澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

シャルル・アズナブールの「帰り来ぬ青春」 Yesterday when I was young

2018年10月02日 20時46分26秒 | 音楽・映画

 シャルル・アズナブールの訃報を聞く。享年94。
 実のところ、こんなに長生きして、つい最近まで歌手活動をしていたとは、全く知らなかった。
 私が覚えているのは、映画「アイドルを探せ」(シルビィ・バルタン主演)に出演していたこと。何か冴えないおじさんという感じだった。
 
 彼が作曲した「帰り来ぬ青春」(Yesterday when I was young)は、英米でも大ヒットし、フランク・シナトラをはじめとする錚々たる歌手によって歌われた。シャーリー・バッシーの歌が最もヒットした。だが。私が好きだったのは、ビッキー・カーが歌ったヴァージョン。

 いい歳になった今、この歌を聴くと、その歌詞がズシリと重く身に染みてくる。「マイ・ウェイ」とはまた一味違う。 
  

Vikki Carr - Yesterday When I Was Young

Charles Aznavour - Yesterday When I Was Young 1966


桐朋学園オーケストラ演奏会 2018.7

2018年07月05日 11時24分44秒 | 音楽・映画

 桐朋学園オーケストラ演奏会に行く。桐朋学園大学音楽学部の学生を主体とするアマチュア・オーケストラだが、他のアマチュア・オケとは実力が全く違う。

 プログラムは次のとおり、

1 歌劇「オベロン」序曲(ウェーバー)

2 ピアノ協奏曲 イ短調 op.54 (シューマン)

3 交響曲第八番 op.88(ドヴォルザーク)

4 アンコール; スラブ舞曲第一番(ドヴォルザーク)

 ピアノ:守永由香

 指揮 :中田延亮

 オーケストラ : 桐朋学園オーケストラ

 どの曲も大熱演だったが、特にピアノ協奏曲には感銘を受けた。実は、この曲はあまり聴いたことがなかったので、エラそうな感想は書けない。だが、学内オーディションで選抜されたという、守永由香のピアノは、晴れの場という高揚も伴ってか、実に素晴らしかった。指揮者とオケの友人たちのサポートも絶妙だったと思う。弱音のオケで始まるこの曲は、結構、オケの実力も試される曲だと思うのだが、さすが桐朋学園オケだなあ、と思った次第。

 交響曲第八番は、レコード、CDでは飽きるほど、演奏会でも何度も聴いたことがある曲。第二楽章あたりのドボルザーク特有のけばけばしい(?)音響を、ウンザリさせることもなく、弾きこなし、有名な第三楽章は、抒情たっぷりに歌い上げた。とかなんとか書くと、エラそうだが、私の愛聴盤がジョージ・セル&クリーブランド管弦楽団なので、無意識に比較してしまう。桐朋の皆さん、ご容赦を。

 通常の定期演奏会ではありえないアンコール曲として、「スラブ舞曲第一番」(ドボルザーク)が最後に演奏された。これはなかなか生では聴けないので、ラッキーだった。「土俗的な香りを引き出した名演奏だった」なんて書くと叱られそうだが、実に素晴らしい演奏だった。

 この定期演奏会、実はチケットが千円均一で自由席。地元のジジババばかりが目立ち、会場は六分程度の入り。これはもったいない。次の演奏会は、2019年1月らしいので、興味がある方はぜひお奨めしたい。

 
 
 
 

 

 

Martha Argerich plays Schumann's Piano Concerto in A minor (cond. Pappano) - Rome, 19 Nov 2012


サンスイ ハイブリッド・ミニ・コンポ SMC-300BT

2018年06月14日 10時28分29秒 | 音楽・映画

 サンスイのハイブリッド・ミニ・コンポ SMC-300BTを入手。アンプには真空管、スピーカーには和紙を使ったミニコンポ。定価は4万7千円だが、アマゾンなどでは、2万5千円前後で購入が可能。果たしてどんな音を出すのか、①既存のコンポーネント・ステレオ(アンプ:アルパイン・ラックスマン LV105u  スピーカー:Rogers Studio 1a)及び ②Kenwoodのミニコンポ(RD-M313)と比較してみた。

