とねり日記

とりことや舎人(とねり)の
どげんかせんとの日々

誕生日の夜の鯰鰻踊り

2015年07月28日 | 山里から
7月26日は私のン回目の誕生日。
夕方、イマやんがお祝いにナマズとウナギをもってやって来た。
イマやんはベテランの猟師で、いろいろと教えてもらったり、少し変わった獲物が獲れたときにおすそ分けをもらったりする。

杉板で急ごしらえのまな板を作って、火を熾して待っていると、さっさとやって来て、さっさとさばき始めた。
まずはナマズから。
頭をアイスピックでまな板に打ち付け、背中から開く。


外観とは裏腹に中身はきれいな白身。


次はウナギ。細長いし、身を捻(ねじ)って抵抗するし、ナマズよりも苦戦。


ナマズ2匹とウナギ1匹を開いたところで、焼きにかかる。
皮の側から焼くのか身の側から焼くのか迷って舎長に相談すると「『魚身鶏皮(うおみとりかわ)』というから身からかなあ…。そもそもナマズって魚なん?」と自信なさげ。
「えら呼吸してるから魚類やろうよ…」私も自信がない。
後でネットで調べると「ナマズ目ナマズ科に属する硬骨魚類の1種」で英語では「キャットフィッシュ」というそうだ。やっぱりフィッシュだ。じゃあオオサンショウウオはどうなんだ。ウオなんか。とか疑問は次々とわいてくるのだが、とにかくまあナマズは魚なんじゃないかなということで最初に開いたナマズは身の側から焼いてみた。
大失敗でした。身が網にくっついて串も打ってなかったからボロボロになり、なんとも情けない姿になってしまった。

2匹目のウナギと格闘中のイマやんに聞くと
「皮からに決まってるがな。『川は皮から、海は身から』言うやんけ」
川の魚は皮の側から、海の魚は身の側からということだ。
ほーっ、そんな言葉もあるのか。

てなことを申しておりますうちに、上(かみ)の方からヒトっちゃんが野菜と焼酎をもってやってまいりました(ここはなぜか落語調)。しかもよいあんばいに串ももってきてくれた。
今度は串を打って皮の側から焼く。


両面がほどよく焼けたところでタレをぬり、もう一度焼く。
オー、うまそう。


この夜、ナマズ2匹、ウナギ2匹を食べた。
ナマズは生まれて初めて食べた。ウナギと似たような味だが、肉厚でいくらか身がぱさぱさする感じ。でも外見ほど悪くないんじゃないか?
ウナギはナマズよりもう一段、味が洗練されている。身もきめが細かく、口の中でとろける感じ。皮もパリッとしてうまい。
舎長いわく「うなぎ屋は日本中にあるけど、なまず屋はない理由がわかるわ」
うまいことを言う。
そもそもウナギがいないならナマズを食べるかもしれないが、どちらかを食べるのならウナギだよなあ。
われわれはどちらも食べたけど。

焼酎を飲みながらナマズウナギ談義が続く。
「ナマズに似たやつでな、ギィタいうのがうまいんや」とヒトッちゃん。
「頭はナマズやけど尾は魚で、30センチくらいになるやつや」
「ゴリ言うやつとちがう?」
「それとは違う。あれもうまいけどな」
「あれは正式名はヨシノボリ言うんや」
「昔そんな名前のプロレスラーがおったな」
「それはトヨノボリ」
「吉村なんとかいう弱いやつもおったろ?」
「いろいろおってプロレスいうもんは成り立っておるんや」
などとワイワイ言うておりますうちに日も暮れてまいりました。
暮れ六つの鐘がゴーン…
宴もたけなわとなったころでございます。
舎長が目にもとまらぬ早さで両腕を振り回し、鯰鰻(なまずうなぎ)踊りを始めたのでございます。
ナマズとウナギの霊が取り憑いたのでしょうか…


といったあたりでお開き。楽しい誕生日になりました。ありがとう。
後日、淡水魚図鑑で調べたところ、ヒトッちゃんの言う「ギィタ」は正式名称ギギと判明した。
写真を見るとまさに頭はナマズ、下半身は魚だ。「地方名:ギンタ(関西)」とある。
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窯打ち

2015年07月23日 | 山里から

おめでとうございます。パチパチパチ…!(^^)!

