とねり日記

とりことや舎人(とねり)の
どげんかせんとの日々

初獲物、鹿二頭

2020年11月23日 | 山里から

狩猟免許を取ってから10度目の猟期がやってきた。

実は諸事情があり猟友会を退会した。理由の一つは私のような小規模の罠猟師にとって会費に見合うメリットがほとんどないから。他に、国政選挙や府会議員選挙のたびに猟友会推薦の候補者の後援会に入るよう促されること。いずれの候補者も私にとっては価値観の違うタイプだったのできっぱりお断りしたが、たいていの人は言われるままに入会申込書に名前を書くのだろう。そして社会のいたるところに張り巡らされたこうした網の目に票がすくい取られていくのだろう。(日本学術会議問題で)あんなしどろもどろのその場逃れの答弁しかできない首相でも支持率50%を維持しているのは、こういう言われるがままに名前を書いている人たちの存在があるからかもしれない。猟友会には気持ちのよい人たちも大勢いるのだけれど、ごめんね。その他諸々あるが、とにかく猟友会に加入し続けることの意義がほとんど見いだせなかったのだ。

というわけで今期は猟友会に頼らず、手続き諸々を自らおこなった。狩猟免許の更新(3年ごと)は問題なくできたが、狩猟者登録に手間取った。

狩猟免許を持っているからといって即、猟ができるわけではない。猟をするためには毎年、狩猟をおこなう都道府県ごとに狩猟者登録をしなければならない。その際、狩猟税の納付などをして申請書類を提出するのだが、保険への加入も義務づけられている。罠猟に伴う損害賠償保険を自ら探して契約しなければならない。あまり一般的な保険ではないので、ネットでも調べ、あちこちの保険代理店に電話してようやく見つけることができた。

「施設所有者」を対象とした損害賠償保険なのだが、この「施設」に罠を含めている保険を探すのが一苦労。だが苦労の甲斐はあった。なんと罠2個で保険料が年間1800円。この保険料を含め、今期は1万円以下で狩猟者登録を済ませることができた。これまでの半額以下だ。

11月15日解禁、3月15日まで4ヶ月の猟期が始まった。さあ獲るぞ。16日夕方、裏山の罠を仕掛けた。

朝、2頭の雌鹿が掛かっていた。子鹿と母鹿。

喉元の頸動脈を槍で突くと、膝を折りゆっくりと息絶えていく。こうして放血することが食肉として利用するための絶対条件だ。動物が死ぬとまず血や内臓から腐っていく。したがって鉄砲などで即死させて放血が十分でなく、かつ速やかな解体処理がなされないと肉が臭くなりやすい。

朝、止め刺し(絶命させること)して、内臓を取り除き、川に浸けて肉を冷やし、夕方川から上げ、作業小屋に一晩吊し、翌朝、解体にかかる。この一連の過程が大事。

解体は、まず皮を剥ぎ、背身(背ロース)を取り、ももやお尻の肉を取り、肉を骨から外して厨房に運ぶ。ここから先はもっぱら舎長の仕事。筋や鬱血した部分を取り除き、大きな肉はブロックに、細かい肉は手回しのミンサーで挽肉にして、ラップで包み、ジプロックに入れ日付や部位など記入し、冷凍保存する。

11月21日宿泊のお客さんからフレッシュなジビエをお出しすることができた。

そして毎年恒例の猟師の特権。作業を終えた夜、初猟の獲物をいただく。手前のスキレットは塩胡椒して醤油とバターでグリルしたもの。奥の小さなスキレットはハツ(心臓)とワケギの炒め物。今日ばかりはいつもの安酒ではなく、いただきもののスコッチ。黒い服を着た歩く人。Tちゃんとその旦那さまありがとう。

暗い酒場の片隅で一人しみじみ酒を飲む♪(byみなみらんぼう)

今度はみんなで飲みましょう。

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とりことBOX冬便のご案内

2020年11月18日 | 山里から

暮れ~の元気なごあいさつ♪

冬便、受け付け開始です。

今回のBOXはこれまでと違うものがいくつか。

お米が無農薬イセヒカリから省農薬コシヒカリ(お隣の田んぼの湯浅清次さんの「清流米」)に、五色米が無くなり黒米だけに、好評のクリチチ石鹸は冷凍してあったクリの乳がまだ残っているので当面継続できることになりました。

そして今回は日本ミツバチの蜂蜜が……

山里の恵みのおすそ分けです。

その他の品は例年のBOX便とほぼ同じ。
清流米(省農薬コシヒカリ)玄米(3kg)・白米(2.7kg)、黒米(大師黒200g)、日本ミツバチの蜂蜜(100g)、ジャム(90g×2種)、お茶、加工味噌、甘酒、かき餅、焼き菓子(数種)、ベーコン、とりこと舎ミニカレンダー、など(若干内容が変わる場合あり)。そして恒例のお楽しみの何かが入ります。

