何歳で死を迎えようと、人は最後に2つのことが、頭を去来するらしい。 1つは、自分がどれだけ人を愛し、また愛されたか? もう1つは、これまで どれだけ面白い体験をしてきたか? それが人並み以上に満足できるものであれば、納得して死を受け入れ易いという。
日本オーナーパイロット協会のほうから、自家用機による、世界一周のお誘いがあったのは,前立腺がんの宣告を受けた、2年後の2001年の初め。 1ヶ月以上に及ぶ長旅で、この間、会社の最重要行事である、株主総会もある。 さらに生命のリスクも低くはない。 しかし熟考の末、行くことに決めた。 癌が後押ししたのと、悔いのない思い出を作りたかったのかもしれない。 これからのブログの中で、時折り、旅の記憶のひとコマ、ひとコマを記述していきたいと思う。
北極圏に位置するグリーンランドは、一般に馴染みの薄い処だと思うが、デンマーク領で、北米と大西洋の間に位置する世界最大の島だ。人口は僅か5万6千人、全体の80パーセント以上が、氷床と万年雪に覆われ、氷の厚さは3000mもある。 島の南側沿岸に、ナルサルサックという小さな町があり、 ここに第二次世界大戦中、アメリカからヨーロッパへ、戦時物資を運ぶための中継基地として、長い滑走路を持つ飛行場が建設された。
空港周辺は、飛行機の墓場と呼ばれている。 当時のプロペラ機が、遠距離を飛んでやっと辿り着いても、悪天候のため待機中に、燃料切れで不時着した機体が、万年雪の下に埋まっているからだ。 そして半世紀以上経った今でも、度々原型のまま掘り起こされている。
この飛行場に、我々は長距離飛行の末、無事着陸した。 夕食時、ホテルの前に浮かぶ流氷を拾ってきて、太古の空気が詰まった氷を、スコッチのオンザロックで味わったが、パチパチとはじける音は、今も耳に残ってて懐かしい。
早朝、空港の周りを散策してると、記念碑があり、その彫刻の顔が日本人に似ている。 英文を読んでみると、1978年に、冒険家の植村直己氏が、ここから犬橇による、グリーンランド単独縦断に発ったと書いてある。 彼はこの縦断に成功。 そして1984年、北米最高峰のマッキンレーで、厳冬期単独登頂を果たした後、消息不明となる。 43歳だった。
普通の人には一番縁のないところだと思います。
キャプテンは、そんな地の果てまで行ったんですね。機会があったとしてもあまり行きたくないところですね。