今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・二児山、黒河山、笹山

2012年07月21日 | 山登りの記録 2012
平成24年7月16日(月)
二児山2,242.7m、黒河山2,127.4m、笹山2,140m

 南アルプス前衛の二児山から小黒山へのピストンを、数年来予定している。なかなか登りたい山ばかりで実行できないが、道の無いルートでもあり、日帰りピストンとなると、陽が長い時期でなければ難しいと思っているから、6・7月が狙い時だが、梅雨に阻まれて未だに実現していないというのが実情だ。
 二児山は伊那側から眺めると、南ア前衛では深南部の池口岳と並んで南北にそれぞれ特徴ある双耳峰で目立つ山の一つだ。その二児山から南ア主稜線の本谷山に繋がる長大な尾根には、黒河山・笹山・入山・樺山・小黒山という高低差こそ余り無いが、名前のある幾つものピークが連なっている。笹山稜線には樹林が無く、展望は素晴らしいらしい。

 梅雨明け前に夏山の足慣らしも兼ねて、今回こそはと思い3連休に1日休暇を加えたが、いかんせんお天気が味方しない。当初、日曜「晴れ」の予報は月曜に先送りになった。満を持して、晴れ予報の月曜に決行、火曜を予備日として日曜の夕方に長野に向かった。佐久から麦草峠を越えて茅野を抜け、順調に杖突峠を越えたが、またもや分杭峠は夜間通行止めで通れない。ここは順調に通れることの方が少ないのだった。急遽、伊那谷まで大回りして、中川村から大鹿村に入り、R256を戻るような形で「ヒマラヤの青いけし」の看板を目印にしながら、登山口にあたる黒川牧場に着いたら0時を回っていた。途中夕飯を食べたり買い物をしたとはいえ、6時間以上かかった。黒川牧場の最上部までは車で上がれるのだが、もう少しで最上部?と思われるカーブの手前で、未舗装の砂と砂利の道が雨でぐちゃぐちゃで上れなくなり、牧場内の未舗装路の余地に車を停め、直ぐにシュラフに潜った。

 雨の音がしている。車の屋根を叩く大きな雨音で目が覚めた。時刻は4時少し過ぎ、車の周囲は霧が巻き雨が降っていた。満を持した計画は…ああ、雨と霧では道の無い予定ルートを登ることはできない。気分も腐ってがっかり、シュラフにまた潜ってしまった。6時過ぎても同じ様な天気で、もう今日は登れないと諦め、牧場を車で下る。「ヒマラヤの青いケシ」の看板が出ている農園(標高1,500m程)まで下って、そこの駐車場に車を停め、これからどうするか考えながらパンを食べた。しかし、7時を回ると少し霧が晴れ、今居るそこが大変眺めの良い場所であることが分かった。遥か下の谷底に大鹿の集落が俯瞰でき、伊那山脈の山並が目の高さに並んで見えてきた。天気は回復しそうだ。この時間となっては小黒山までは無理でも、二児山から笹山くらいまでなら行けそうだ。

 再び黒川牧場まで戻り、牧場内の未舗装路を200mくらい上がった余地に車を停めて支度をし、7時31分に牧場内のジグザグ道を登りだした。砂利道をかなり上り、8時01分に牧場最上部の池に辿り着く。霧に周囲100m程の丸い池が草地に浮かんで、そこには5台分の駐車場があり、二児山から笹山までの大きな案内看板が立っていた。当初、小黒山を最終目的地としていたから少し離れた二児山は後回し、あるいは次回にすることも考えていたが、この時間からでは笹山までが精一杯だ。二児山から黒河山、笹山と縦走することに変更して、「二児山遊歩道」と示された車止めされている荒れた林道を登って行くことにした。

 かつて、二児山へはしっかりとした道は無かったのだが、大鹿村が登山道を整備して今は「遊歩道」としている。これは、『信州ふるさと120山』にも紹介されている。今回、笹山まで縦走したが、二児山・黒河山・笹山のピークハンティングのみが目的なら、稜線の下を通る「遊歩道」を利用した方が短時間で効率的に登れることが分かった。稜線は倒木がひどく、ルートもあいまいで時間が掛かる。