 まず気づくのは、このサンスイのミニコンポは、作りが丁寧だということ。例えば、スピーカーには端子が付いていて、自分でコードを結びつける。最近のミニコンポは、スピーカーコードが固定されていて、着脱できないものが多い。このサンスイならば、スピーカーコードを替えたり、気に入った別のスピーカーに繋ぐことも可能だ。スピーカーの設置に関して注意点は、必ずインシュレーターを使うこと。直接床面や机などに置くと、このスピーカーの真価は発揮できない。



 アンプのトーン・コントロールも本格的。他社のミニコンポの多くは、Classic、Pops、Jazzなどの音楽類型で音質を選ぶ仕組みになっているが、サンスイのこのコンポは、自分の好みで音質をコントロール可能。




 アンプに真空管を使った効果は、ちょっと聴いただけでも分かる。私の①既存ステレオ装置には、アルパイン・ラックスマンの真空管付きアンプ(LV-105u)を使っているので、真空管特有の音がいかなるものかは、おおよそ理解できる。通常のアンプと比較すると、真空管アンプの音は低音のカッチリ感はイマイチなものの、中音域がどっしりとしていている。高音域は、トーン・コントロールでややプラス気味に補正すると、全体的には聴きやすい音になる。

 比較試聴には、「そよ風と私」(スタンリー・ブラック&ラテン・アメリカン・リズム)を使用。サンスイは①既存ステレオ装置の縮小版という感じ。音質は非常によく似ているが、アンプのパワーの差が音のスケール感の違いとして出てしまう。ただ、両者の価格差は、およそ20倍(サンスイは①既存ステレオの20分の一の価格!)であることを考えると、このサンスイの素晴らしさは特筆に値する。
 ②Kenwoodのミニコンポ(RD-M313)との比較では、圧倒的にサンスイの方が上。サンスイと比べれば、まるでおもちゃのような音だ。

 パソコンやスマホで音楽を聴くのが主流となった今、ステレオの音質、いわゆる「オーディオ」にこだわる人は、いい歳のオヤジだけになった。ステレオやミニコンポが売れなくなった時代に、サンスイがこだわりのオーディオを出したことには、大いに拍手喝さいを送りたい。
 もし、ミニコンポを買うのなら、このサンスイは、決して損のない買い物だと言える。コスト・パフォーマンスの極致かも。お薦めの逸品。 

《追記》 2018.12.16 記
 約半年、このミニ・コンポを聴いて、気づいたことがひとつ。それは、リモコンがあまりにオソマツだということ。使用しているうちに、リモコンの作動が不正確になり、希望どおりに作動しなくなった。電池(ボタン型電池)を取り換えても同様。仕方なく、新しい同型リモコンを購入(2300円ほど)。現在は新しいリモコンを使っていて、今のところは問題なし。多分、SANSUIにはクレームが多く届いているはずだ。 

《追記2》2019.6.12 記
 リモコンがふたつとも不調になったので、福井県越前市にある(株)ドウシシャ・カスタマーセンターに送り、原因を調べていただいた。担当のTさんには、親切に対応していただいた。「商品のACコードを抜き差し後に、お戻ししたリモコンの動作の確認お願いします」と注意事項が書かれていたので、そのとおりにしたところ、二つとも正常作動することが分かった。リモコンの欠陥ではなかった。チューナー部分にマイコンが組まれているため、PCがフリーズしたとき、一度電源を抜いて、再起動させるのと同じような試行が有効だとわかった。これで、このコンポを存分に楽しめる。よかった…。

 

4K SANSUI SMC-300BT Tube-Digital Hybrid Amp /CD/USB/BT♫


「ディスコ・パーティ」(パーシー・フェイス)を聴く

2018年04月20日 19時41分24秒 | 音楽・映画

 先月末リリース予定だった「ディスコ・パーティ」(パーシー・フェイス・オーケストラ 1975年録音)が届く。初CD化で、しかも価格が千円(限定発売)。

 何で今どき、こんなCDが…と思ったが、「サタデー・ナイト・フィーバー上映40周年記念」としてリリースされたディスコ・アルバム50枚の一枚らしいと分かった。同じパーシー・フェイスの「夏の日の恋 ’76」もリリースされている。
 
《ディスコ・パーティ収録曲》
1.Cherry, Cherry
2.El Bimbo
3.The King Is Dead
4.Love Music
5.7-6-5-4-3-2-1 (Blow Your Whistle)
6.Chompin'
7.Mongonucleosis
8.Coldwater Morning
9.Substitute
10.Hava Nagilah
11.剣の舞(ボーナス・トラック)

