Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

シュンランが咲く

2009-04-08 12:32:40 | 自然から学ぶ


 探検隊といって妻が甥たちを連れてわたしが山作業をしているところまで登ってきた。日ごろこうした野に暮らしていない甥たちにとっては、こんな空間が楽しくて仕方がない。彼らのふだんの空間はマチの中である。当然のようにそこに土はほとんどない。それが妻の実家にやってくれば土だらけである。甥たちは来れば毎日のように泥団子を作る。ふだんには絶対できない行動である。そう考えれば、山の中の探検などということはほとんどの子どもが知らない世界であるかもしれない。

 そんな探検隊がわたしが作業をしている所からさほど遠くない尾根を越えた場所で賑やかになった。しばらくするとわたしを呼ぶ声。道具を置き行って見るとシュンランが咲いているというのだ。丈にして10センチほどに伸びた茎の上に付いた花は、ただでさえ丈が低いのに花が地面を向いているため、草花に興味の無い人には視野に入らないかもしれない。今が最良の花期という感じである。妻にその存在を認識していたか聞くと「知らなかった」という。かつて食用にされたというシュンランも、今ではあまり見なくなった花と言われる。多くは盗掘による減少という意見もある。可憐さというか素朴さが好まれて、庭園などに植えようという人たちが多いようだ。「三浦半島では、立ち入ることのできない個人の持ち山や厳しく管理されている場所でだけ生育しているようです。ほとんど人の立ち入らないこのような場所でも、数日前には咲いていたという数株が消えて、掘り取った穴だけが残っていました。悲しいことですが、花が目立つ株には落葉をかけて、来年も無事に美しい花をつけてくれることを祈りながら別れました」というコメントを検索していたページで拝見した。かなり広範に当たり前のように分布していた花のようであるが、今ではかなり貴重な存在になったしまったようだ。

 『ウィキペディア』によれば、「ホクロ、ジジババなどの別名がある。一説には、ジジババというのは蕊柱を男性器に、唇弁を女性器になぞらえ、一つの花に両方が備わっていることからついたものとも言われる」という。花弁には赤い斑点がある。こんな具合に唇状になる花はけっこう世の中に多い。枯葉の合い間に見せるわりあい目立たない花は、葉の緑に負けてしまいそうなほど謙遜している姿である。
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