Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

カタクリが咲く

2009-04-23 12:50:45 | 自然から学ぶ
 スプリング・エフェメラルとは春植物のことを言うらしいが、春に咲いた花が夏になっても咲いていたり、あるいは花が終わっても姿を見せているものは該当しないという。ようは春に咲いてそのまま地上から姿を消してしまうようなものを言うらしい。エフェメラルという意味は現れてすぐ消える短命な生き物のことを指すともいう。春に咲く花だからスプリング・エフェメラルとは言わないのである。


 万葉集の「もののふの 八十乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花」という大伴家持のうたで紹介されることの多いカタクリは、けっこう人気のある花である。「堅香子」がカタクリの意味だという。春の花はまだ芽吹きする前の見通しのよい空間に、そして無駄なモノがあまり見えない空間に咲くから印象が良い。きっとスプリングエフェメラルと言われる花が、夏や秋に咲いていたら、これほど印象深くないのかもしれない。逆に言えば夏や秋に咲く小さな花が、まだ枯れ果てている空間に花を咲かせたら、また見る目が違うのだろう。

 群生していれば多くの人を呼ぶことになるのだろうが、花期はそれほど長くはない。伊那市横山のなんでもない沢沿いにこのカタクリを見つけた。なんでもないことはなく、近くに群生地があって案内板も掲げられているが、このカタクリはその群生地のものではない。たまたま一株みつけたら、周辺にも幾株か咲いていた。先日のキクザキイチリンソウと同じようなもので、まず一株に目が行って、気がついたらほかにもあったという具合だ。しかし、幾株かといってもさすがにカタクリの群生とまではいかない。実は見つけたのは雨の日であった。こんな日のカタクリは写真のように花びらは反り返っていない。まだつぼみが開いたばかりという雰囲気の状態で、いわゆるカタクリらしいうつむいてはいても反り返って勢いを見せる姿ではない。同じ場所を翌日晴れ上がった空の下訪れると、意外にも前日には気がつかなかったような場所にもカタクリが咲いていた。やはり写真のような状態がいつものような反り返った状態になると目立つようになるのだ。小林正明氏の『信州花ごよみ』(信濃毎日新聞社)によれば、長野県でもの北信地域のものは紫色が強く、南信のものは色が淡いという。

 片栗粉はこのカタクリの鱗茎から抽出したデンプンを利用したことが語源になっている。片栗粉といえばてんぷらに使ったものだがそれこそ片栗粉と玉子を溶いててんぷらをしたものだ。それと風邪をひくと、片栗粉を溶いて飲んだもので子どものころはそれが大好きだった。風邪をひくと「片栗粉が欲しい」と思うほどそれは定番だった。もちろんその当時、カタクリが片栗粉に利用されていたものなどということは知らなかった。

 撮影 2009.4.21
コメント


**************************** お読みいただきありがとうございました。 *****