遅きに失した旧統一教会への解散命令、80年代から社会問題化していたのになぜ政府は放置してきたのか
(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
■ 刑事事件を引き起こしていない旧統一教会に下された解散命令 【写真】1982年10月に韓国で行われた統一教会による合同結婚式 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散命令が出た。 3月25日、東京地方裁判所が宗教法人法に基づく解散命令の決定をした。一昨年10月に文部科学省が東京地裁に請求していた。 宗教法人の解散命令の要件は、宗教法人法の第81条で「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」とあり、東京地裁は教団のこれまでの献金勧誘行為が民法上の不法行為にあたり、「法令違反」であって、この解散要件に該当すると判断した。
法令違反による解散命令は、オウム真理教などについで、これで3例目になる。 地下鉄サリン事件などを引き起こし、宗教法人というよりはテロ組織と呼ぶべきオウム真理教は、教祖をはじめ幹部信者が刑事訴追され、13人の死刑判決が確定し、既に執行されている。このうち、サリン製造を企てた殺人予備行為が、第81条に該当するとされた。
2例目の「明覚寺」事件は、無料相談などで人を集めては「霊視」を行い、「水子の霊がついている」「先祖の霊のたたりだ」などと脅し、供養の見返りに高額を請求。教団トップや幹部が詐欺の疑いで摘発され、実刑判決を受けた。2002年に解散命令が出ている。
いずれのケースも、教団の組織ぐるみとも言える刑事事件が解散要件に該当したが、今回は刑事事件ではなく、民法上の不法行為も解散要件に該当すると判断されたことに特筆性がある。 だが、東京地裁が認めた不法行為の内容を知れば知るほど、もはや組織犯罪と呼びたくなる内容だった。なぜ、ここに至るまで解散が請求されなかったのか、後悔が残る。
■ 過去のトラブルでも「悪質で巧妙」「高度な組織性」と裁判所が認定 東京地裁の解散命令の決定要旨によると、元信者らが旧統一教会側に損害賠償を求めた民事訴訟で、請求の全部、あるいは一部を認めた判決は32件。しかも「時期、場所を問わず、献金勧誘などの行為にみられる共通の特徴などが数多く認定され、信者の活動の組織性・画一性などに加え、信者が献金勧誘などの行為にあたって用いるなどしていたマニュアルや文書で合致する内容の記載がみられた」(引用は朝日新聞掲載「要旨」より)と断じている。
つまり、組織ぐるみだったことを認めている。
安倍晋三元首相襲撃事件が引き金となって、再び旧統一教会への社会的関心が高まる中で、教団側はたびたび2009年に発した「コンプライアンス宣言」を持ち出し、それ以降は献金や勧誘をめぐるトラブルは減少していると言い訳していた。
しかし、決定によれば、献金勧誘などの行為は、少なくとも昭和50年代後半からコンプライアンス宣言の出された09年までの間に、献金の支払いなどで損害賠償を請求した原告168人の大部分に不法行為があったと断じ、しかもその損害額は約17億8400万円にのぼるとしている。
しかも、献金勧誘にあたっては、「自身や親族に複雑な家庭環境、不幸な出来事、高齢などによる判断能力の制約などがあるなどの困難な事情を抱える者」を対象に、「深刻な問題の原因の多くは怨恨を持つ霊の因縁などによるもので、問題解消のためには献金などが必要だと繰り返し申し向けるなどして献金などをするよう勧誘」。その献金も借財などで捻出。本人はもとより、近親者の生活の維持にも重大な支障を与える献金を繰り返させていた。
裁判での和解や裁判外での示談でも、ほぼ同様の事実関係を具体的に指摘しているとされる。
そもそも、2009年のコンプライアンス宣言は、いわゆる霊感商法で教団信者が初めて特定商取引法違反(威迫・困惑)の有罪判決を受けたことによる。 印鑑販売会社の社長や取締役が、姓名判断を装って通行人を誘い込み、「先祖が人を殺しており、その因縁がふりかかっている」「因縁を払うには印鑑を変えること」などと脅して高額の印鑑を買わせ、客に口止めまでしていたという事件だ。いずれも執行猶予付き有罪判決と罰金刑を受けている。
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