Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ムラの祭り②

2007-10-06 08:41:29 | ひとから学ぶ
 先日、「ムラの祭り① 」で生家の祭りを訪れたことについて触れた。別家をしてからほぼ毎年秋祭りを訪れているが、今回は初めて電車で生家を訪れた。通勤に電車を利用するようになって、たまたま自宅から会社への間にあるからそのまま定期券が利用できるという理由もあったし、今年はわたし1人で祭りに行ったということも電車で行かせる要因となった。子どものころ、母の実家の祭りに行くとか、叔母さんの家の祭りに行くといえば、母や祖母などに連れられて電車で行ったものだ。もちろん祭りばかりではなく、母の実家への里帰りにも電車を利用したもので、父が車を持つようになってからも、父に乗せられて行った覚えはなく、いつも電車が足であった。当時の農村地帯では、どこの家でもそうだったと記憶する。

 そんな記憶をたどりながら生家の最寄の駅(伊那本郷)で降り、20年ぶりに駅と生家を連絡する道を歩く。降車した乗客は3人ほどであったが、祭りのために降車した客はわたし以外にはいなかった。ようは今時電車を利用して生家を訪れるなんていう人は皆無、いたとしても免許を持たないお年寄ぐらいしかいないということだ。

 実は先ごろの日記には昨年のような「三国花火」の写真がない。昨年も1人で生家を訪れたが、車で行ったから飲酒もせずに花火を最後まで堪能して帰宅した。今年は電車ということで、飲酒はできるものの、花火を最後まで見ていると最終の電車まで1時間ほど空いてしまう。ということで三国花火が揚がる前に神社を後にしたのだ。祭りも途中ということで、帰宅する電車に駅から乗車する人など1人もいない。めったにないことだからと、かつて毎日のように利用していた駅舎をあちこち眺めてみた。そんな写真を記録しておく。

①駅舎である。昔から入り口の右手にポストがあった。誰もいないが煌々と駅舎だけが浮かんでいる。昔はこの駅舎の前の道の南側に小さな店があった。祖母に連れられて親戚を訪れ、帰ってくると、この店に寄ってお菓子を買ってくれのを楽しみにしたものだ。もう40年近く前の話しだ。その店から続いて何軒かあった家は、今は一軒もなく、さら地となっている。



②駅舎の入り口から神社の仕掛花火が揚がっているのが見えた。今は姿を見なくなった電話ボックスが、ここにはまだ残っている。



③駅舎内の時刻表と料金表、そして掲示板である。実はまだ国鉄時代、有人だったころは、この掲示板のところが窓口になっていた。無人駅になってもう30年以上になるだろうか。



④ホームである。かつて有人だったほどだから、駅だけは複線化されていて、上下の待ち合わせがされた。今はどうか知らないが、かつてこの無人駅で10分くらい相手の電車を待ち合わせる時代があった。



 駅舎の柱に財産登録証のようなプレートが貼られていた。そこには「T9」という文字が見えた。飯田線(当初は伊那電気鉄道という私鉄だった)が開通したのが大正9年である。ということはこの駅舎、開通当初のものということになる。壁が白いペンキで塗られていて、何度となく補修されているのだろうが、まさか開通当初のものとは今まで思ってもみなかった。自宅のある駅に降りて、夜中に同じように駅舎のプレートを探してみた。やはり「T9」という文字が見えた。飯田線のおおかたの駅がいまだ開通当初のものだと解った。大正9年である。戦争も知っている建物なのだ。驚きとともに、かつてこうした駅から祖父も含めて兵士が戦場に送られて行ったことを思うと、ますます鉄道の歴史を認識するとともに、その歴史のレールの上を、わたしも毎日利用していることに自らの歴史を当てはめたくなるのだ。

 さて、花火は今も賑やかに揚がっている。そして庭花火では昔と変わらず、競いをする若者も、また昔の若者も大勢いる。それほど花火に対しては思い入れがあるようだが、ここの神社には獅子舞が伝承されている。花火の揚がる前に獅子舞が境内で奉納されているが、頭を持つ人は80歳近いという。父は笛を吹いていたが、職業病の影響で指がうまく動かず、もう10年ほど前に辞めている。その父よりも高齢の人たちが、まだ笛を吹いているという。ようはほとんどが80歳以上の人たちで担われていて、若い人たちがまったくいないという。80歳近くで頭を持つというのもなかなか大変なことだ。その方より若い人手で習った人もいるというが、この先どうなるかは不安だらけのようだ。もう数年でこの神社の獅子舞が途絶えてしまう可能性は高い。なぜ後継者へ伝えられなかったのか、花火に対しての思い入れに比較してその意識の低さは残念でならない点である。
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