 今さらディスコなんてと思わなくもなかったが、聴いてみると、パーシー・フェイスのアレンジ、演奏水準の高さがよくわかる。音質に関しても、従前の国内盤CDよりずっとクリアーになり、聴きやすくなった。お買い得の一枚と思った。

Percy Faith - El Bimbo


映画「空海―KU-KAI―」を見る

2018年03月14日 22時18分25秒 | 音楽・映画

 映画「空海」を見る。
 この映画は陳凱歌(ちん・がいか、チェン・カイコー)監督作品。この人のデビュー作である「黄色い大地」(1984年)を見たとき、私はそれまでの中国映画にはありえない、新鮮な感動を覚えた。また、彼の自伝的な本(私の紅衛兵時代)も読んでいたので、この30年余にどのような変貌を遂げているのかに興味があった。

 週日の郊外のシネコンは、予想どおりガラガラ。観客は10人程度、ほぼ全員が老人だった。夢枕獏原作の映画であるから、空海の事績や自伝を描いた映画と勘違いする人はいないだろうが、結局、空海その人はこの映画のストーリーの狂言回し役に過ぎない。主役は楊貴妃でもない。真の主役は、妖猫たる黒猫なのである。

 日本語の映画タイトルは「空海」であるものの、華語(北京語)と英語のタイトルはそれぞれ「妖猫伝」「Legend of the Demon Cat」なのだ。こちらの方が映画の中味を正しく示している。

 

 陳凱歌監督の映像美は、期待していたとおり、実に見事だ。長安の都のCG映像、豪華絢爛の宴、幽玄な幻想世界をきらびやかに表現する。娯楽作品として超一流の映画だと思う。史実を描く映画ではないので、「妖猫伝」として楽しむべきなのだろう。

 

「空海―KU-KAI―」予告編


マントヴァーニ楽団の最新DVD

2018年03月12日 22時30分34秒 | 音楽・映画

  昨秋(2017.10.8)、英国ボーンマス市で開かれたマントヴァーニ楽団コンサートのDVD「Movie Magic」が英国の友人から送られてきた。この楽団の正式名称は、The Magic of Mantovani Orchestraと言い、毎年一回のコンサートのために臨時編成で構成されたオーケストラ。オリジナルのマントヴァーニ楽団の編成およびスコア(楽譜)を忠実に守って、カスケーディング・ストリングスを再現している。


 
 このコンサートの中の一曲「アルフィー」が、次の映像で聴くことができる。

 

Magic of Mantovani Orchestra perform Alfie


独裁を強化する習近平と「東方紅」の悪夢

2018年02月26日 20時06分15秒 | 音楽・映画

 さきほど「中国共産党が国家主席人気撤廃を提案」というニュース(下記)が伝えられた。これによって、習近平の独裁が長期化され強化される見通しだ。

 今朝たまたま、アマゾン・プライムの映像で「东方红」(東方紅 The east is red;下記に貼付)を見たばかりだったので、このニュースには驚いた。この映画は、独裁者・毛沢東を賛美する、究極のプロパガンダ映画。半世紀前の映画だが、現在の北朝鮮・金王朝賛歌は瓜二つではないか。

 5年ほど前、東京外大の授業を聴講したとき、I教授(国際政治論、中国政治)が「中共政権は10年以内に崩壊(政権を下野する)する」と言っていたのを思い出した。遺憾ながら、その気配は全くなく、今や独裁政権が強化される方向に。

 この映画は、情報伝達の主役が「壁新聞」だった当時、プロレタリア文化大革命を全国に伝播させるのに大きな役割を果たした。今見ると、「中華帝国」は相も変わらずと思い至る。

 

The East is Red 东方红 1965 Chinese 'song and dance epic' with English subtitles

中国共産党、国家主席任期撤廃を提案 習近平の独裁長期化へ

2018年2月26日(月)08時58分

2月25日、中国国営の新華社通信によると、中国共産党は国家主席の任期を撤廃するため憲法の改正を提案した。写真は、習近平国家主席。北京で昨年10月撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

中国国営の新華社通信によると、中国共産党は25日、国家主席の任期を撤廃するため憲法の改正を提案した。実現すれば、習近平国家主席(64)は2023年以降も続投できることになる。

