今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・虫倉山、仏岩、大出山

2012年06月29日 | 山登りの記録 2012
平成24年6月24日(日)
虫倉山1,658.8m、仏岩1,335.5m、大出山1,593.9m

 この土日は梅雨の中休みということ、南アルプス方面にずっと計画中で登りたい山もあるが、カシミールで霧ヶ峰周辺を見ていたら、地図上では地名標記されていない追加データで山名が加えられている標高1,659mの虫倉山という山が気になった。旧長門町(現長和町)で大門峠の手前、霧ヶ峰や蓼科・八ヶ岳方面の展望台という位置にある。

 ネットで調べたところ、長野県には虫倉山という山が他にもあり、それは信州100名山にもなっている旧中条村(現長野市)にある既知の山で、沢山記録があるが、長和町の虫倉山は1件だけヒットした。「信州山学ガイド」というサイトに紹介されていた。それによれば、この虫倉山へは2通りのルートがあるようだ。1つは西側直ぐ下の星糞峠から200m登れば頂上に達せられる簡単なコースと、大門街道側から500mの標高差がある変化のあるコースだった。虫倉山の西側は黒曜石の産地として、古くから知られていたところらしい。星糞というのはその黒曜石のことを指しているということだった。

 虫倉山を大門側から登ることにした。それと、この登山口の反対側には、前から気になっていた仏岩という奇岩の山がある。簡単に登れてしまうので、これを次に登ることにした。しかし、2山登っても昼前には終了してしまうから、もう一山を…。先日買った『信州ふるさと120山』の本を見たら、直ぐ近くに旧和田村のふるさとの山として大出山(おおいでやま)という山が載っている。そこで、3つ目の山としてこの大出山を選んだ。どれも、随分地味な山だが、人に会うことも余り無さそうなところだ。土曜の夕方に家を出て長野県に向かった。

 佐久から笠取峠を越え、白樺湖に向かう大門街道を走る。10時半過ぎに仏岩登山口の駐車場に着いた。虫倉山へは、白樺ハイランド別荘地分岐の仏岩橋の辺りから取り付く様だが、夜のため登山口は分からない。別荘地に向かう道の端のスペースに車を停め、アラームを5時にしてシュラフに潜った。

 5時にアラームが鳴るまでぐっすり眠った。起きて、周辺を探すが登山口は良く分からない。登り口には水道施設があるとネットに出ていたが…?それらしいものは見当たらない。パンを食べ、支度をして5時半に出発する。仏岩橋の先で左に踏み跡が森に続いているが、これか?と思い、急なケモノ道みたいな(事実シカの爪痕が付いている)道を少し登ると、先程の別荘地へ向かう道路から別れて上ってきている舗装路に出て、向かいの階段の上に簡易水道のポンプ小屋があった。ポンプ小屋脇から落葉松の急斜面に出ると、落葉松の幹に赤テープがそれこそ間断なく付けられている。これに違いない…それにしても異常な程の頻繁な目印だ。テープが間断なくルートを示しているが、道というものではない。踏み跡さえ不明瞭だった。もの凄く急な明るい落葉松林を登っていくと、しばらくして北から上ってくる尾根に繋がる。尾根上には薄っすらと踏み跡が付いている。これも道とも言えない様な踏み跡だが、点々と赤テープが付けられていた。しばらくすると、雑木の急な尾根道となり、登り出す時には少し寒い感じだったが、既に陽も当り、暑くて汗びっしょりになってくる。

 6時15分に『虫倉東峰1451m』と書かれたプラプレートが付くピークに登り着いた。ここには「八海山大頚羅神王」と刻まれた古い石碑と、苔むした石祠がある。息を整え、汗をぬぐって先に進む。一旦急な雑木斜面を下り、ヤマツツジが疎らに咲く平坦な鞍部から登り返すと、カヤトになって高圧鉄塔に出る。向かいの霧ヶ峰方面は雲に隠れて良く見えないが、越えてきたピラミダルな虫倉東峰の右手に薄っすらと蓼科山が見えていた。高圧鉄塔から少し登ると、見晴らしの良い岩頭に出る。霧ヶ峰の車山だけは山頂に雲がまとわり着いているが、大門峠方面が俯瞰できる。下の森の中からは、うるさいくらいのエゾハルゼミの大合唱が聞こえてきた。

