冨田敬士の翻訳ノート

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PC画面で見やすいフォントと画面の体裁

2018-06-06 16:28:47 | 情報
パソコンの画面を長時間見ていると目が疲れる。紙面に比べて何十倍も疲れるという医療関係者もいる。特に画面上で文章を書くときは一点を見つめやすいため余計に疲れ,近視や体調不良の原因になると言われている。翻訳者のように毎日画面に向かって文章を書く仕事は特に眼を酷使しやすいので,なるべく疲労の少ない環境で作業をしたい。
PC画面で文章を書くときはそれ専用の見やすいフォントを使いたい。フォントはWordに入っているものだけでも何十種類もあるため選択に迷うことも考えられる。しかし,翻訳はWeb制作や数表作成とちがって文章を書くのが仕事の中心なので,フォント選択の余地は少ない。以下,日本語と英語に分けて検討してみた。

日本語文を書くときのフォント
Windowsには標準書体として以前から明朝体が採用されてきた。明朝体は昔から日本語の標準書体として広く使用されているせいか,PC画面で文字を書くときもこれを使う人が多いようだ。明朝体は雑誌や新聞で広く使用されているように,本来は紙面上の印刷用書体である。明朝体の特徴は縦線が太く,横線が細いこと。起源は中国の宋時代(10世紀)にさかのぼると言われている。明朝体は太い縦線が視線を導くということから,縦書きの文章を読んだり書いたりするのに適している。字体がすっきりとして美しいことから,パソコンでプリントアウトするときはこの字体が使用されているようだ。
PC画面で読み書きするときは印刷書体よりもディスプレイ用に開発されたフォントが見やすい。ある程度線が太く,黒の線がくっきりと見えるフォントなら眼の負担も多少和らぐ。ディスプレイ用に開発されたフォントの一つに「メイリオ」がある。メイリオはかつてWindowsの標準書体として採用されたそうだが,視認性がよいことから今でも人気が高い。最新のWordバージョンにも入っている。メイリオは横組みの可視性を重視していることから,横書き中心の実務翻訳などでは利用価値が高い。メイリオにはVerdanaを基本に開発された欧文体のフォントも組み込まれており,日本語文の中に英文を併記してもちぐはぐ感が少ない。Wordにはメイリオの部分的な改良版としてMeiryo UIも入っている。

英文を書くときのフォント
欧文体のフォントは日本語のフォントに比べるとはるかに種類が多いものの,単純に英文を書くだけなら選択の余地は少ないようだ。PC画面上ではなるべく黒が鮮明に見える,ディスプレイ用に開発されたフォントを使いたい。CenturyやTimes New Romanは本来紙面印刷用の書体で,PC画面用に開発されたフォントではない。Centuryはよく英語の教科書に使われる書体で,Times New Romanは英国のタイムズ社が新聞用に開発した書体だ。どちらもすっきりとして美しいが,PC画面上では線が細かったり黒が鮮明でなかったりで,視認性が高いとは言えない。
ディスプレイ用に開発された標準フォントとしてはArialが知られている。線がある程度太く,黒がくっきりと見えることから,視認性が高い。画面用にはGeorgiaというフォントも広く利用されているようだ。ちょっと見ただけではArialと区別がつきにくいが,よく見るとGeorgiaは活字の上下端に細いひげ飾りの付いたserif体である。そのほか,マイクロソフト社がディスプレイ用に開発したVerdanaもWeb制作などに広く利用されている。こちらはsans serif体なのでひげ飾りがない。 文章を書くと多少横長になってしまうが,用途によってはこのフォントも見やすいと思う。

英文の体裁
英文を書くときはフォントのほかに両端の揃え方にも配慮したい。 翻訳レッスンのときに提出してもらう答案を見ると,大半は両端揃えで書いてある。英文を両端揃えにするのは書籍や新聞などの印刷物だ。両端揃えは全体としての見栄えはよいが,1行の語数に応じて単語と単語の間のスペースにばらつきが出るため,間延びした感じで読みにくい。画面上でも印刷でも,英文は左揃えにするほうがずっと読みやすい。会社間のメールや書簡は左揃えがもっぱらで,政府間の公式文書も左揃えで書くようだ。先日,米国大統領から北朝鮮の最高指導者に宛てた書簡が新聞で公開されていたが,やはり左揃えで書いてあった。
筆者はフォントの専門家ではない。もっと見やすいフォントが開発されているかもしれないのであれこれ試して,自分にいちばん適したものを使うに越したことはない。

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