Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

川の傍に咲く花

2009-04-18 23:19:30 | つぶやき


 伊那市西春近の細ケ谷の奥にはスキー場がある。「ある」とは言っても現在は休業している。もちろんすでに雪がないのだから当たり前のことではあるが、この冬は一度もオープンすることはなかった。スキー場を運営していた会社が見切って後継を探していたが見つからずに今冬は閉鎖されたままだった。伊那谷、ことに上伊那地域にはスキー場が少ない。かつてあった宮田高原スキー場は、スキー場までのアクセスが悪く、今の客のニーズには合わず、しばらく前に閉鎖された。その後ここの伊那スキーリゾートと、駒ヶ根高原スキー場が運営されてきたが、ここが閉鎖ということで、現在では駒ヶ根高原だけである。なだらかで比較的初心者向きと言われるが、下伊那地域にある平谷とか治部坂といったあたりに比べるとけっこう急な斜面もある。わたしは閉鎖されている伊那スキーリゾートへ初めて足を踏み入れた。スキーをしない人間だけに、この地に足を踏み入れることは今までなかった。たまたま仕事で入ったわけであるが、意外な傾斜に驚いた。今まで遠めに見てはいたが、現地に入ると印象とは違うものだ。幹線道路である広域農道から急坂を登ればまもなくスキー場となる。これほど近いところにあるから当然のごとく人工雪だった。

 この広域農道からスキー場までの急坂の周辺には住宅が点在する。南側の白沢や北側の宮の原にも点在して家々がみられる。いっきに西山の傾斜地に入るわけだが、伊那谷では天竜川西岸側にはそれほど急傾斜地はないと思いがちだが、けっこう西山の付け根にこうした集落が時折見られる。この急斜面から流れ出てくる戸沢川のほとりを歩いていたら、写真のような花を見つけた。初めて見る花であったが、どこか記憶にある。似ているのである、オカトラノオに。しかしオカトラノオの咲く季節ではない。そしてそれほど花が長くない。

 わたしはこの地域で名前を知らない花を見つけると、小林正明氏の『信州花ごよみ』(信濃毎日新聞社)を参考に広げる。おおかたの野の花はそこで見つけることができるが、この花は春の項にない。この季節、そして山付けということもあって春以外には考えられない。こんなときは山と渓谷社の「100選」シリーズを開く。「春」の項を開くとすぐにその花の名前が解った。ハルトラノオという。名前も姿も似ているが、ハルトラノオはタデ科で、オカトラノオはサクラソウ科の植物という。それぞれは無関係ということになる。別名を「いろは草」と言うらしいが、それは春早く咲くので、いろは47文字の最初の”いろは”に例えたものと言う。

 川の傍に咲くハルトラノオの姿は、とても涼しげな雰囲気をかもし出す。そして川のせせらぎの音にとても似合う花である。

 撮影 2009/4/16
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