 直ぐ先で、またカヤトに出る。大きな蕗の葉の上に、弱ったエゾハルゼミがじっとして動かない。もう充分鳴き尽くして、間もなく一生を終えようという感じ。手に取ると、弱々しくびーっと切なそうに鳴くが、もう飛ぶことはできない。また、そっと葉の上に戻した。エゾハルゼミはヒグラシの仲間で、透き通った翅があの大声(正確には声では無いけれど…)の、けたたましさの主とは思えない繊細な印象だった。こうしてこのセミを間近に見たのは初めてだ。

 エゾハルゼミの大合唱は、主に山の下の方から聞こえる。この辺りの林の中からは特徴のあるアオバトの声や、カッコーやツツドリの声が響いている。

 カヤトの先は岩稜になる。岩脈状の岩が尾根沿いに背骨の様に突き出ているのを縫って登る。登り上げた先でまたカヤトになり、再びナラなどの茂る尾根を登ると、中央峰と書かれたプレートがミズナラの木に付けられた虫倉中峰に6時59分に着く。高さ2m程の岩がどんと立っている。中峰の先で株立したミズナラの木に「八合目」と赤ペンキでマーキングされている。そこから南側がカヤト、北側がミズナラ林になった。緩い尾根が少し高まって山頂?と思った岩のある所からは鷲ヶ峰が見える。カヤトの下には直ぐ近くに道路や家並みが見下ろせるのが意外だった。地図で見ると、スキー場がある大笹峰との間にある鷹山というのようだ。四周を山に囲まれた窪地のような所に有る集落だった。

 山頂は高さもほとんど変わらない、先に見える一帯の落葉松の森のようだ。薄暗く太い落葉松林の中はほぼ平坦で、樹床には大きなシダが茂っている。南端は断崖状になって北に低まりながら稜線が延びていた。山頂はどことも言えないが、踏み跡も無い笹の低い下生えを南端に向かうと、木々が無くなり笹原が急角度で落ちていた。ほぼ文字の消えた『虫倉山』のプレートが、骨のように枯れた木に付けられていた。この辺りはレンゲツツジがあちこちにオレンジの花を咲かせている。

 落葉松林を北に向かうと、南端から100m程の辺りにごろ石が苔むした小山があって、苔に覆われた石祠と「虫倉嶽大神」と彫られた碑があった。東峰にあった祠や石碑、ここにある祠や碑からすると、この虫倉山は古くは修験の山であった様だ。時刻は7時半、丁度2時間で山頂に着いたことになる。この場所も湿っぽくて休むような所ではないので、落葉松林手前の岩のあるカヤトの高まりで休むことにして引き返すと、祠から20m程南の地点で足元に三等三角点がぽつんとあるのを見つけた。ネットでも三角点が見付からなかったという記述があったから、何の変哲も無い藪の足元で見落としてしまう様な所だなと思った。

 カヤトの高まりまで戻って荷を下ろし、オレンジやお菓子を食べて少し休む。暑くて随分汗をかいたので、オレンジが美味しかった。ここからは、晴れとは言えやや霞んだお天気ながら、向かいに霧ヶ峰や鷲ヶ峰の展望がある。鷲ヶ峰の右手には遠く薄っすらと、雪を斑に残した乗鞍岳が見えた。8時20分に虫倉山を下る。

