とねり日記

とりことや舎人(とねり)の
どげんかせんとの日々

白炭へGO!(4)本体着工

2015年02月28日 | 山里から
月亭太遊と月亭方気という若手噺家さんたちが炭山にやってきた。
向かって左の細い方が方気(31歳)、太い方が太遊(30歳)。方気は月亭八方の弟子で、太遊は月亭遊方の弟子。ともに吉本興業所属。


吉本興業が「あなたの街に“住みます”プロジェクト」という地域おこし支援ビジネスみたいなのをやっているらしい。
街や地域を元気にしたいとか問題を解決したいと考えている自治体、団体、企業などを、吉本の若手芸人が実際にその地域に住んで応援する、ということらしい。
で、世木地域振興会(旧世木村4集落=殿田、中世木、木住、生畑で構成)が二人を呼んだらしい。
「らしい」ということしかわからないまま、とにかく二人が炭山にやってきたのだ。
だが、よそから客人がやってくるとなると、きちんと迎えなければいけない、と思うのが、この地域の人たちの律儀さ。
ナガちゃんは前日から作業現場の雪をかき、朝から火を焚き、ヒトッちゃんは段取りをあれこれ考えていた。

炭窯を見たいというので、まず黒炭窯に案内。
二人にいろいろ説明していると「さすが噺家だな」と思う。
飲み込みがよい、というだけでなく、その前に、まず、好奇心が旺盛だし、感度がよい。
毎度バカバカしい話で人を笑わせているが、バカじゃ噺家にはなれんなあ、と思ったね。
夜、地区の集会場で二人の落語会があったが、老若善男善女の笑いの渦。若手とはいえやはりプロだった。


窯の中にも入りたいと言う。
太遊が入ろうとしたが、太くて入れない。体を横にしても入れない。
代わって方気が入った。箒のように細いから方気というのだろうか。


ナガちゃんも昔の炭焼きのことを説明。二人から次々質問が飛ぶ。


さて、私たち里まるは、二人が来たこの日(2月7日)を白炭窯着工の日と決めた。
そこで二人に、窯建設の一連の作業を、一通りやってもらった。
植樹祭の鍬入れみたいなもんね。

まずは瓦運び。
近隣の寺の屋根の葺き替えなどで出た古瓦をもらってきてあったのだが、それをバタバタ(キャタピラー付き運搬車)に積んで現場まで運ぶ。


方気くんがバタバタを操縦。
いろんなバイトをやってきたからか、すぐにコツをつかむ。


瓦を降ろす。


土を篩(ふるい)にかけて


水を加えながら練る。


練った土を泥団子に丸めて、瓦と瓦の間に叩きつけ、瓦を密着させながら積んでゆく。


方気くんがかざしている手の高さまで積んで、それからドーム状に天井を作る


作業を終えて記念撮影。二人ともいい顔してる。
セーやん(里まる会長)が持っているのは二人の色紙。
ラップで包んで炭小屋の上にかけておきます。日本中(いや世界中)で炭小屋に色紙がかかっているのはこの二人くらいだろう。


二人が帰った後、さあこれからが本番。


泥を練るのもみんなでやると楽しい。
左端にいるのは大阪から手伝いに来てくれたノグさん。高校の英語の先生だが、バーベキューの達人でもある。なにしろ年に40回は炭を熾すのだという。ほぼ毎週ね。
ノグさんはバイクのツーリングでこの辺りに来るたびに、道の駅「スプリングスひよし」で里まるの炭を買ってくれていたのだが、去年の秋、どんなところで焼いているのだろうか、と生畑を訪ねてきた。
そんな縁で炭窯作りの手伝いに。いつの日か自分が焼いた炭でBBQができますよ。


泥団子。どんどん作らないと追いつかない。


一枚一枚積み重ねていく。


体重をかけて圧着する。


並行して煙突も作る。


30センチほど積み上げたら、外側に土を入れランマで突いて固める。
その繰り返しで徐々に壁が高くなってゆく。

これは着工から1週間後の2月15日の写真。ようやくここまで積み上がった。


窯が完成したら、二人を呼んで火入れをしてもらおうと思う。
そして真新しい炭窯の前で毎度バカバカしい噺を一席。
そして「炭窯寄席」がはねたら達人のバーベキュー。
「はよ食べなはれ、炭になってまうやないか」
「わしゃ、炭焼きやさかいなあ…。都合がよろしおます」
テケテンテンテン…
おあとがよろしいようで。
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一網打尽

