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PC-E Micro Nikkor 85mm f2.8D

2013年08月15日 | 撮影機材

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  表題はニコンSLRカメラ用の『アオリ』レンズの名前です。今年のはじめ、Nikon D800Eのシステムを組んだ時に本当は真っ先に欲しかったレンズなのですがなにせ定価で315,000円という値段から購入には至りませんでした。EOS用にCanonの同様のレンズを以前から使っていますが、これは仕事をデジタルに移行したときに最初に買ったレンズで、今でもスタジオ内では最も使用頻度の高いレンズになっています。購入当時はこのCanon の「TS-E」とニコンの同種レンズである「PC」はほぼ同じ価格帯だったと思いますが、ニコンは2008年にデジタル用としてリニューアルを行い「PC-E」になった際にこのレンズは10万円以上も値上げされ、大きく価格が開きました。ちなみにTSとはTiltとShiftのことで、PCとはPerspective Controlのこと、Eは電子制御のことを指します。

  前置きが長くなりましたが、先日このニコンのレンズをやっと入手しました。オークションでの購入でしたが時節が良かったのか新品同様の品が11万円代で落札でき、大変幸運でした。
  このレンズは一般的に「アオリレンズ」と呼ばれていてフィルム面(デジタルカメラでは「センサー面」)に対してレンズの位置と角度を変えることができます。この機能は昔から使われている「ビューカメラ」の基本的な機能で、ビューカメラに装着されるレンズは基本的にすべてアオリレンズになります。フォーカスの合う範囲や、被写体の形状をコントロールするのがアオリを使う目的ですが、フィルム時代には35mmカメラの小さなスクリーンでは結果の確認が難しく、アオリの必要な撮影現場ではほとんどビューカメラが使われてきました。時代はデジタル撮影に変わり、撮影結果をすぐに確認できるようになって、アオリを用いた撮影が小型カメラでも容易にできるようになりました。
  ネットの記事などを見るとアオリレンズを購入する目的は昨今流行りの「ジオラマ風写真」を撮るためというのがいちばん多いようです。まあ、本当にこのレンズを必要としているプロが書き込みをすることはあまりないからなのでしょうが、ジオラマ風写真はこのレンズで撮るより後からデジタル加工したほうがずっと上手くできるのでは、と思うのです。買ってはみたものの他に使い道もなく結局は使いこなせずに売却する、ということが多いのではないでしょうか。
  そんなに本数が売れるとは思えない高価なアオリレンズが中古市場に結構出ているのは、こういった背景があるような気がします。そうだとすれば、程度の良いアオリレンズが安価に入手できるのはジオラマ風写真を世に流行らせた写真家さん(4×5ビューカメラでフィルム撮影されていたと記憶しますがお名前は失念)のおかげで、その方に深く感謝いたさねばなりません。
 

 


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