 蕗の葉の上のエゾハルゼミは、もう脚を縮込めて虫の息だった。そっと触ると、弱々しくまたびーっと鳴いた。セミにさよならを言って後にした。下るに連れて、またそのセミの大合唱が賑やかになる。登り口の水道施設まで降りたら、夏のような日差しだ。9時38分に車に戻った。

 さて、次は向かいの仏岩だ。仏岩駐車場に車を移動して、9時47分に仏岩登山道に入る。駐車場にはワゴン車が一台停まっていた。蝉時雨の中を先程登った虫倉山の踏み跡の様な道と違い、しっかりとした道でジグザグに登る。樹下はひんやりとして気持ちが良い。何度かジグザグを切り、仏岩頂上と指す標識に導かれ、岩の基部に出た。黒い安山岩の岩頭が上に幾つか並んでいるようだが、葉が茂るこの時期は全体が良く分からない。ちょっとしたクサリ場を過ぎて一つ目の岩の上に出た。虫倉山が向かいに見えている。ここからトラヴァース気味に岩場を伝って、またクサリがあり、上で人の話し声が聞こえた。鉄バシゴを登って岩の上に出ると、右手に弁当箱を2段に重ねた様な岩があり赤い鉄バシゴが掛かっている。年配のご夫婦がそこにいた。ご婦人の方が頂上の仏岩の上に居る。その方が降りてきてから、最後のハシゴを登って仏岩の上に出た。頂上の岩は3m四方程度の広さしかなく、四方は断崖になってかなりの高度感がある。モチロン柵なんか無い。仏岩に10時19分に着いた。

 仏岩の真ん中には、鉄檻で覆われた古色蒼然といった趣の石塔がある。登山口の説明看板によると、この石塔は鎌倉時代の物だという。石造宝篋印塔(せきぞうほうきょういんとう)という難しい名前が付けられている。応長元年(1311年)の作とのことだが、誰が何のためにこんな岩の上に作ったのかは不明との事だ。しかし、よくもまあ、この危ない高い岩の上に石塔なんか建立したものだ。信心からには違いないが…。それにしても、ここは怖い。この岩の上からは大変眺めも良く、霧ヶ峰や大門街道の道路が見下ろせ、向かいの虫倉山も良く見えるが、写真を撮っていても、おしりがむずむずしてきて居心地が悪い。岩の上には真鍮製の丸い四等三角点も埋まっていた。

 岩から降りる時は、鉄バシゴ突端の降り口が足元になっているから、這いつくばるようにしながらハシゴの突端を掴んで、おそるおそるへっぴり腰で向きを変え、ハシゴをしっかり掴みながら降りた。下を覗くと、下の岩との間には岩溝が遥か下まで落ちていて、その高度感はハンパじゃなかった。あー怖かった。

 下の岩の上で、荷を置いて2つ目のオレンジを食べ、直ぐに仏岩を下った。下っていく途中で、カメラを手にした観光客みたいなおじさんとすれ違った。10時45分に駐車場に戻ってきた。往復で1時間だった。

 さて、次は最後の大出山だ。車に乗って大門街道側から山の反対側和田峠越えのR142に出て、旧和田村の大出集落に向かう。ここの「赤倉の森オートキャンプ場」が大出山の登山口だ。このキャンプ場は子供が小さい時にキャンプに来たことがあった。キャンプ場奥の林道から大出山登山口に繋がる。キャンプ場のおばさんに許可をとってから、キャンプ場内を抜けて奥に向かう。シーズンオフでキャンプをしている人は誰も居ない。キャンプ場最奥の林道入口はシカ避けのネットで塞がれている。手前に駐車スペースがあってそこに車を止め、11時23分にシカ避けネットを潜って林道を進む。赤倉沢を対岸に渡ってしばらく行くと、そこから右手に急角度で上っていく道が大出山の尾根に繋がる道だ。登山口から最後まで、大出山を示す様な標識類は一切無かった。伐採地を抜け、急な登りでまた汗をかいて、踏み跡程度の尾根道に繋がった。ルートを示す赤テープは所々に付けられているが、林業の仕事道といった感じで登山のための道ではないようだ。

