。

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