□お値段:1万円(税込)+送料
 商品到着後、お振り込みください。
□ご注文方法:メールでお申し込みください。
 ご注文の際は氏名、住所、電話番号をご明記ください。
 清流米(コシヒカリ)は玄米・白米のご希望をお書き添えください。
 メール:toricotoya@gmail.com
 確認メールの返信をもって受けつけといたします。
□締め切り:無くなりしだい締め切ります。
□発送:12月16~17日(チルド便で)
 生ものが入るため、発送日の変更はできません。発送日が変わる場合は事前にお知らせいたします。

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落選…落涙…そして

2020年11月11日 | 山里から

11月2日午後、沖縄タイムス社から「明後日の夕刻から新沖縄文学賞の選考会があり、受賞の場合は午後7時半ごろ電話いたします」との事務連絡があった。

そして11月4日7時過ぎ、ワイン(安物)を飲みながら電話を待った。もしやと思い8時まで待ったが電話はなかった。

ガックリきてしまった。人間というものは、というよりも、私という者は浅はかなもので、候補作に残れただけで満足と思っていたはずなのに、最初は確かにそう思っていたのに、日を経るにつれて、もしや、受賞したりして、受賞するかも、受賞するんじゃないかな、いけるんじゃない、などと心の中の期待度がどんどか膨れ上がるのを押しとどめることができなくなってきて、ふと気がつくと布団の中やトイレの中や山羊小屋の中で受賞スピーチなどを考えていたりして……バカだねえ。

11月6日付沖縄タイムス朝刊(電子版)に受賞者の喜びの声が掲載されていた。

なかみや梁(りょう)(本名・宮城稔)さん(71歳)は新沖縄文学賞の最年長受賞なのだそうだ。40歳を過ぎてから小説を書き始めたが、なかなかうまく書けず同人誌に参加しながら研鑽を重ねたようだ。

受賞作の『ばばこの蜜蜂』は「障がい者の支援施設で働き、現在は養蜂を行っている、なかみやさん自身の体験」がアイデアの核となっており、「孫の今後を案じる祖母の心情や、「蜜蜂と会話できる」孫の人物像を、具体的な描写を重ね、生き生きと温かく浮かび上がらせた」と紙面で紹介されている。これを読んだだけでも魅力的な作品に思える。早く受賞作を読んでみたいものだ。「具体的な描写を重ね(人物像を)浮かび上がらせ」る……心に刻もう。ワシ(66歳)も一度や二度落ちたくらいでガックリきてはいけないよなあ。あと6年頑張って最年長記録を塗り替えたろやないかい!

そしてもう一つ、私を励ましてくれることがあった。

那覇のヒサオ叔父が私の第一次選考通過を知って、50年前の「新沖縄文学」を送ってくれたのだ。

添えられた手紙には「(古い)新沖縄文学が見つかりましたので送ります。中には、私の兄、あなたのお母さんの弟にあたる池宮治の誌が特集されています」とあった。古い新沖縄文学……ヒサオ叔父の変わらぬユーモア精神をふりかけて。

治叔父は1974年、42歳で亡くなった。幼いころお会いしたことがあるかもしれないが記憶はまったく無い。ましてや詩を書いていたなんて知らなかった。

特集に添えられた本人の短い詩論や、一周忌に地元紙『琉球新報』に掲載された詩誌同人の追悼文によれば、治叔父は10歳で結核を発病し、それ以来23年間、世間から隔絶された生活を余儀なくされ、国立大阪療養所を退所して沖縄に戻ったのが1967年だという。生まれたのが満州事変勃発のころで、太平洋戦争が始まったころに病を得たことになる。破滅的な沖縄戦を経て復帰前の沖縄に帰った彼はどのような精神の遍歴をたどったのだろうか。彼の詩の一編を紹介したい。

   *   *   *

ママの腕のなかで

池宮治

父さんがお前にあげたいものは

健康と 自分を愛する心だ

 

ママの腕のなかで

若すぎる木の雷は眠る

季節のように

種子のように

月桃のような

夏の頬を染め

てのひらに

朝の宝くじをにぎり

   *

0.5才

IKEMIYA TAKASHI

お前は

パパや ママと

別の庭で遊ぶ

仔犬のように

皿を囓り

地球の尻を舐め

下駄を喰わえてくる

お前は

何も知らない

この地球の上で起った いろいろな不幸の出来事も、アダムとエバが禁断の実を食べたという聖書のお話も それから 死屍の肥料で シマ一杯 青草が繁茂したという パパの時代のバカな戦争のことも

が 今は

それでいい

パパが

お前に願うことは

大臣になることではない

博士になることではない

それは

健康と

人を愛する心だ

それに本質的なものを知る力

(ほんとうに それだけでいい)

余は

虚飾だ

今日も お前は

天を蹴り

神の涎をたらし

元気いっぱい はいまわる

 

そして

ときどき

樹のような

声をあげる

   *   *   *

今回読ませていただいた彼の詩のなかでは、もっとも言葉が「甘く」「柔らかい」と感じた詩だった。

オレも頑張って真っ白な原稿用紙に向き合おうと思った。

(落選作は近日中に私の小説専用サイト「伊野波島物語」にアップします。読んでみてね)

 

コメント (2)
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