 しばらくは、霧が巻くシラビソが縁取りした笹原を、車の轍もある砂利道で緩く上っていく。背後の丸い池は遠ざかり、道が細く歩きにくくなると細いシラビソの森に入る。稜線沿いにほぼ水平にこの道は付けられている。元々は林道か作業道だったのだろう。細いシラビソの森は、将棋の駒をひっくり返した様におびただしい倒木だ。しかし、良く見るとこれは自然倒木ではなく間伐したものだ。倒れている木は切られた木口がきれいに丸く見える。奥秩父でも見かけたが、自然林のシラビソをこうして間伐している様だ。人が手を入れたシラビソ林は、自然淘汰の競争と違い、残念ながら折角残した木が枯れてしまっているものも多く見られる。そうしたところが白骨の枯木林になってしまっている所も見るので、この様な自然林の間伐はどういったものだろうか?シラビソは弱い木だ。みんなでスクラムを組んで、その上競争しないと森になれないのだろう。

 明るくなりかけた空も、再び濃い霧に包まれてきた。砂利道に真新しい標識があり、右手に二児山を指している。ここから登山道に入る。直ぐ上が稜線で、樹林で薄暗い稜線に出ると左が二児山、右を黒河山と、ここにも標識が立っていた。二児山に向かう稜線は倒木も全て処理してあり、手入れされて歩きやすい。しばらくすると、急な切り開き道になり少し息を切るようなって樹林の中の小山に登り上げた。シラビソの樹林に包まれて薄暗い。白峰三山方面の展望図板と三等三角点がある二児山山頂に9時4分に着いた。北側のシラビソの木には、薄れて読みにくくなった二児山と書かれた小さな木製プレートが付いていた。展望図は見える山を解説しているのだが、間違いを誰かがマジック書きで訂正してあった。

 空は明るくなってきたものの、相変わらずガスで何も見えない。双耳峰のもう片方である西峰方面には踏み跡が付いていた。周囲の木々を切り開いてあるので、晴れていれば白峰三山の眺めや伊那方面の眺めがある様だ。

 三角点脇に腰掛け、お菓子を少しつまんで9時30分に引き返す。「遊歩道」へ下る分岐から、そのまま黒河山と指す稜線沿いの道を進む。起伏もあまり無く始めは歩きやすかったが、次第に倒木がうるさくなってきた。自然倒木も少しはあるが、ほとんどは間伐したシラビソがそのまま倒されてルートを塞いでいる。跨いだり、大回りしたり乗り越えたりと、普通には歩けない。赤テープも点々とあるが、ルートは黒河山に近づくにつれてますます怪しくなり、シカ道も錯綜し、間伐倒木はジャングルジムの様で疲れる。

直ぐ下に笹原が広がり「遊歩道」が見えた。黒川牧場最上部の直ぐ上を通過していた。振り返ると青空が広がってきて、もう少し二児山に居れば展望があっただろうに残念だ。行く手には丸い黒河山が見えてくるが、倒木のせいでそこには中々到着しなかった。気が付くと、木々越しに農鳥岳と間ノ岳の一部がわずかに見える。いつの間にか素晴らしい晴天になっていた。しかし稜線沿いはずっと樹林の中だった。

 11時7分に黒河山山頂に着いた。何かの鍋の蓋みたいなものに黒河山とマジック書きして、木の幹に打ち付けてあった。赤く塗られたペンキが薄れた三等三角点がある樹林の中は、強い陽射しが疎らに届いて明るいが、全く眺めは無い。かなり年代モノ(1980年代と推測)のK型に刻まれた「黒河山KWV」とある錆びたブリキのプレートがあった。M大のMWVのパクリか、K大ってどこ?あそこかな…当時、対抗意識から付けられたものだろうか。30年経っているということは、ぼくと同年代でしょうかね。

 黒河山を下ると稜線は一層なだらかになり、西側が見渡せる皆伐地に出た。皆伐後に木々が育たず、笹原になったものと思われる。この辺りは笹山との鞍部でシカの糞も大分多く、いかにもシカが好みそうな所だ。その先では間伐された倒木がもの凄い所が時々出てくる。枯れたシラビソが白骨の様に立ち並ぶ凄絶な斜面を過ぎ、笹原にシラビソの巨木が残る緩い登りになってしばらくすると、西側の笹の凹地に建物が見える?そこまで下って確認すると、真新しい木造小屋で中は御座が敷かれて快適な休憩所だった。小屋の北には「遊歩道?」が黒川牧場方面に延びていた。後で確認したところ、この車も通れそうな道は黒川牧場最上部からのもので、「遊歩道」だった。池の傍の絵看板にはこの小屋が休憩舎であることが書かれていた。