2015年02月05日 | 山里から
猟期も残すところ1か月半になった。
狩猟免許を取得して4度目になる今猟期の捕獲目標は鹿10頭。
11月に三股の角をもった牡(オス)2頭、そして12月に牝(メス)2頭を捕獲した。
牡鹿は頭骨が付いたままの角を取ろうと思い、角だけ地表に出して頭部を土に埋めた。


滑り出しは順調。ほぼ百発百中で獲れたのだが、年末から罠を閉じたままにしてしまった。
仕掛けさえすれば獲れるのだが、年末年始、いろんなことがあって疲れてしまって…。

だがこのままでは終われない。
しかもカフェのお客さんから「鹿肉を譲って」とのリクエストもあった。
冷凍庫にも余裕ができたし、舎長からも「早く獲って」と尻を叩かれた。
実家に帰る途中、そのお客さんのところへ寄って鹿肉を渡したいという。
実家には
「鹿が獲れたら、帰ります。ラーラーラララララー♪(BGM『北の国から』より)」と伝えてあるとか、ないとか。

2月1日、罠のストッパーをはずした。
翌日、入口付近に鹿の足跡。
そして、2月3日。
なんと…
3匹。
このところ、この周辺の谷を徘徊していた親子連れの牝鹿3頭が一度にかかってしまった。
鹿は牡は単独行動するが、牝は群れで動く。

可哀相だったが、母鹿から順番に止め刺しした。
すべて槍で一突き。
舎長から「見事だった」とのお言葉をいただいた。

役場に提出する証拠写真を撮影。
「捕獲者も一緒に写真に写り込むこと」という条件が付いているので、舎長にシャッターを押してもらった。


一晩、川に浸けて、翌日昼過ぎから解体。
鹿をさばいた後に、自分への褒美のステーキ。もちろん舎長とともにいただく。


前にも書いたが、ヨーロッパでは鹿を総称して「セール」と言い、生後6か月までの子鹿を「ファン」、18か月までの中学生くらいのを「シュヴリヤール」、20~25キロになる牡をブロカール、牝をシュヴレットと呼ぶ(たぶんフランス語)。
栄養的にも優れていて、蛋白質は牛肉の1.3倍、豚肉の1.1倍、カロリーは牛の3分の1、豚の3分の2、脂質は牛の20分の1、豚の5分の1、という高タンパク低カロリー超低脂肪の健康食品。さらに、ビタミンB2、ビタミンB6、DHAなどの不飽和脂肪酸も豊富。そしてさらに、鉄分は牛肉の約7倍、豚肉の約10倍以上。鉄分は1日に1.5ミリグラムが体から失われており、10~12ミリグラムを食事から摂取する方がよいとされているにもかかわらず、日本人の平均的な食生活では、摂取必要量はすれすれで、ダイエットや偏食をするとたちまち不足してしまうが、鹿肉が持つ鉄分は「ヘム鉄」といい、人体内にある鉄分と性質が似ているために体内吸収率が高い(JAグリーン近江『シカ料理レシピ集』および和歌山県農林水産部畜産課監修『わかやまジビエレシピノート』より)。

今回獲れたのは、母鹿とシュヴリヤールとファン。
ステーキにしたのはファンの背ロースの肩に近い部分と腰に近い部分。同じく後ろ脚のもも肉。そしてシュヴィリヤールのもも肉。
炭火の上にフライパンを置き、味付けは塩、胡椒、バター、ニンニクだけ。
どれもジューシーで品よい味。
特にファンの背ロースの腰に近い部分は柔らかくて絶品だった。

鹿肉は「臭くて硬い」とよく言われるが、放血等の事後処理もせず、脂身の少なさを補うように調理に工夫を凝らさなければ、そんなものかもしれない。
以前、この地域の猟友会の幹部に、放血のやり方などを聞いたが、「知らない」と言われ、逆に「食うんけ?」と聞き返された。「食べへんの?」と聞くと、「犬にやるくらいや」とのこと。鹿に関しては獣害駆除の補助金がもらえるから獲っているだけだものねえ。
鉄砲で撃ち殺して血抜きもせずに引きずり出してきて皮を剥いで肉を取る程度のやり方なら、牛や豚や鶏だってまずくなるんじゃなかろうか。

これも以前に書いたが、ノーベル賞の授賞式後のパーティーのメインは鹿と決まっているくらい、あちらではステータスの高い肉なのです。と、鹿の名誉のために一言添えておきます。

そして
「鹿、獲れました。帰ります。」
ラーラーラララララー♪


コメント
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