カキぴー

春が来た

「モレンスキン」 のノート

2010年05月18日 | 日記・エッセイ・コラム

第2次世界大戦下、墜落されたイギリスの複葉機から、全身に火傷を負った男が助けられる。 彼は記憶を失っていたために、「英国人の患者」と呼ばれることになった。 収容された野戦病院で、看護婦ハナが1冊の「ノート」を見つける。 患者が肌身離さず大事にしてたもので、彼女の介護を受け少しずつ記憶を取り戻す中で、このノートが重要な役割を果たしていく。

1996年のアメリカ映画 「イングリッシュ・ページェント」を観て、このノートが妙に印象に残ったが、それから10数年経って、その正体を知ることができた。 とは言っても確たる証拠はないが、多分かなりの確率で、このノートは 「モレンスキン」(moresukine)。 モレスキンは2000年の歴史を持つフランスのノートブランド。

画家のゴッホやマティス、作家のへミングウェイ、そしてブルース・チャットウイン等が愛用してたもの。 ところが1986年に廃業、そして8年前イタリア・ミラノの出版社が復活させている。 モレンスキンの宣伝文句に、こう書いてある。 「有名な画家の作品のスケッチや、人気作家になる前の走り書きは、まずは、このモレンスキンのノートに書き留められていったのです。」

「ノートを取ってもいいかい?」 「もちろん。」 僕はポケットから黒いノートを取り出した。 オイルクロスの表紙、留め具用にゴムバンドがついている。 「いいノートだね」 「パリでよく買ったんだ。 でも、もう製造中止なんだよ。」  これはブルース・チャトウインの遺作となった著書 「ソングライン」の中で、主人公のアカルデイが、著者に語り始めるシーン。

世界中を旅浪していたチャトうインは、記録を書き記したノートと、そこに差し込んだスケッチやメモ書きを、もしも紛失したときのために、2ヶ国語の住所を記載し、さらに謝礼、報奨金まで記していた。 彼はこう言っている 「パスポートを失くすことはなんでもないけど、自分のノートを失くすことは、僕にとって破滅を意味する。」

 


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