新華社は詳細について触れていない。提案は党中央委員会が行ったもので、任期撤廃の対象には副主席も含まれているという。

現行憲法では、習国家主席は2期(1期は5年)の任期終了後の退任が定められている。任期終了を控え、習国家主席は3月5日に開幕する1年に1度の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で正式に選出され、2期目に入る見通し。

中国共産党党首と人民解放軍の最高幹部としての任期に期限はないが、通常は10年が最長。習氏は2017年10月に中国共産党党首である総書記と、軍最高幹部としての2期目を開始している。

著名な歴史学者の章立凡氏は、今回の提案は予期できなかったことではなく、習氏が政権の座に何年座り続けられるかを予想するのは困難だと指摘。ジンバブエで1980年の独立以来、昨年11月まで37年間実権を握ったムガベ大統領に言及し「習氏は理論上、ムガベ氏より長く務められるが、現実的には何が起きるのか誰にも分からない」と述べた。

人民日報など中国共産党の主要機関紙は前向きな意見を掲載したものの、ツイッターに似たミニブログのウェイボー(微博)では歓迎する声ばかりではない。「2期が十分でないなら、3期に変更すれば良いだろう。だが、上限は必要だ。任期撤廃は良くない」との意見が見られた。

憲法改正には議会の承認が必要だが、議会は党への忠誠を誓って選出されたメンバーが多く、今回の改正が却下される可能性は低い。

[北京 25日 ロイター]

大杉漣の早すぎる死

2018年02月22日 21時18分14秒 | 音楽・映画

 大杉漣の突然の死には驚かされた。
 最近、北野武監督の「アウトレイジ最終章」を観たが、大杉漣は、インテリ上がりのヤクザ組長を演じた。細部のリアリティとともに、どこか憎めない役柄を見事に演じていたと思う。彼の映画を観たのはこの一本だが、若いころの彼は日活ロマンポルノにも数多く出演していたらしい。

 私が好きだったのは、BSフジ「大杉漣の漣ぽっ」(関東ローカル)という番組。高田純次の「じゅん散歩」同様、ただただ街を歩くだけの番組だったが、大杉漣の素の顔が垣間見えた。若いころは、大酒のみで、演劇論に熱くなり、けんかっ早く、女好きだったと想像するのだが、60前後になって角が取れ、散歩番組を実に楽しそうにやっていた。同行するスタッフに対する自然な気配り、街の人へインタビューするときの優しさ、心遣いなど、結構心温まる番組だったと思う。

 60過ぎてのあの肉体、身体能力は、なかなか真似ができるものではない。血のにじむような努力、節制なくしては、とてもありえないと思った。健康そのものに見えたのに、この訃報。心よりご冥福を祈りたい。

大杉漣さん散歩番組 BSフジ「大杉漣の漣ぽっ」鎌倉編を追悼放送 急きょ繰り上げ 今後は未定

 21日に急死した俳優の大杉漣さん(享年66)が出演していたBSフジの散歩番組「大杉漣の漣ぽっ」について、同局は22日、3月3日午後5時から予定していた「鎌倉編2時間スペシャル」を今月25日午後2時から放送すると発表した。追悼の意味を込め、急きょ1週間繰り上げ。番組冒頭と終わりに追悼文言を表示する予定としている。

 鎌倉編は今年1月3日にフジテレビで地上波初放送された回。普段は1人で歩く大杉さんが、親交のあるゲスト、板谷由夏(42)勝村政信(54)要潤(37)田中要次(54)山崎まさよし(46)と共に鎌倉の街を歩いた。ロケは昨年12月8日に行われた。

 番組は2013年4月13日にスタート。ほぼ月に1回、午後5時からの1時間枠でオンエアされ、放送回数は59回。

 レギュラー放送で最後のロケとなったのは第59回「姫路編」(1月20日放送)。撮影は昨年12月20日に行われた。今後の放送について、同局は「未定」とした。

 番組公式サイトは「永年にわたり、当番組にご出演していただいた大杉漣さんが2月21日に逝去されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます」と追悼している。

 公式】1月3日(水)あさ7時!大杉漣の漣ぽっ~2018年は鎌倉を歩いて運気を上げよう!~

映画『グレイテスト・ショーマン』を見る

2018年02月20日 19時41分03秒 | 音楽・映画

 きょう、映画「グレイテスト・ショーマン」を見てきた。

 この映画の音楽は「ラ・ラ・ランド」と同じ作曲家によって作られているらしい。これを音楽映画、ミュージカルとして見るのか、実在の人物を描いているのであれば、ある程度、歴史的背景を考えさせられる映画なのかなど、いろいろ考えてみたが、結局、よくわからない映画だったとしか言いようがない。

