狩猟免許を取ってから10度目の猟期がやってきた。
実は諸事情があり猟友会を退会した。理由の一つは私のような小規模の罠猟師にとって会費に見合うメリットがほとんどないから。他に、国政選挙や府会議員選挙のたびに猟友会推薦の候補者の後援会に入るよう促されること。いずれの候補者も私にとっては価値観の違うタイプだったのできっぱりお断りしたが、たいていの人は言われるままに入会申込書に名前を書くのだろう。そして社会のいたるところに張り巡らされたこうした網の目に票がすくい取られていくのだろう。(日本学術会議問題で)あんなしどろもどろのその場逃れの答弁しかできない首相でも支持率50%を維持しているのは、こういう言われるがままに名前を書いている人たちの存在があるからかもしれない。猟友会には気持ちのよい人たちも大勢いるのだけれど、ごめんね。その他諸々あるが、とにかく猟友会に加入し続けることの意義がほとんど見いだせなかったのだ。
というわけで今期は猟友会に頼らず、手続き諸々を自らおこなった。狩猟免許の更新(3年ごと)は問題なくできたが、狩猟者登録に手間取った。
狩猟免許を持っているからといって即、猟ができるわけではない。猟をするためには毎年、狩猟をおこなう都道府県ごとに狩猟者登録をしなければならない。その際、狩猟税の納付などをして申請書類を提出するのだが、保険への加入も義務づけられている。罠猟に伴う損害賠償保険を自ら探して契約しなければならない。あまり一般的な保険ではないので、ネットでも調べ、あちこちの保険代理店に電話してようやく見つけることができた。
「施設所有者」を対象とした損害賠償保険なのだが、この「施設」に罠を含めている保険を探すのが一苦労。だが苦労の甲斐はあった。なんと罠2個で保険料が年間1800円。この保険料を含め、今期は1万円以下で狩猟者登録を済ませることができた。これまでの半額以下だ。
11月15日解禁、3月15日まで4ヶ月の猟期が始まった。さあ獲るぞ。16日夕方、裏山の罠を仕掛けた。
朝、2頭の雌鹿が掛かっていた。子鹿と母鹿。
喉元の頸動脈を槍で突くと、膝を折りゆっくりと息絶えていく。こうして放血することが食肉として利用するための絶対条件だ。動物が死ぬとまず血や内臓から腐っていく。したがって鉄砲などで即死させて放血が十分でなく、かつ速やかな解体処理がなされないと肉が臭くなりやすい。
朝、止め刺し(絶命させること)して、内臓を取り除き、川に浸けて肉を冷やし、夕方川から上げ、作業小屋に一晩吊し、翌朝、解体にかかる。この一連の過程が大事。
解体は、まず皮を剥ぎ、背身(背ロース)を取り、ももやお尻の肉を取り、肉を骨から外して厨房に運ぶ。ここから先はもっぱら舎長の仕事。筋や鬱血した部分を取り除き、大きな肉はブロックに、細かい肉は手回しのミンサーで挽肉にして、ラップで包み、ジプロックに入れ日付や部位など記入し、冷凍保存する。
11月21日宿泊のお客さんからフレッシュなジビエをお出しすることができた。
そして毎年恒例の猟師の特権。作業を終えた夜、初猟の獲物をいただく。手前のスキレットは塩胡椒して醤油とバターでグリルしたもの。奥の小さなスキレットはハツ(心臓)とワケギの炒め物。今日ばかりはいつもの安酒ではなく、いただきもののスコッチ。黒い服を着た歩く人。Tちゃんとその旦那さまありがとう。
暗い酒場の片隅で一人しみじみ酒を飲む♪(byみなみらんぼう)
今度はみんなで飲みましょう。