 尾根は急で初めは落葉松林、次第に登るとミズナラになって、ますますきつくなる。蒸し暑くて汗びっしょりになり、登る速度はどんどん落ちて、3山目でもあり、大分疲れてきた。ミズナラの尾根は雰囲気は良いが、眺めには乏しく時折、木々越しに虫倉山から北に伸びている平坦な稜線が見えるくらいで、変化に乏しい。

 尾根はますます急な登りになって、時々休みながらのスローペースになった。頂上間近まで、余り楽しめる要素も少ない単調な登りだった。そこが頂上か、と何度も騙される。暑さと疲れもあって何度も落胆した。頂上手前で一箇所だけ尾根の西側が岩場になっているところがあり、美ヶ原方面の眺めがあった。しかし、全体に雲が広がってあまり冴えない眺めだ。登りついたところは、ミズナラの疎林で、真新しい立派な東屋が建っているのがむしろ異様な感じの山頂だった。人もほとんど登って居ないような山で、標識も何も無く、山頂には山名板も無かった。笹の中に三等三角点があるだけだったから、この東屋は何のため?という感じがした。誰が利用するのだろうか。事実、木の感じからすると建てられて1,2年は経っているようだが、ベンチもテーブルも人が利用した様な痕跡は無かった(ベンチにもテーブルにも擦れやキズが無い)。大出山山頂に1時53分に着いた。登り出してから2時間半もかかっていた。

 折角の東屋なので、そこで休んで湯を沸かしカップラーメンを食べた。山頂は樹林に覆われて全く眺めは無い。山頂の南側は緩い傾斜で、先にカヤトの原が広がっていた。そこまで行っても、原の向こうの樹林に阻まれやはり眺めは無かった2時半に山頂を後に大出山を降る。登りは随分遠く感じた山頂だったが、下りは坦々と降りて、1回だけ途中で休んだものの3時59分にはキャンプ場に戻ってきた。キャンプ場は気だるい夏の午後といった空気に、ひっそりとして人の気配も無かった。大出山の往復は暑くて疲れた。

 帰りは立科町の『権現の湯』に寄って汗を流す。1日汗を一杯かいたので、温泉は何時に無く気持ちが良い。日帰り温泉施設としては料金も400円と安く、塩素臭もほとんど感じない上々の部類だろう。身体はさっぱりと、気分もすっきりとして、佐久市内で夕食を食べてから帰路に着いた。

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2 コメント

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随分地味な山ですね (ノラ)
2012-06-29 22:42:02
あさぎまだらさん こんばんは。いやー日本には実に山が一杯あるんですねって言うのが記録を読んでまず感じたことです。大出山といい虫倉山といい,あさぎまださんでないと目指さない山のような感じですね。でもネットに記録が1つあったんですね。私が検索しても有名な虫倉山ばかりで途中で見るのを止めてしまいました。エゾハルゼミって日暮しですね。初めて見ました。大出山の山頂の東屋って町が立てたのでしょうね?無駄遣いだな。建てられてから何人が訪れたのでしょう?きっと東屋に感謝されたことでしょう。
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山だらけの国ですから (あさぎまだら)
2012-06-29 23:04:35
ノラさん今晩は。
日本中回りを見回せば山ばかりです。
ですから、登る山には事欠かない訳ですね。特に、長野県はその中でも正真正銘の山国なのです。日本の2500m以上の山の3分の2は長野にあるそうです。さらに、長野県の平均標高は1,100mと日本の都道府県で断然トップです。つまり、長野県全体が山みたいなものですね。
まあ、それは別として、確かに随分地味でシブイ山でしたが…。大出山なんかは地元の人達からすれば毎日仰ぎ見ている、身近なふるさとの山ですし、虫倉山や仏岩は、それなりに歴史を持っている山でもありました。
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