 人種差別、障害者差別がはっきりと描かれている映画だが、その問題意識を深く掘り下げるのでもなく、「みんな仲良く」みたいな歌の合唱で終わってしまう感じ。
 音楽に関して言えば、19世紀末の米国にモータウン・サウンドみたいな黒人音楽や、サラ・ブライトマンのようなポピュラー音楽風アリアなど、ありえたはずもない。この映画に出てくる音楽はすべて、マイクロフォンやPA(拡声装置=パブリック・アドレス)がなければ、成立しないものなのだから。

 まあ、細かなことはいい、楽しめればいいじゃあないか、と言われればそれまでだが、娯楽性という点でも、イマイチだったような気がしてならない。
 

映画『グレイテスト・ショーマン』予告A


西部邁が愛唱した「蒙古放浪歌」

2018年02月11日 16時17分02秒 | 音楽・映画

 10年近く前、このブログで「蒙古放浪歌」について書いたことがある。今や忘れ去られた感のあるこの歌曲は、2年ほど前、西部邁が自身の番組で採りあげたので、改めて懐かしく聴いた。

 さきほど、西部の追悼番組を見ていたら、この歌は西部の十八番だったという。当該番組の最後には、西部自身がこの曲を唄う映像が収められていた。
 下記に貼付した「西部邁ゼミナール」(2015年11月放送)では、冒頭から14分後あたりの部分から、西部のリクエストに応じて青山恵子女史が唄うこの曲を聴くこともできる。

 先日、TVでバイキきんぐ・西村が極寒のモンゴルを貧乏旅行する番組(下記に貼付)が始まった。この中で遊牧民の生活が紹介されたが、今やゲルの中にも電気が通っていて、TV、冷蔵庫、洗濯機があった。子どもたちは手からスマホを離さない。ただ、遊牧民の純朴な気質はあまり変わっていないようにも見受けられた。
 
 満蒙に雄飛する夢、モンゴル高原を放浪する我が身…こういった若者の大言壮語的な夢想は、半世紀以上の空白を経て、皮肉にも「モンゴル貧乏旅行」となって結実した。「蒙古放浪歌」が忘れ去られるゆえんである。

 歴史的に見て、満蒙は支那ではない。それが戦前の日本人の認識だった。満蒙も支那も「差別語」であるから、言い換えろ、お前は右翼か?と非難されそうな現在とは全く逆なのだ。満洲、内蒙古、外蒙古(さらに西蔵=チベット、新彊=ウイグル)は漢民族が居住する「中国」ではなかった。今やそんな歴史的事実でさえ語られるのもはばかられるようになった。

 西部自身は「学生運動に忙しかったので、寮歌としてこの歌を歌ったことはない」と語っている。それでもこの歌が十八番だったのは、故郷である北海道と満蒙に「周縁性」という類似点を見出したからだろうか。

 

バイきんぐ西村、今度はモンゴルでインスタ旅「いいね!どころじゃない」

「寮歌」の歴史に尋ねる『青山恵子日本の歌教室』 2015年11月29日放送


「DESTINY 鎌倉ものがたり」を見る

2018年01月31日 20時58分39秒 | 音楽・映画

 さきほど隣県のシネコンで「DESTINY 鎌倉ものがたり」を見る。平日の午後、郊外ということもあり、観客はまばらだった。「三丁目の夕日」の西岸良平の作品と聴いて期待したが、私のような世代(オッサン)には何やら気恥ずかしい気持ちになってしまうような作品だった。

 ファンタジーをファンタジーとして楽しめない不甲斐なさはさておいて、この映画には欧米人とは全く異なる日本人の死生観が描かれているので、共感できるところも多かった。

 先日、西部邁氏(評論家)が入水自殺を遂げたこともあって、「死ねないのが死ぬほど辛い」こともある』という西部のエッセイ(「どんな左翼にもいささかも同意できない18の理由」所収)を読んだばかりだった。そのエッセイには次のようなことが書かれている。