 小屋のある凹地の直ぐ上が、笹原に巨木が生える笹山の頂上だった。笹山には12時17分に着いた。ここにもさっきの黒河山のものと同じK型のプレートがあった。他には笹山を示す標識等は無かった。最も高い所は西側に笹の斜面が広がり、伊那方面は大展望だ。真っ青な空の下、強い日差しに鬼面山が確認できる伊那山脈の山並が手前に青く、その向こうに伊那谷の町並みが見え、背後の中央アルプスは残念ながら雲に隠れていた。真下には『ヒマラヤの青いケシ』の農園が米粒のように見下ろせた。南には鳥倉山や三伏峠に繋がる豊口山も近い。

 笹山頂上から小黒山方面に少し下ると、そこは一面笹原の稜線が広がり更に眺めが良い。白峰三山や塩見岳が見えるが、この時既に頂上部は雲に隠れていた。笹の稜線の果てには、入山・樺山・小黒山が見えるが、その先の南ア主脈の本谷山は暗い雲に埋まっている。既にお昼を過ぎた。小黒山は遥かに遠い…。しかし、黒川牧場最上部から「遊歩道」で笹山にバイパスすれば、小黒山の日帰りピストンは案外簡単に思えた。出発が遅くなり、その上、黒川牧場も下の方から登ってきたし、二児山から笹山までは間伐倒木で歩きづらかった。今日はここまでで終了だが、次は間違いなく小黒山まで行けるだろう。

 笹山頂上に戻り、湯を沸かしてカップラーメンを食べる。人の気配もしない静寂な空間は、ぼくにとっては何よりのご褒美だ。しばらくは、のんびりと眺めを楽しみ、13時8分に笹山を後にする。この時点では、下の小屋から延びる道を「遊歩道」かどうか確信できなかったので、来た稜線伝いに黒河山まで戻った。黒河山を下りきった鞍部から、西に牧場方面に下ると直ぐに牧柵が現れ、真下に丸い池と黒川牧場最上部が見えた。笹の緩斜面を下って14時15分に池に降りた。そこも誰も居ない無人境で、広い展望台の様な空間を相変わらず独り占めだった。梅雨が明けたような強い日差しのお天気で、2,000mとは思えない暑さでタップリ汗もかいた。

 この山上の別天地の様な草原の池の上を、オオタカの夫婦が大きく旋回しながらゆうゆうと気持ち良さそうに飛翔していた。時々2羽が空中でじゃれあうように近づいて、グライダーのように素早く下ったり、風を受けて高く飛翔したり、ずっと見ていて飽きない。タカの方は、下で見上げているぼくなんか眼中に無い様だった。しばらくはオオタカの飛行ショーを見物し、池の畔で少し休んでから牧場を下った。下っていく途中の道にオオタカの尾羽が一枚落ちていた。車の所まで標高差で250mくらい降りていく間も、タカは上空をいつまでも飛翔していた。ヒナのために獲物を見つけているというのが本当のところなのだろうが、遊んででもいる様に、あるいは上手に飛んでいるのを、ぼくに見せ付けている様にも感じた。車には14時56分に戻った。

 真夏のような日差しの中、車で大鹿村の集落まで下りて帰路に着く。ラジオでは館林で39度になったと言っていた。翌日も同じ様な天気で高温になるという。それを聞いて、翌日はいつもその下を素通りしていた守屋山に登る予定を、先月登ろうと思って登れなかった北八ッの雨池周辺の山に変更した。守屋山では標高が低すぎて暑そうだ。その日は高遠の『さくらの湯』で汗を流し、茅野で食事をしてから、麦草峠に上ってそこで泊まった。

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2 コメント

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Unknown (ノラ)
2012-07-25 18:55:02
あさぎまだらさん こんばんは。日曜日から中国出張に行っててやっと帰ってきました。記録を読みますと,笹山の山頂は行ってみたい景色ではあります。しかし,南アの南部は有名ところも行ってませんからまずそこからですかね。しかし日本も暑いですが中国も暑かったです。
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南ア前衛 (あさぎまだら)
2012-07-26 02:45:32
ノラさんこんばんは。
中国も暑かったですか?
梅雨明けしてから涼しい日が3日あって、その後は蒸し暑さ最悪です。
笹山周辺は眺めの良い所です。南ア前衛や白峰南嶺、深南部など、まだまだ行きたいところばかりですが…主脈でも幾つか登り残しもあります。
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