あーしんどかった!
6月、7月と体調最悪だったし…
やれやれです。
それにしても里まるの皆さん(ノグさん含む)、ご苦労様でした。

7月19日に窯打ちと決めてからは(ナガちゃんに引っ張られながら)着々と準備が進んだ。
7月12日には天井のシゴ(天井のドーム型を成形するために積む4~5寸の短い木)を生木(なまき)に積み替えた。前に積んだシゴは乾燥してしまっていて、火を入れたら天井が固まる前に燃え落ちる心配があったからだ。


そして、新しいシゴの上にはムシロではなく、なんと、檜(ひのき)の葉を敷き詰めた。
中に詰めた木が燃え落ちたとき、天井裏にはムシロの縄文文様ではなく、檜の葉の文様が浮かび上がる(かな)
遊び心というか、ロマンというか…


モヒカン頭みたい。


これに土をかぶせていく。
土はこの窯の周辺から掘り出した良質の赤土。
土から石をふるい分ける仕事は、平日の昼間、何日も何日もかけ、ナガちゃんが一人でやってくれた。
この土に耐火モルタルを1割弱混ぜ水をかけてしめらせたものをかぶせていった。
30センチほどの厚さにかぶせ、20~25センチほどに叩き締める。

この時期、写真を撮る余裕もなく、かろうじて携帯で取った一枚。


掛合(かけや=木槌の親分)で5~6回叩いて深さ7~8センチの穴を開ける。一つ置いた隣にも開ける。窯の下側から一列開けたら、その上段にチドリになるように同じように開けていく、これを3段開けたら、今度は穴と穴の間を掛合で潰していく。二つ穴を開けては息をつき、三つ穴を開けては腰を伸ばし、泣きそうになりながらやりました。
なぜこんなことをやるかというと、土をしっかり練り合わせ強くするため。

そして7月19日。
この日までにほぼ叩き終え、最後の一叩きを、お祝いに駆けつけてくださった地域の皆さんにしてもらいます。
真ん中の白いシャツが区長さん。


生畑のキレイドコロも迫力の叩き締め。


窯打ちを終え、お酒と塩と米とそして窯打ちには欠かせないぼた餅(舎長作)を供え、二拝二拍手一拝


直前にヒトっちゃんが私に「口上言え」というので、即興で
「オオヤマツチノカミ、ホノカグツチノカミ、敬愛する我らがヒヌカン(火の神)に謹んでお願い申し上げます。白炭窯着工より一年有余、本日、ここに窯打ちの儀を迎えるに至りました。この窯が無事完成し、立派な白炭が焼けますよう、お願い申し上げます」
というようなことを述べた。

儀式がすんで、乾杯。
里まるの炭で焼いたおいしいBBQをいただいた。


ところでわたくし、BBQがこんなにも上等な調理法だとは思わなかった。
ノグさんが焼いてくれた、ローストビーフ、チキン、ポーク、ジャガイモ…、いずれもオシャレで品が良くて、普段なら3~4切れでおなか一杯になるのに、ついついあれもこれも食べてしまい、飲んでしまった。酒池肉林ね。よい炭とよい調理人がいる里まるは最強だ。
この後、続々と地域の人やら役場関係の人やらが来てくれたようですが、私はあまり覚えていません。
夜はこんななっていましたから。


翌日、舎長が「あんな口上、即席でよく言えたね」と褒めてくれた。
「ダテに『古事記』は読んでないよ。フフフ…」とドヤ顔をしたが、実はつい最近、池澤夏樹訳『古事記』を読み終えたばかり。にわか仕込みなんす。

話はそれるが、『古事記』はもっと読まれるべきだね。
権力と神話あるいは歴史(正史)というものの赤裸々な関係がこれほどよくわかるものはない。
あれを読んで戦前のような皇国史観に染まるのは「日本は天皇を中心とした神の国」と言ったあの「鮫の脳みそ」をもった(と言われた)かつての首相くらいじゃないかな。(ちなみに『古事記』によると初代神武天皇の祖母トヨタマビメの本来の姿は鮫である)

大きな歴史の話はさておき、私たちの小さな歴史が、今ここに確かな一歩を記した。


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