この私(西部)には、二十三歳のときから変わらぬ一つの意見がありまして、それは「永遠に死ぬことができないとしたら、それは死ぬほどに恐ろしい」というものです。おそらく、人の人生も人々の時代も「パターン」としては、さほど多くはないいくつかの類型に収斂するか、もしくはそれらの果てしない組み合わせとしてのデリヴァティヴ・タイプ(派生類型)に行き着くことでしょう。そんなものを無限にみせられる苦しみ、苦しみから逃れようとして自裁を企てても絶対に死ねないというさらなる苦しみ、それを思うと、「人間は死ねるから仕合わせなのだ」という命題にだって言い分があるのではないでしょうか。(同書 p.128)

 これを読んだあとでは、「黄泉の国」行きの江ノ電があって、アチラ側には死者が普通の生活を送っているみたいなストーリーには、違和感を覚えてしまう。つまり、この映画は、生と死の境界線を曖昧にして、死を現実のものとして受け止めたくない人々から支持を得ている。「永遠の生」は死と同じくらいに恐ろしいと考えた西部とは対極に位置するのではないか、と思う。
 「戦死者」を一人も出さなかった「戦後」は、不条理な「死」を身近な問題として考えなくても済む70余年だった。しかし、東日本大震災・原発事故を経て、われわれは近未来に対する漠たる不安を拭い去ることができない。そういう背景を重ね合わせると、この映画はノスタルジックであると同時に、奇妙にリアル。もし、平凡な日常が巨大な力で潰されるとしたら、「私はこうして死んで、再生したい」と思わせるような映画か。ちょっと意味不明だが…。
 

「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告


桐朋学園オーケストラ演奏会

2018年01月14日 11時18分17秒 | 音楽・映画

 友人と一緒に「桐朋学園オーケストラ定期演奏会」に行く。
 大学のオケと言えば、アマチュアの同好会という感じで、演奏技術はイマイチ。別の分野に専門があるのだから、音楽はそこそこの水準なのは致し方ない。

 しかし、このオケは全く違う。音楽専攻の学生たちだから、優れていて当然とも言えるのだろうが、実際に演奏を聴くと、プロのオーケストラとそん色がないように思われる。

 今回、音楽学部3年生の堀内麻未さんのピアノでラフマニノフ「ピアノ協奏曲第三番」を聴いたが、オケとの呼吸もバッチリ、素晴らしい演奏だった。
 リムスキー・コルサコフの「シェエラザード」は、デッドな音響のホールの影響もあってか、木管、金管楽器がくっきりと浮かび上がって、その熱演が光った。一方、スメタナ「歌劇”売られた花嫁”序曲」は、弦楽器群の緻密なアンサンブルが際立った。ピアノの堀内麻未さんがアンコールとしてソロ演奏した「パガニーニの主題による変奏曲」も素晴らしかった。

 

 


「スター・ウォーズ」を見る

2017年12月21日 00時58分59秒 | 音楽・映画

 「スター・ウォーズ~最後のジェダイ」を見に行く。

 隣県のシネコンは、水曜日の朝一番だというのに、かなりの観客がいた。先週同じ場所で「オリエント急行殺人事件」を見たときは、週日の朝の観客がまばらだったから、スター・ウォーズの人気ぶりがうかがえる。

 私は「スター・ウォーズ」の第一作しか見ていないから、この新作に至るまでストーリーの変遷についてはよくわからない。CGを駆使したド派手な戦闘シーン、勇壮で少々騒がしい音楽は、さらに一層”磨き”がかかり、中高年にはちょっと息苦しい。

 40年前の第一作と今回を比べると、レイア姫・キャリー・フィッシャーが老人になってしまって、昔日の面影はほとんど残っていない。実生活では、この映画の完成直後、病死(2016.12)したので、これが遺作となった。

 「スター・ウォーズ」の根底にある世界観、つまりキリスト教や反共主義に基づく正邪の二元論、隠しきれない白人優越思想などは、この40年で社会主義圏の崩壊、グローバリズムの台頭という巨大な変化があったにもかかわらず、さして変わっていないようだ。新作には、脇役で黒人のほかにアジア人女性が二名加わっているが、これなどは、巨大な中国市場をにらんで付け加えた布陣と考えて間違いないだろう。


         ケリー・マリー・トラン(ローズ役)

 このローズというアジア系の女性、映画の中では結構な活躍場面がある。影が薄くなった日本人ではありえない。中国人か韓国人かと思って調べてみたら、ケリー・マリー・トランという28歳のベトナム系女性だった。ベトナム難民として米国に逃れた一家の一員らしい。
 美人とは程遠い、アジア系の女優が唐突な活躍をするという、この新作。月並みな言葉でまとめれば、この40年間の変化を象徴しているのかも知れない。

 まあ、はっきり言ってしまうと、「駄作」だったね。遺憾ながら…。
 
 

 

 


映画「台湾万歳」を見る

2017年08月22日 12時59分21秒 | 音楽・映画

 先の日曜日、「いま世界は」(BSテレ朝)が「日本と台湾 二つの戦後」を特集。映画「台湾万歳」の酒井充子(あつこ)監督が出演し、台湾の日本語世代について語った。

 
        酒井充子監督

 酒井充子監督が制作した映画「台湾万歳」は、台湾の日本語世代を採りあげたドキュメンタリー映画三部作の第三作目。これまでに「台湾人生」(2009年)「台湾アイデンティティ」(2013年)が公開され、三部作最後の作品となる「台湾万歳」(2017年)に続いた。「台湾万歳」というと、何か奇妙に響くかもしれないが、このタイトルは、酒井監督が敬愛するという蔡明亮監督の映画「愛情万歳」に由来する。



 私が台湾について知るきっかけになったのも、台湾映画「海角七号」(2008年)だった。2009年台湾・澎湖諸島からの帰路、台北「二二八紀念館」に立ち寄ったとき、ひとりだけの参観者であった私に、日本語世代のボランティア解説員が一時間以上も懇切丁寧に「二二八事件」について解説してくれた。その方が蕭錦文(しょう・きんぶん)さんだった。


 蕭錦文(しょう・きんぶん)氏の名刺(2009年当時)

 この蕭錦文(しょう・きんぶん)さんが、酒井監督の映画「台湾人生」に”出演”していると知ったのは、かなり後になってから。あまりの偶然に驚愕するとともに、何かに導かれるような感じで、台湾への関心を深めていった。「台湾人生」の上映時には、来日した蕭錦文さんと酒井監督にお会いする機会も得た。



 第三部作「台湾万歳」は、東台湾(太平洋岸)の台東に住む日本語世代の”物語”だ。台湾島には急峻な中央山脈が屹立し、開発が進んだ台湾海峡側と本来「原住民」(台湾では「先住民」とは言わない)の生活空間であった東台湾とを分けてきた。そのため、花蓮などの東台湾の各地には、今なお日本統治時代の面影が色濃く残されている。


 酒井監督の三部作、そして酒井監督に触発されて制作された、台湾のドキュメンタリー映画「湾生回家」(黄銘正監督 2015年)を見て思うのは、日本と台湾の絆、日本語世代の誠実さと優しさ、それに台湾の日本語世代(=台湾人)を見て見ぬふりをし続けた私たち自身のことだ。
 そのことを教えてくれた酒井充子監督に心から感謝したい。さらに新たなテーマを追求して、私たちの前に提示してほしい。そんな気持ちで一杯。

 多謝!酒井充子監督。

  

 
 

 


十亀有子デビュー40周年記念コンサート 「笛吹きYUKO&木管6重奏」を聴く

2017年07月22日 22時31分37秒 | 音楽・映画

 十亀有子デビュー40周年記念コンサート「笛吹きYUKO & 木管6重奏」を聴く。十亀有子女史は、東京フィルハーモニー交響楽団フルート奏者。会場の「ドルチェ」(パウエル・フルート・ジャパン)は、100席ほどのサロン的スペースで、間近に生演奏を楽しめる。

 プログラムは、ショッカーという作曲家・フルート演奏者の作品を4曲も演奏するなど、「十亀さんらしい意欲的な採りあげ」になった。そのショッカーによる「エアヘッズ」は、夫君の十亀正司(クラリネット)との二重奏。ミヨーは、予想通りのような曲想の曲、ポピュラーなモンティの「チャルダーシュ」では、思いがけないハプニングもあって、一同がどよめいたりした。アンコールは、東フィルの同僚が十亀女史のためにアレンジしたという、ガーシュウィン「サマータイム」。木管六重奏の中に十亀のフルートが浮き上がるような音像の編曲。

 曲間のトークもまた絶品。この人の豊かでおおらかな人柄を感じさせるお話だった。

 真夏の土曜日、一服の清涼剤だった。次は、涼やかな季節にも聴いてみたい。